仮想デスクトップ――デスクトップ集中管理の新アプローチColumn

VDI(仮想デスクトップインフラ)は、急速に脚光を浴びているが、言葉だけが先行してしまいそうな気配も漂っている。VDIとは何なのだろうか。

2007年04月11日 05時00分 公開
[Brian Madden,TechTarget]

 VDI(仮想デスクトップインフラ)は、急速に脚光を浴びているが、言葉だけが先行してしまいそうな気配も漂っている。VDIとは何なのだろうか。

 VDIの考え方はシンプルだ。Windows XPやVista(以下、「Windows XP」とする)が動作するデスクトップPCをユーザーに配備する代わりに、デスクトップをデータセンター内のサーバ上で稼働させることで、「仮想化」するというものだ。ユーザーは仮想化されたデスクトップに、クライアントデバイス(シンクライアントやホームPCなど)からシンクライアント用のプロトコルで接続し、ローカルにインストールされた通常のデスクトップと同じような感覚で、自分のデスクトップにアクセスする。

 バックエンドの仮想化されたデスクトップは、一般に以下のどちらかの方法で提供される。

  • VMware ServerまたはMicrosoft Virtual Server上で多数のWindows XPのVM(仮想マシン)を稼働させ、各ユーザーは自分のVMに1対1で接続する。
  • Windows XPが動作するブレードをブレードエンクロージャに搭載し、各ユーザーはブレードに1対1で接続する(この個々のブレードやこの技術全体を「ブレードPC」と呼ぶこともある)。

 どちらの方法でも、エンドユーザーは任意のデバイスを使える。エンドユーザーは自分のデスクトップにどこからでも接続でき、IT部門はデスクトップを簡単に管理できる。デスクトップはデータセンター内にあるからだ。

 このVDIのアプローチで興味深いのは、これらの技術は新しいが、デスクトップをサービスとして提供するという考え方は、10年以上前からあることだ。シトリックスのCitrix Presentation Serverやマイクロソフトのターミナルサービスなど、従来のサーバベースコンピューティングソリューションでは、VDIに似たソリューションが過去10年にわたって提供されている(もちろん、両者の最大の違いは、サーバベースコンピューティングソリューションでは、Windowsの共有インスタンス上に個人のデスクトップが実現されるのに対し、VDIソリューションでは、各ユーザーごとに専用のWindowsマシンが提供されることだ)。

 もっとも、サーバベースコンピューティング業界はこの数年、サーバベースコンピューティングから、ユーザーへのアプリケーション提供に重点を移してきた。その流れから言えば、デスクトップも、ユーザーがアクセスする必要があり、IT部門が提供する必要があるアプリケーションの1つだ。

 VDIの今日的な意義を考える上では、従来のローカルデスクトップからVDIソリューションに完全に置き換えることは、実は誰も勧めていないことに注意することが重要だ(10年前も同じように、従来のデスクトップからサーバベースコンピューティングアプリケーションに完全に置き換えることは、実は誰も勧めていなかった)。

 サーバベースコンピューティングの活用に最も成功している企業は、個別のアプリケーションごとに、あるいは個別の状況ごとに、この技術の活用ニーズを検討した企業だ。現在、サーバベースコンピューティングの利用企業のほとんどは、適切なシナリオを基に適切なアプリケーション提供を実現するさまざまな技術から成る総合的なソリューションの一部として、サーバベースコンピューティングを利用している。

 VDIも同じだ。VDIは究極のデスクトップ提供メカニズムでは決してない。VDIは、従来のローカルデスクトップやサーバベースコンピューティングデスクトップの大きな課題の一部を解決できるが、ユーザーにデスクトップを提供するためのもう1つの選択肢にすぎないのである。

本稿筆者のブライアン・マッデン氏は、ワシントンDCに本拠を置く独立系の技術アナリスト、ライター、研究者。シトリックスとシンクライアントコンピューティング技術について数冊の著書と数百の記事を執筆してきた。Microsoft MVPを3回受賞しており、CTP(シトリックス技術プロフェッショナル)の資格を持つ。現在、世界中で講演や講習を行っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news066.jpg

Metaに潰されないために残された生き残りの道は?――2025年のSNS大予測(Snapchat編)
若年層に人気のSnapchatだが、大人にはあまり浸透していない。一方で、AR(拡張現実)開...

news150.jpg

「猛暑」「米騒動」「インバウンド」の影響は? 2024年に最も売り上げが伸びたものランキング
小売店の推定販売金額の伸びから、日用消費財の中で何が売れたのかを振り返るランキング...

news110.jpg

Netflixコラボが止まらない 「イカゲーム」シーズン2公開で人気爆上がり必至のアプリとは?
Duolingoは言語学習アプリとNetflixの大人気ドラマを結び付けたキャンペーンを展開。屋外...