「既存システムの改革は待ったなしの状況」クラウドによる段階的な構造改革をアクセンチュアが語るクラウド活用

高額な保守・運用費用の支払い、運用ノウハウの属人化など、既存システムの改革は待ったなしの状況だ。こうした課題を解決するためにクラウドは有効な手段となり得るのか。

2012年09月06日 08時00分 公開
[富永康信,ロビンソン]

ITmedia Virtual EXPO 2012のご案内

 2012年9月11日(火)~28日(金)に、ITmedia Virtual EXPO 2012を実施します。

 クラウドゾーンでは、アクセンチュアの沼畑幸二氏が「経営に貢献するITの実現」をテーマに、クラウドがビジネスにもたらす潜在的な価値についてさまざまな提言を行います。

ITmedia Virtual EXPO 2012 クラウドゾーン


既存システムの構造改革は待ったなし

アクセンチュア 沼畑幸二氏。『クラウドが経営を変える!- 新ビジネスを創造する企業ITの変革』著

 「既存システムの改革は待ったなしの状況にある」と指摘するのは、アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 イノベーション&アライアンス統括 エグゼクティブ・パートナーの沼畑幸二氏だ。恐らく多くの企業では、既存システムに次のような課題を抱えているのではないだろうか。

 まずは、高額な保守・運用費用の支払いが挙げられる。業務ごとにサイロ型でIT資産を構築してきた企業は、業務への影響が出るのを避けるため、なかなかITインフラの統合に踏み込むことができない。その結果、高額な保守・運用費用の支払いが毎年続いているというケースは多い。

 また、海外に比べITシステムのライフサイクルが長い日本では、その間に度重なる改修でプログラムが複雑に絡み合い、軽微な改修でも業務への影響分析に多くの時間がかかり、改修コストも積み上がってしまっている。

 コスト負担ばかりではない。長年使い続けることで運用のノウハウが属人化し、暗黙知化することによって、保守・メンテナンスを行うためのドキュメントが存在しないといった問題もある。古いシステムを維持管理できる人材の不足が年々深刻化している。

 そうした状況によって、システムのロードマップが描けず、現状のシステムを継続的に利用可能かどうかの分析も不透明なまま運用しているといった悩みも多いだろう。沼畑氏は、「既存システムが抱えている課題を共通認識に持ち、クラウド化による構造改革を行うことは有効な手段である」と提案する。

クラウドの持つ3つの特質と2つの価値

 サーバやネットワーク、ストレージ、アプリケーションなどのコンピュータリソースをオンデマンドで提供するクラウドコンピューティング。沼畑氏はクラウドの特質について3つの視点で定義する。

 1つはコストの変動費化。サーバやストレージなどの情報システム資産を、自社で調達・構築し、人手を使って運用する代わりに、クラウドを利用すれば電気、ガス、水道のように利用した分だけの費用を従量制で支払うことができる。固定費の変動費化によって、コストを大幅に削減できる可能性を持つという。

 2つ目は高スケーラビリティによるITリソースの利用。自社で構築したシステムの場合はITリソースの上限値に縛られるが、クラウドならクラウドベンダーが用意した膨大なコンピュータリソースを必要な量だけ利用できるので、ビジネスの拡大に柔軟に対応できる。

 3つ目は高アジリティによるITシステムの導入。クラウドの膨大なリソースをすぐに利用開始できることも大きな特徴で、市場の急激な変化や経営判断に対しITシステムの増強・縮減を即時追従させることが可能となる。

 「今後、クラウド活用がビジネス戦略で大きなポイントになる」と強調する沼畑氏。クラウドを利用することで、コスト削減、景気の変動に応じたエラスティック(伸縮可能)なIT利用、ITアウトソーシングによる持たざる経営といったIT部門から見た価値に加え、エンタープライズITとコンシューマITを融合したコンシューマリゼーション、ソーシャルメディアをビジネスに生かすイノベーション、マーケットの要請に応じた迅速なビジネスの実行など、ビジネス部門へも新たなる価値を提供するという。

図1 企業におけるクラウド活用は、IT部門視点の価値のみならずビジネス部門においても新たな価値を提供する

IT変革を実現する5つのアプローチ

 だが沼畑氏は、「むやみにクラウド化をすればよいというわけではない」とも指摘する。企業が保有するITシステムの約20%が基幹システムであり、カスタム開発を行ってきたメインフレームのホストマシン、あるいはERPパッケージを活用して作り込んだものがそれに当たる。残りの約80%が業務ごとに効率化を高めるための顧客管理、契約管理、経費精算などの業務ツールで占められている。

 20%の基幹システムに関しては、ハードウェア/ソフトウェアの更改がビジネス的に効果を生まないケースも多い。そのため、更改コストを抑制することを優先して保守料をスリム化し、オープン化あるいはダウンサイズ化を行う。さらに、インフラ部分は仮想化することで、社内で利用量型モデルに変えていくことが必要となる。

 残りの約80%の業務システムは、順次棚卸しを実施して不要なものは廃棄し、汎用サービスの活用やSaaS(Software as a Service)への乗り換えで外部化を進めるのが効率的な運用のコツだという。

クラウド活用の価値をあらためて問い直すセッションに注目

 沼畑氏の提言はまだまだ続くが、以降は2012年9月11日~28日に開催する「ITmedia Virtual EXPO 2012 クラウドゾーン」の本セッションでぜひご確認いただきたい。

 クラウド化によってサーバインフラを25分の1に圧縮した事例、ソーシャルメディアの活用でカードの不正利用を防止した企業の事例の他、クラウドの分散コンピューティングリソースを活用しアジア各国に配した工場の稼働率や故障情報の把握を行うグローバル企業の成功例などが豊富に紹介される。

 クラウドというキーワードがバズワードを脱した今、同氏のセッションはあらためてクラウド活用の意味を問い直すきっかけになるだろう。

ITmedia Virtual EXPO 2012のご案内

 2012年9月11日(火)~28日(金)に、ITmedia Virtual EXPO 2012を実施します。

 クラウドゾーンでは、アクセンチュアの沼畑幸二氏が「経営に貢献するITの実現」をテーマに、クラウドがビジネスにもたらす潜在的な価値についてさまざまな提言を行います。

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