ビデオ会議のセキュリティ、5つのアプローチを紹介
ファイアウォールを利用したセキュアなビデオ会議
ファイアウォールの外側にいるメンバーとのビデオ会議を安全に失敗なく行うための5つのアプローチと、それぞれの問題点を紹介する。
セキュアなビデオ会議を実現するのは、今日でも困難な課題だ。これは、ビデオ会議システムとファイアウォールのデザインの間に本質的な差異が存在することに起因する。ファイアウォールは、その内側から発信されたトラフィックは信頼し、外側から発信されたトラフィックは信頼しないという非対称型のデザインとなっている。これに対して、ビデオ会議システムでは、通話を確立するために内側と外側からのコネクションを開放しなければならない。つまり、極めて対称的なデザインなのだ。
ファイアウォールに関連した問題に共通する現象は、一方のユーザーには相手の顔が見えて声が聞こえるのに、相手側の画面には何も映っていないという状態だ。これは通常、インターネットから受信するビデオと音声をファイアウォールがブロックしているのが原因だ。
では、セキュアなビデオ会議を実現しながら、ファイアウォールが提供するセキュリティ機能を損なわずにビデオ会議トラフィックが容易にファイアウォールを通過するようにするには、どうすればいいのだろうか。以下では、今日用いられている幾つかのアプローチを紹介するとともに、それらの限界についても述べる。
インターネットへの直接接続
ビデオ会議のセキュリティを実現するための1つのアプローチが、ビデオ会議システムをインターネットに直接接続することによって、ファイアウォールに起因する問題を回避することだ。小規模なオフィスであれば、アプライアンス型のビデオエンドポイントをインターネットに直接接続してもいい。ビデオ機能を備えたノートPCを携行する外勤スタッフも、インターネットに直接接続して構わない。ただし現実には、こういったユーザーはWi-Fiホットスポットやホテルなどにある比較的開放的なファイアウォールを通じてインターネットに接続するケースが多いと思われる。
DMZ
ファイアウォールのDMZ(DeMilitarized Zone)に接続されたビデオエンドポイントは、外部からのトラフィックをすべて直接受信することができる。これは、ほかにDMZサーバが存在しない小規模オフィス(あるいは自宅オフィス)では一般的な構成であり、わたしのH.323ビデオエンドポイントもこの方法で接続している。ファイアウォールは、社内から発信されたものではない着信トラフィックをビデオ会議エンドポイントにリダイレクトするため、このエンドポイントはあたかもインターネットに直接接続されているかのように動作する。
ファイアウォールを通過させる
ビデオエンドポイント専用に静的なインターネットアドレスを利用できるのであれば、ファイアウォール経由でエンドポイントを接続することが可能だ。この場合、ビデオエンドポイント専用のインターネットアドレスとビデオエンドポイントの実際の内部IPアドレスとの間でNAT変換を行うようにファイアウォールを設定する。
専用アドレスに着信したトラフィックはすべて、そのビデオ会議エンドポイントに転送される。
この手法はビデオ会議のセキュリティを実現するのには非常に有効だが、アドレスが頻繁に変更されるような環境(ビデオ会議システムが移動したり、同じ施設内に多数のビデオエンドポイントが配備されているような環境)では、サポートするのが困難だ。ファイアウォールのNAT構成は手作業で行わなくてはならず、ミスも起きやすい。加えて、この目的のために多数の専用インターネットアドレスを購入・維持するのに高い費用が掛かる可能性もある。
トラバーサルサーバ
トラバーサルサーバというのは、インターネットに直接接続されるか、あるいはファイアウォールのDMZに接続され、H.323ベースのビデオ会議トラフィックのファイアウォールトラバーサル(ファイアウォール越えを実現すること)をサポートするようにデザインされた専用サーバだ。社内のビデオエンドポイントはH.460プロトコルを使ってファイアウォールを通過し、トラバーサルサーバに接続される。
ビデオエンドポイントがH.460プロトコルを直接サポートしない場合は、ビデオエンドポイントと外部のトラバーサルサーバとの間のゲートウェイとして機能するプロキシ装置を社内ネットワークに配備すればよい。
インターネット上のビデオエンドポイントは、トラバーサルサーバに直接接続した上で、E.164(国際公衆電話番号)拡張機能を使用する社内のビデオエンドポイントを選択できる。互いに協力関係にある企業であれば、それぞれのトラバーサルサーバを接続してダイヤルプランを共有すれば、ビデオ通話発信をさらに簡素化できる。このアプローチは「TANDBERG Expressway」製品で採用されている。
トラバーサルサーバは、多数の小規模オフィスを抱えた企業に適している。1台のトラバーサルサーバを配備するだけで済むからだ。ただし、インターネットベースのビデオトラフィックはすべてこの1台のサーバを通過するため、トラフィック量の増大にサーバが対応できない可能性もある。
セッションボーダーコントローラー
セッションボーダーコントローラー(SBC)は、2つのネットワーク(この場合は社内ネットワークとインターネット)の間に置かれる装置で、承認されたトラフィックストリーム(この場合はビデオ会議のトラフィック)だけが通過できる経路を提供する。SBCには2つのネットワークコネクションがある。1つは社内ネットワークに接続され、もう1つはインターネット(あるいはファイアウォールのDMZ)に接続される。
SBCはビデオ会議のシグナリング設定と関連付けられ、この情報に基づいて、どのオーディオ/ビデオストリームを「承認」し、ファイアウォールを通過させるかを決定する。
SBCもトラバーサルサーバと同様、それを通過するすべてのビデオトラフィックを処理しなければならない。しかし、SBCは社内ネットワークの境界専用であるため、大規模なビデオ会議システム用に拡張するのが容易だ。逆に、多数の小規模オフィスを抱える企業に適したソリューションではない。各オフィスにそれぞれ専用のSBC装置が必要になるからだ。
SBCはH.323プロトコルとSIP(Session Initiation Protocol)をサポートできる。SBCソリューションを採用した製品としては「Polycom Video Border Proxy(VBP)」などがある。
セキュアなビデオ会議を実現するためのソリューションとして、本稿の最初の方に示したシンプルな方法は、小規模企業やビデオ会議を試験的に導入するという企業にとっては魅力的であるのに対し、後半に示したソリューションは拡張性に優れ、ユーザーのダイヤル要件も簡素化される。インターネットベースのビデオ会議の導入を検討している企業は、それぞれのソリューションを詳しく調べ、どれが自社の環境に最も適しているか見極めることが大切だ。
本稿筆者のジョン・バートレット氏は米NetForecastの主席コンサルタントで、リアルタイムトラフィック、インターネットパフォーマンス、QoS(Quality of Service)技術を担当する。半導体、コンピュータ、通信の各分野で28年の経験を持ち、マーケティング、販売、技術、製造、コンサルティングなどの業務を担当し、マイクロプロセッサ、コンピュータ、ネットワーク機器など40以上の製品の開発に携わった。コンサルティング業務は1996年から担当する。
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