MicrosoftはHyper-Vの低価格戦略を打ち出し、VMwareはESXiの無料化に踏み切った。過熱する仮想化市場の今後を予想する。
Microsoftがハイパーバイザー「Hyper-V」で徹底した低価格戦略を打ち出し、VMwareも最近ハイパーバイザー「VMware ESXi」の無料化に踏み切ったことで、この技術は今やあらゆる規模の企業にとって入手しやすくなっている。
だが、ハイパーバイザーがコモディティーになったわけではない。まず、VMwareのVMware ESX/ESXi、MicrosoftのHyper-V、Citrix SystemsのXenは今のところ、簡単に乗り換えられない。特定のハイパーバイザーのアーキテクチャが別のものより優れていると見る向きもある。しかしベンダー各社が、ハイパーバイザーの差別化が困難になることを見越して動いているのは確かだ。
VMwareはサーバ仮想化専門ベンダーの枠を超えた展開を進めることで、同社のイメージの強化を図っている。具体的には、幾つかの新しい管理ツールを投入し、アプリケーション仮想化ソフトウェアベンダーのThinAppsを買収し、VMware ESXi 3.5を無料化した。
さらに、新任のポール・マリッツCEO(共同創業者で長年CEOを務めたダイアン・グリーン氏の後任として7月に就任)は、7月中旬に行った四半期決算発表で、VMwareがクラウドコンピューティング、デスクトップ仮想化、ストレージのリーダー企業を目指すことを明らかにした。
MicrosoftもKidaroやSoftricityなど数社を買収している。また、仮想環境と物理環境を統合して管理できる管理製品スイートを投入し、Hyper-VをWindows Server 2008の一部としてリリースしており、スティーブ・バルマーCEOは同社の将来戦略におけるクラウドコンピューティングの重要性を強調している。Hyper-Vは2008年内に単体でも発売される予定で、価格は28ドルに設定されている。
ベンダー各社の目標は一致してきているようだ。しかし、どのベンダーが最も首尾よく目標を達成できるか、最も顧客の支持を集めるかは、まだまったく予断を許さない。
VMwareは、10年近く前に他社に先駆けてx86環境向け仮想化ソフトウェア事業に乗り出した。大きなインストールベースを持っており、顧客の満足度も高い。「現在、企業のIT製品選択で第一に重要なポイントは、導入実績や参考情報が豊富なハイパーバイザーと、登場したばかりで実績の乏しいハイパーバイザーのどちらを選ぶかだ」と、Gartnerのアナリスト、トム・ビットマン氏は語った。
VMware ESXは、大企業市場で強力な地位を築いている。この市場の顧客の多くは、これまで投資してきたVMware製品からMicrosoft製品に乗り換えることに二の足を踏みそうだ。これに対し、中堅・中小企業にはVMware ESXはあまり浸透しておらず、こうした企業はMicrosoft製品を採用する可能性が高いだろう、とビットマン氏は述べた。
また、多くの企業が製品の評価、購入、インストールに当たって、ベンダーのパートナー(システムインテグレーターやコンサルティング会社など)を利用している。Microsoftは長年、市場をくまなくカバーして顧客の製品購入に影響を与えるパートナーネットワークを活用してきた。VMwareはチャネル展開の歴史が浅く、チャネルに関する十分な信頼をまだ勝ち得ていないと、Xcedexのデビッド・ペインCTO(最高技術責任者)は語った。同社は仮想化ソフトウェアを専門とするシステムインテグレーターだ。
「われわれは5年前からVMwareのパートナーだ。彼らとは密接な協力関係にある。だが、2008年7月に開催されたMicrosoft Worldwide Partner Conferenceで、Microsoftが仮想化に取り組む真剣さ、彼らの製品でわれわれパートナーを成功させようと取り組む真剣さに、目を見張らされた」(ペイン氏)
Hyper-Vはバージョン1.0であり、顧客は初期バージョンの製品に対して懐疑的だ。しかし、IT部門は予算を気にしており、Hyper-Vは安価に使えることを知っている。「市場では現在、景気後退への懸念が高まっている」とペイン氏。「人々は過敏に反応し、安いと思えるものを探している。このことは、Microsoftがビジネスを獲得する上で有利に働くだろう」
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