Microsoftがパートナーとともに進めるプライベートクラウド導入推進プログラム「Hyper-V Cloud」の中核をなすハイパーバイザー、ハードウェア、その他の技術を分析する。
米Microsoftが企業のプライベートクラウド導入を推進するためにパートナーと共同で展開している「Hyper-V Cloud」プログラムには、単純な仮想化環境を完全なプライベートクラウドへと進化させるソフトウェア、ハードウェア、管理、ビジネスプロセス統合などの要素が含まれている。これらは具体的にどのようなものなのか。
Hyper-V Cloudプログラムの要をなすのは、当然のことながらHyper-Vだ。このプログラムで提唱されているプライベートクラウドでは、ハイパーバイザーであるHyper-Vが仮想インフラ全体のプラットフォームとして機能する。Hyper-V上の仮想マシン(VM)でワークロードが実行され、企業のIT部門はこれらのVMを管理、保守する。
Hyper-V Cloudプログラムには、仮想資産を一元的に集中管理するツールも含まれている。System Center Virtual Machine Manager 2008 R2だ。
Hyper-Vを高度に管理するSystem Center Virtual Machine Manager
Microsoft、SCVMM 2012でVMwareのvCloud Directorに挑戦(前編)
System Center Virtual Machine Manager 2008 R2 レビュアーズ ガイド
Hyper-V Cloudプログラムでは、仮想インフラを稼働させるハードウェアも重要だ。このプログラムは、ソフトウェアよりもハードウェアに力点を置いたものといえる。
「だが、Hyper-V Cloudに含まれるハードウェアは、どこがエキサイティングなのか」「目に見える違いがあるのか」「処理の仕方が根本的に違うのか」と思われるかもしれない。このプログラムに含まれるハードウェアは、それ自体が他と全く違うわけではない。違いは、ハードウェアの組み合わせ方と、その組み合わせを使うことにより、プライベートクラウドが構築しやすくなることにある。
MicrosoftのWebサイトのHyper-V Cloud Fast Trackパートナーを紹介するWebページには、現時点で6社の有力ハードウェアベンダーが名を連ねている。このページでは、これらのベンダー各社がどのように製品を進化させ、プライベートクラウドのリソース管理モデルへの適合性を高めるのかは説明されていない。
Hyper-V Cloud Fast Track:分かりやすいクラウドの作り方
SharePoint Server 2007 自習書 ~Hyper-Vを利用したテスト環境の構築手順
しかし、このページのタブには、Hyper-V Cloudの真の意義を示す見出しが付けられている。それは「Get Pre-validated Configurations(検証済み構成を得る)」というものだ(日本マイクロソフトのWebサイトのこのページのタブ見出しは、「検証済みハードウェア」)。Hyper-V Cloud Fast Trackは、Hyper-V Cloudに含まれるプログラムの1つであり、Hyper-V Cloud Fast TrackパートナーはMicrosoftと協力し、プライベートクラウドを構築するためのハードウェアとソフトウェアの検証済みの最適な組み合わせを「リファレンスアーキテクチャ」として提供している。
Hyper-V Cloudは「仮想環境の従来の構築方法は効果的ではなく、IT支出の最適化に役立たない」という認識に基づいており、このプログラムの主眼の1つは、Microsoftとパートナーの協力によるこの問題の解決だ。
この問題に関しては、過去によく似たものがあった。サーバの自作が流行していたころのことを皆さんは覚えているだろうか。IT業界では、今も自作マシンをホワイトボックスと呼ぶが、それはこうした自作サーバのほとんどに白いケースが使われたからだ。こうしたホワイトボックスの内部を見ると、一般のマシンと同じように、マザーボード、RAM、HDDがどれも別のベンダー製だったりしたが、それらはユーザーの手で組み合わせられていたわけだ。通常、ホワイトボックスはどれも似ていなかった。日常的なニーズに応じて、パーツが追加されていたからだ。
今では、ホワイトボックスを作るのは時間や労力の最良の使い方ではないことが分かっている。それぞれハードウェア構成が異なる50台のサーバを使うことは、サーバ管理の手間とコストの増加につながった。われわれはサーバについては、このまずいやり方をやめたが、仮想環境ではやむをえずこのやり方に戻ってしまった。
「やむをえず」と書いたのは、最近まで仮想環境(あるいは、それを高度に利用するプライベートクラウド)を構築するには、ホワイトボックスのアプローチが必要だったからだ。ハードウェアベンダーのWebサイトで、プライベートクラウドをショッピングカートに入れることはできなかった。それぞれ異なるベンダー製のサーバ、ストレージ、ネットワーク機器を自ら組み合わせ、仮想環境を構築しなければならなかった。多くの場合、仮想環境ごとにサーバやストレージは非常にまちまちだった。
そのため、仮想化のコストメリットの多くは、最適化されていないハードウェアや、要素を統合するノウハウの欠如のせいで、たちまち失われてしまった。
Hyper-V Cloudプログラムや、さらにはプライベートクラウドコンピューティングは、「検証済み構成」によってホワイトボックスのアプローチを乗り越えることを目指している。これらの構成には、仮想化を考慮して設計されたハードウェアが含まれる。しかし、さらに重要なことは、これらの構成のおかげで、ベンダーのWebサイトで製品アイテムを選択するように要素や条件を指定して、仮想環境を手に入れられることだ。例えば、ベンダーのWebサイトで次のような案内を受けることになる。「仮想環境をお求めですか」「以下は、X台のVMをサポートする仮想環境です」「金曜日に提供されます」「仮想環境にリソースを追加する必要がありますか」「ここをクリックし、必要なモジュールを購入してください」
ハードウェアベンダーのノウハウを利用することで、IT担当者は柔軟かつ迅速に、あらかじめ構成された検証済みのプライベートクラウドリソースプールを作成し、既知のサービスレベルをユーザーに提供できる。これは、ビジネス部門にとって望ましい。購入計画が非常に立てやすくなるからだ。また、IT部門にとっても有益だ。必要なパフォーマンスとキャパシティーレベルが確保された環境が手に入るからだ。
本稿筆者のグレッグ・シールズ氏はMicrosoft MVP受賞者で、Concentrated Technologyでパートナーを務めている。
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