どんな対策が必要なのか?
VoIP・IP電話ベンダーのセキュリティソリューション
VoIPやIP電話製品のセキュリティソリューションは、シグナリングの暗号化、メディア・音声の暗号化、エンドポイントの保護の3つのカテゴリーに分けられる。
VoIPやIP電話製品のベンダーは、この3年間にセキュリティソリューションを強化してきた。以前はセキュリティはほとんど注目されていなかった。だが最近では、こうした製品のセキュリティ対策への関心は高まる一方だ。Business Communications Reviewの2006年1月号に掲載されたハイエンドIP PBXの比較記事「High-End IP-PBXs: VoIP Powerhouses」でも、セキュリティは6つの評価観点の1つとなっている。
この記事の著者は、主要VoIPベンダー5社のハイエンドIP PBXを対象に一連のセキュリティテストを行い、これらの製品のセキュリティ機能には大きな違いがあると結論付けている。また、これらの製品のセキュリティは向上しているものの、まだ多くの課題が残っていると指摘している。この記事のセキュリティに関する評価得点は10点満点で、5製品の得点はそれぞれ6~9点、平均では7.8点となっており、そのセキュリティ保護は万全とは言えない。
VoIP・IP電話製品のセキュリティソリューションは、以下の3つのカテゴリーに大別される。
- シグナリングの暗号化(SIP、H.323、SCCP)
- メディア・音声の暗号化
- エンドポイントの保護(サーバ、ゲートウェイ、電話)
1. シグナリングの暗号化
シグナリングの暗号化は、こうしたセキュリティソリューションの中でも最初に検討しなければならない。シグナリングには、呼設定(コールセットアップ)、呼制御(コール制御)、機能へのアクセス、ユーザー権限の制限などが含まれる。シグナリングの暗号化により、サーバとエンドポイントの両方を保護することができる。完全な暗号化を実現しているベンダーから暗号化をまったくサポートしていないベンダーまで、この機能への各社の対応はさまざまだ。現状では、製品によっては以下のような制約がある。
- すべてのシグナリング機能が暗号化されているわけではない
- ソフトフォンは暗号化の対象に含まれていない
- レジストレーションだけが保護されている
- 非標準のソリューションが提供されている
- 暗号化をサポートするには、メモリが不足しているIP電話がある
- IP電話の中には、暗号化するとアップグレードできなくなる機種がある
- 暗号化機能を利用するにはRTU(Right-To-Use)ライセンスが必要
- ゲートウェイが暗号化をサポートしていない
VoIP・IP電話のRFP(提案依頼書)には、シグナリングの暗号化を必ず要件に盛り込むことが非常に重要だ。この機能は、VoIP・IP電話ベンダーによって違うものの1つだからだ。
2. メディア・音声の暗号化
セキュリティソリューションとして音声の暗号化機能を提供するVoIP・IP電話製品もある。この機能は、SRTP(Secure Real Time Protocol)を採用した標準ベースのものと、プロプライエタリなものの2種類が提供されている。ソフトフォンやゲートウェイがサポートされない場合もある。また、例えばSIPなど、特定のプロトコルを利用する場合には暗号化がサポートされないというケースもある。音声暗号化機能は128ビットAES(Advanced Encryption System)に対応していることが望ましい。この機能を提供するソフトウェアを使うには、RTUライセンスが必要だろう。
3. エンドポイントの保護
ファイアウォールの統合
ファイアウォールは専用アプライアンスを使って運用されることが多い。VoIP・IP電話では、ファイアウォールソフトウェアをソフトフォンにインストールすることもできる。しかし、PCファイアウォールは通話遅延を増やし、音声品質に悪影響を及ぼす恐れがあることに注意しなければならない。一方、ゲートウェイに組み込めるソフトウェアファイアウォールを提供しているベンダーも、少なくとも1社ある。どちらの場合も、ファイアウォール機能の利用にはソフトウェア費用がかかる。
エンドポイントの認証
一部のベンダーは、LANスイッチと外部RADIUSサーバを利用して、IEEE 802.1x規格に基づく認証を実装している。ベンダーがサポートしている認証方式の1つとしてMD5がある。レジストレーションの際に8けたのパスワードとともに、暗号鍵の交換が利用される場合がある。また、最初のレジストレーションの際に最大25けたの可変長パスワードを利用するベンダーもある。
攻撃の緩和
サービス妨害(DoS)攻撃をすべて阻止することはできないが、予防保守を通じて攻撃を緩和できる。以前の記事「VoIPの脆弱性検証ツール――フラッディング、シグナリング操作ツール20選」で、DoS攻撃を引き起こすことが可能な各種のツールを紹介したように、DoS攻撃にはさまざまな種類がある。攻撃を受けるエンドポイントで実行できる対策の1つは、DoSを無視することだ。DoS攻撃では一般に、標的に対して特定の操作が繰り返し行われる。このため、プログラミングにより、エンドポイントにDoSを認識させ、攻撃のために使われているパケットを無視させることができる。例えば、INVITE(コールセットアップ)パケットが繰り返し送信されている場合は、攻撃されている可能性がある。エンドポイントがINVITEパケットを10個中9個は無視し、管理システムに攻撃を報告するように設定することが可能だ。利用しているVoIP・IP電話製品の提供元に、こうしたDoS攻撃の緩和が可能なエンドポイントがあるか、あるとすればそれはどれかを確認しておくとよい。
標準 vs. プロプライエタリ
標準ベースのソリューションは魅力的かもしれないが、プロプライエタリなソリューションの方が役に立つ場合もある。しかし、後者には相互運用性の問題がつきまとう。標準ベースのセキュリティソリューションを採用すれば、さまざまなベンダーの製品で利用できるため、製品調達に当たって競争入札を行うことができる。これに対し、プロプライエタリなソリューションを採用すると、ベンダーの選択肢が限られてしまう。また、プロプライエタリなソリューションは、提供元が標準ベースのアプローチに移行することにより、短命に終わってしまうかもれない。
本稿筆者のゲーリー・オーディン氏は、コンピュータ、通信、セキュリティの分野で40年以上の経験がある。データ、LAN、電話ネットワークの計画、設計、仕様作成、実装、運用に携わってきた。これらのネットワークには、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、アジアの各国の地域、全国、および国際ネットワークや、VoIPおよびIP統合ネットワークが含まれている。
TechTargetジャパンへのご登録はお済みですか?
**「TechTargetジャパン」メンバーシップのご案内**
会員登録を行うことで、300点以上の技術資料がそろったホワイトペーパーや興味・関心分野ごとに情報を配信するメールマガジン、ITmediaや@ITの特集記事がPDFでまとまって読める電子ブックレットなど、各種サービスを無料で利用できます。**会員登録(無料)はこちらから**
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
3
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
-
4
ランサムウェア、暗号化の89%は深夜 情シスが備える「夜間の空白」対策
-
5
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
6
「技術屋」で終わるか、部長へ昇格するか 今取りたい「IT×ビジネスの認定資格」5選
-
7
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
AIエージェントを暴走させない設定、済んでますか? 対策5選を専門家が紹介
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー