【事例】世界6極をVMwareで統合、要件決めたら“一気に作る”ホンダのIT文化Honda Hybrid Cloud構想

災害対策とグローバル対応から、VMwareソリューションで共通基盤を整備したホンダ。標準的な仮想化基盤の構築、DR機能の実装、仮想デスクトップ導入の3つを実現した。

2012年12月13日 08時00分 公開
[石田 己津人]

 世界規模のハイブリッド型クラウド環境「Honda Hybrid Cloud」の構築を目指す本田技研工業(以下、ホンダ)は2012年夏、その橋頭堡となる「新共通基盤」を国内データセンターで稼働させ始めた。IT本部 システム基盤部 インフラ技術ブロック 主任の林俊行が、その経過をvForum 2012において紹介した。

 ホンダは現在、新興国市場の台頭などの環境変化から、世界を6極(日本、中国、アジア、欧州、北米、南米)に分け、各極が並行してバイク、自動車の開発・調達・生産を行う体制を取る。一方、事業を支えるIT基盤は世界規模で標準化と仮想化を進め、仮想的に統合していく考えだ。その将来像がHonda Hybrid Cloudなのだ。

 Honda Hybrid Cloud構想の一環として、2012年春から夏にかけて日本で実行されたのが「新共通基盤プロジェクト」である。きっかけは東日本大震災だ。

 栃木県にあるホンダの四輪開発拠点は、先の大震災で甚大な被害に見舞われた。林氏は「奇跡的に2週間程度で復旧したものの、影響は全世界に及んだ。グローバル展開する上でも事業継続性が重要。経営層も危機感を強めた」と話した。ホンダは全世界でも核となるデータセンターを日本と北米に置く。両センターには高い可用性と相互補完性が求められるが、特に今後も巨大地震が予想される国内センターの基盤強化は喫緊の課題だった。

ツール駆使して両センターのvSphere環境を統合管理

 新共通基盤プロジェクトは、3つサブプロジェクトで構成される。ホンダは国内で埼玉県和光市と栃木県さくら市にメインのデータセンターを構える。両センターの可用性を高める観点から、(1)標準仮想化基盤を構築する、(2)同基盤へディザスタリカバリ(DR)機能を実装する。そして世界中で同じクライアントソフトを利用可能にするため、(3)両センターに仮想デスクトップ基盤を構築する。この3つを同時並行で進めた。

 (1)と(2)のサブプロジェクトは2012年4月、(3)は5月に始まり、それぞれ7月、8月中にシステムをカットオーバーしている。つまり、導入期間はわずか3カ月ほどである。林氏は「“何がしたいのか”の要件定義に時間をかけ、実現に必要な製品や技術を決めたら一気に作り上げる。これがホンダのIT文化」と話した。

 プロジェクト全体で実現手段として選んだのはVMwareソリューションである。ホンダは「VMware Infrastructure 3.5」からVMware製品でサーバ仮想化を行っており、その継承を選んだ。

図 和光・さくらのセンターに導入された新共通基盤の概要

 和光とさくらのセンターの双方で、Infrastructure 3.5ベースの従来環境を「VMware vSphere 5.0」(以下、vSphere 5.0)で構築した標準仮想化基盤へ移行させた。「仮想サーバの台数が増えていくことは目に見えているので、徹底して運用を効率化することを目指した」(林氏)のが特徴だ。

 vSphere 5.0の新機能「Auto Deploy」(関連記事:ライセンスのカウント方法も分かる! VMware vSphere 5の全貌)を活用し、vSphereホストの立ち上げやパッチ適用を自動化。物理配線を少なくするため、VM単位で通信帯域を制御できる「Network I/O Control」機能も駆使する。そして両センターで稼働する、vSphere標準の管理サーバ「VMware vCenter」をリンクモードで結び、和光センター側で統合管理する。さくら側はvSphere管理者が不在なのだ。さらに統合管理を進めるため、高い抽象度で複数のvSphere環境をまとめて管理できる「VMware vCenter Operations Manager」(関連記事:複雑化するvSphere環境を高度に管理 vCenter Serverの上位製品登場)も導入中という。

 和光・さくらセンターは同じ関東圏でも100キロ以上離れているが、VMwareのサイト間フェイルオーバーソフト「vCenter Site Recovery Manager(SRM)」(関連記事:VMwareで仮想マシンの遠隔フェイルオーバーを実現する唯一の選択肢)を用いて、アクティブ・アクティブなDR体制を整えた。

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