ついに定まった!? IBMのクラウド戦略
IBM、パブリッククラウド進出でAmazonに対抗
IBMがパブリッククラウド分野で独占的な存在になるのかどうかはまだ分からない。しかしそのために必要な全てを同社は持っている。
米IBMがエンタープライズ向けに、サービスとしてのパブリッククラウドインフラ提供に乗り出した。
同社は大きな宣伝もなく、Smart Business Cloud(SBC)製品のラインアップに「Smart Business Cloud - Enterprise」を追加した。SBC - Enterpriseは従量制のセルフサービス式オンラインプラットフォーム(IBMの登録顧客向け)で、仮想マシン(VM)をさまざまなフォーマットで運用できる他、IBMの各種サービスを利用できる。
SBC - Enterpriseは、純粋なサービスとしてのインフラ(IaaS)製品だった「Smart Business Development and Test Cloud」から大きな一歩を踏み出すものとなる。ユーザーはRed Hat Enterprise Linux、SUSE Linux Enterprise Server、Microsoft Windows Serverを運用してストックVMのプロビジョニングを行うことも、IBMが部分管理してユーザーが利用する形式の設定済みソフトウェアアプライアンスの中から選択することもできる。選択できる製品はIndustry Application Platform、IBM DB2、Informix、Lotus Domino Enterprise Server、Rational Asset Manager、Tivoli Monitoring、WebSphere Application Server、Cognos Business Intelligence(Cognos Business Intelligence関連記事:「「Cognos 10」に見た、ビジネスアナリティクス(BA)を成長戦略に掲げるIBMの本気度」)など多数ある。
SBC - Enterpriseで提供している画像とアプリケーションは、現時点で全て米AmazonのElastic Compute Cloud(EC2)環境で運用されている。これはIBMがたどってきたクラウドコンピューティング開発行程の裏事情を物語るものかもしれない。IBMが発表したクラウドアプリケーション全てがIBMのコンピュータ環境で運営されているわけではない。
スクリーンショットやデモ映像を見ると、クラウドユーザーにとってすっかりおなじみになっているWebインタフェースのポイント&クリックプロビジョニングシステムが映っている。恐らくエンタープライズユーザーを意識した動きとして、IBMは苦労を承知でアクセス/ID管理コントロール、セキュリティ/アプリケーション監視ツール、VPN/VLAN、VM隔離といったハイエンド機能も提供している。IBMのテクニカルサポートも利用できる。
IBMは一貫して、エンタープライズ市場におけるオープンソースソフトウェアを支持しており、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)とSUSE Linuxに対応したことは、Linuxを利用している大手顧客にとってこうした製品が強みになるという認識をIBMが持っていることを示すものだ。Linux(Blue Insight)をベースとすることで、Amazon方式のネットワークにIBMの技術を移植することも容易になる。
IBMのパブリッククラウド進出をどう見るか
業界では、IBMによるクラウドベース製品の発表は遅まきながら正しい方向への第一歩と見る向きもある。もし同社がオンプレミスアプリケーションの統合における現在の優位を拡大したいと思えば、これは当然の動きだ。
「IBMは(クラウドにおける)サービスとしてのインテグレーションについて語り始める必要がある」と話すのは、米Interarbor Solutionsを経営するダナ・ガードナー氏。「同社は物理的なエンタープライズアプリインテグレーション市場で首位に立っている。従って次のステップはクラウド分野でトップに立つことであり、正しい方向に動いているようだ」と指摘する。
ガードナー氏をはじめ、アナリストやIT専門家はここ数年、IBMの全般的なクラウド戦略を「場当たり的」と批判してきた。鍵となる幾つかの買収や技術の導入を通じて有望なスタートを切ったものの、同社の取り組みは失速し、方向性が定まらないように見えていた。
「IBMはクラウドへの進出は早かったが、過去2年のこの市場は非常に動きが激しかった。現在クラウドといえば、モバイル、大量のデータ、分析、そしてコスト削減や合理化を思い浮かべる。IBMはクラウドに関してこうした全てを包括する最新の時代精神に追い付いていない」とガードナー氏は言い添えた。
一方、IBMのSBC - Enterprise提供のタイミングは適切だったと見るアナリストもいる。米salesforce.com、米Google、Amazonといった動きの速い競合各社が、IBMの進出していない分野でさらに有望な製品やサービスを打ち出してくることを同社は十分見越している。
匿名希望のアナリストは言う。「(IBMは)まだ、恐れることなくクラウド戦略を推進し、サービスとしてのインフラのレベルをはるかに超えてランタイムサポートやツールのようなものを提供している貪欲な競合各社を見守っている。世界中でGoogleのような企業がさらに高度なサービスを提供してくるだろう」
料金体系
IBMの正規料金表を見ると、インスタンスごとの料金はコッパー、ブロンズ、シルバー、ゴールドの4段階に分かれている。コッパークラスのRHELは1時間当たり0.19ドル、ゴールドは同0.46ドル。Windowsインスタンスは1時間当たり0.10ドルからとなる。
IBMはまた、長期割引を希望する顧客向けに、Amazon Web Services(AWS)(AWSについての詳細は関連記事「コンピュータリソースを無制限に活用できる『Amazon Web Services』」を参照してほしい)のような「Reserved Capacity」を提供する。料金は大幅に安くなるが6カ月契約を結ぶ必要があり、最低でも1850ドルの月額料金が掛かる。
Reserved CapacityのRHEL契約は1時間当たり0.0154ドル、ゴールド契約では同0.30ドル。Windows版の料金は同0.064ドルから。ライセンスの種類は利用するアプリケーションまたはBYOL(bring-your-own-licensing)によって決まる。料金はAWSや米Rackspaceといった他社のパブリッククラウドサービスと肩を並べているようだ。
IBMがパブリッククラウド市場へ踏み出した一歩は大きい。同サービスは既に開始され、注文を受け付けているようだ。米TechTargetの最近のランキングでは、1年そこそこで3000万ドルのプロジェクトとなったSmart Business Test and Development Cloudの成功により、クラウドプロバイダー上位10社のランキングにIBMが入った。
世界大手2000社にITサービス、ソフトウェア、サポートを提供してきた実績からすれば、IBMがクラウドコンピューティング市場で大きな動きに出るのは時間の問題だったとの見方もある。同社がパブリッククラウド分野で独占的な存在になるのかどうかはまだ分からない。しかしグローバルデータセンター、接続性、サービス提供能力、貴重なエンタープライズユーザーベースなど、そのために必要な全てをIBMは持っている。
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