POSシステムの発展を考える上でクラウド化への対応は避けて通れない課題か。Smarter Retailing Forumの主要メンバー企業であり、POS端末の国内トップシェアを誇る東芝テックに聞いた。
東芝テックのルーツは、1926年に伊豆の大仁で日本初のキャッシュレジスター「間宮式金銭登録機」を開発した間宮堂にさかのぼる。後に東京芝浦電気(現在の東芝)が間宮堂を買収し同社大仁工場とした事業を分離独立させたのが東芝テック(当時は東京電気器具)の創業(1950年)であり、それは日本のPOS(Point Of Sale)システムの歴史のスタートとなった。
1979年、同社は国産POSシステムメーカーとして初めて米国輸出を実現。1985年に酒販店向けPOSシステムをサントリーと共同開発し、1992年にはセブン-イレブン・ジャパンにPOSシステムを納入するなど、国内のPOS普及に貢献してきた。そして、1999年に東芝から複写機事業を譲り受け、照明事業を東芝ライテックに譲渡して商号を東芝テックに改称。2010年2月には創業60周年を迎えている。
同社のPOSの技術開発には余念がなく、DSS研究所・インフォメーションシステム研究会が発表した「平成21年度POSシステムのメーカー別年間販売実績シェア」によると、東芝テックのPOSシステム・ターミナル台数の国内シェアは42.33%を占め、トップを維持している。
東芝テックのPOSシステムが支持されている理由について、同社 システムソリューション事業本部 リテールソリューション事業部 専門ソリューション統括部 物販システムソリューション部 部長の平澤豊樹氏は、「現場の声を吸い上げて使いやすいシステムを作ることに社を上げて注力しているからでしょうか」と胸を張る。
POSシステムベンダーの多くはコンピュータシステムから派生してきたメーカーだが、東芝テックは電子レジスターなどの店舗系システムからPOSシステムを開発した企業である。最新機器を積極的に貸し出しては現役の店舗キャッシャーの意見をヒアリングし、使い勝手の良さを徹底的に研究している。
また、POSシステムはベンダーによるサポートが非常に重要になる。万一店舗のPOSマシンに故障が発生すると販売業務自体がストップしてしまい、全国にチェーン展開しているほどリカバリが難しいからだ。その点、東芝テックのサポートはグループ会社のテックエンジニアリングが一手に引き受け、日本全国のどの顧客にも迅速に対応できるようにしているという。「流通小売業向け専門に全国130カ所のサービスネットワークを設置し、1200人以上のエンジニアを配しているPOSシステムベンダーはほかにありません」(平澤氏)
POS分野でのトップシェアと強力なサポート体制を持つ東芝テックが、Smarter Retailing Forum(以下、SRF)に参加する意味は何だろうか。
「流通業といっても千差万別で、POS機能も業種によってまったく異なるため、それぞれの要求仕様に対応しなければなりません。それが、SRFにかかわる大きな動機となっています」と語るのは、同社 システムソリューション事業本部 ソリューション技術統括部 システムソフトウェア要素技術部 部長の三部雅法氏だ。
量販店のようにあらゆる商品を扱う企業もあれば、限られた商品だけを扱う専門店もある。スーパーマーケットではいかに早くスキャニングができるかが重視されるが、コンビニエンスストアの場合はいかに多くの機能を搭載しているかが重要だ。一方、ショッピングセンターは専門店の集合体であり、個々のテナントの売り上げに応じて家賃収入があるため、デベロッパー向けのシステムが求められる。業種ごとにPOSのリポートや分析データや仕様もまったく異なる。
「日本では専門店が多いため、個々の業態にジャストフィットしたPOSシステムを当社1社で提供することは難しいです。そのため、ISP(Internet Service Provider)やVAR(Value Added Reseller:付加価値再販事業者)に対して当社からPOSのハードウェアとドライバ、ミドルウェアを提供し、顧客別のアプリケーションを開発してもらっていますが、そこで標準仕様が必要になるのです」(三部氏)
全国に展開するコンビニエンスストアは店舗数こそ多いが、大手数社分の仕様に対応すれば大体カバーできる。しかし、専門店はファッションや宝飾、生活雑貨、書籍・文具、食品などそれぞれの商売に合ったPOSの仕様が必要となる。そのため、Open POS(OPOS)によるオープンで多様なPOS端末の構築やPOSアプリケーションを開発し、周辺の接続機器を標準仕様で共通化すればコストも下がり、小規模な専門店にもPOSシステムを普及させることが可能になるという。
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