2012年09月14日 18時30分 公開
特集/連載

IBMによるRIM買収のうわさ――BlackBerryは幕引き?どうなるBlackBerry Messengerサービス

米国で、「IBMがRIMを買収する」という可能性が取り沙汰されている。実現すればBlackBerry OSや端末の開発は終了し、定評のある「BlackBerry Messengerサービス」がiPhoneやAndroidに開放されるかもしれない。

[Tim Scannell,TechTarget]

 大物たちがたくらむ驚くべき陰謀や策略、あるいは起死回生の秘策など、物々しい言葉がしきりに飛び交っている。テレビドラマの話ではない。1年以上にわたってカナダのResearch in Motion(RIM)と同社のBlackBerryプラットフォームをめぐって同社を悩ませ続けてきたドラマのことだ。

 そしてここにきて、超大物企業である米IBMによる買収の可能性が取り沙汰されている。これはRIMの救済と解放になるのだろうか、それともBlackBerryという有名ブランドがもうすぐ消滅することを意味するのだろうか。

 かつては「ウォール街の寵児」あるいは「スマートフォンの業界標準」ともてはやされていたBlackBerryだが、今では完全に失速状態に陥って墜落寸前だ。米調査会社IDCによると、全世界のスマートフォン市場でのBlackBerryのシェアは、2011年1〜3月期の13.6%から、2012年の1〜3月期には約6.4%にまで低下した。一方、米Googleと同社のAndroidは日増しに勢いを強めており、2012年1〜3月期の世界シェアは59.0%で、出荷台数は8990万台に達した。

RIMの転機はサービス障害

 RIMに対する批判の1つとして、多彩な競合製品が市場にあふれ返る中で、同社が新しい魅力的な携帯端末で製品ラインを拡張するのが遅れたことが挙げられる。また、世界で最もセキュアな閉鎖型システムの1つであるRIMのBlackBerry Messengerサービスについても、同社の支配が強過ぎたと批判する人もいる。

 RIMにとって最大の転機となったのは、2011年に同サービスが大規模な障害に見舞われ、全世界で一部のサービスが利用できなくなったことだった。これを機に、ユーザーが同サービスの価値に疑問を抱き、競合企業の誘いの声に耳を傾け始めた(関連記事:BlackBerryのシステム障害でiPhoneに傾くヨーロッパ市場)。

 ただ現実には、BlackBerryの技術プラットフォームにはまだ長い寿命と潜在的な可能性が残されており、忠誠心の高いユーザー層も存在する。特に政府部門では、今でも市場が徐々に拡大している。しかし、BYOD(私物端末の業務利用)の動きが拡大する中、政府部門でもAndroid端末を真剣に検討し始めていることをRIMの幹部も認めている。

 IBMがRIMを買収することになれば、RIMおよび同社の技術プラットフォームをめぐる力関係が変化することは間違いない。IBMにとって関心があるのは、BlackBerry Messengerサービスとセキュリティに優れたRIMの世界的サーバネットワークだけのようだ。これはIBM自身のモバイル端末管理(MDM)戦略に合致する。また、IBMはサードパーティーデベロッパーにBlackBerryを開放すると予想されるため、同社の収益拡大にも大きく貢献する可能性がある。

 一方、RIMにとっては、取りあえず現金収入を確保できることを除けば、IBMによる買収で得るものはほとんどない。IBMが欲しいものを手に入れてしまえば、後に残されるのは、スマートフォンの開発や販売などの不採算部門だけだ。結論的にいえば、この買収は、われわれが知っているBlackBerryの幕引きを意味するということだ。

BYODに与える影響

 こういった買収をめぐっては、さまざまな疑問が付きまとう。そこで、米Brighthand.comの技術担当編集者エド・ハーディー氏に話を聞いた。

1. RIMのサービスがBlackBerry端末から切り離された場合、他の端末でも利用できるのですか?

ハーディー 現時点では、BlackBerry Messenger(BBM)などのBlackBerryサービスは、iPhoneやAndroidなどのライバル製品では利用できません。ライセンス上の制約に加え、技術的な障害もあります。PDA(携帯情報端末)開発のパイオニア企業である米Palm Computingも当初、RIMと同じ路線を採用しましたが、後にソフトウェア事業を分離独立させ、サードパーティーに活路を見いだそうとしました。しかし既に時遅しで、コミュニケーションを重視した高機能型携帯端末が登場し始めており、同社は時流に取り残されたのです。

 専門家の中には、「RIMはハードウェアとOSを放棄し、iOSやAndroidをはじめとする各種プラットフォームにBBMだけを提供すればいい」と提案する人もいます。そうすれば利益を確保できるかもしれませんが、企業規模はずっと小さくなるでしょう。

2. サードパーティーソフトウェアベンダーが提供するセキュリティ機能が、RIMのサービスを時代遅れにしたのですか?

ハーディー これは「韓国のKia(起亜自動車)やHyundai(現代自動車)などの車ばかりが売れている低価格志向の市場で、レクサスの存在意義はあるのか」という質問と似ています。そしてその答えは「イエス」です。レクサスは新たなレベルの品質とユーザーエクスペリエンスを体現するからです。RIMのエンタープライズセキュリティシステムは最も優れています。サードパーティーデベロッパーはそのレベルに達しておらず、多くの企業はRIMのセキュリティの方を好んでいます。BBMの暗号化技術は今でも、セキュリティという点では市場の最先端プラットフォームです。少なくとも、今のところはそうです。

3. IBMによる買収は、BYOD化の動きにどんな影響を与えるでしょうか?

ハーディー このインスタントメッセージングサービスが、iPhoneやAndroidなどの競合プラットフォームでも使えるようになるでしょう。このため、BBMを利用していて、従業員全員にBlackBerryを与えている企業でも、従業員が私物のAndroid端末を職場に持ち込むことが問題にならなくなります。これらの端末でもBBMにアクセスできるようになるからです。

 エンタープライズ市場や政府市場でBYOD(コンシューマライゼーションと言い換えてもよい)が成功するためには、端末間の障壁の除去、ユーザーインタフェースの改良、そしてITが各種の端末の維持管理を容易に行えることが条件となる。

 結局、BlackBerryの命運は、機能を満載した派手なスマートフォンに引きつけられていくユーザーのニーズにかかっているということだ。BBMの技術とセキュリティがRIMの束縛から解き放たれれば、BlackBerryに対するユーザーの個人的思い入れはすぐに弱まり始めるだろう。


 IBMがRIMを買収する可能性について、私は最近、ワシントンD.C.のラジオ局Federal News Radioから取材を受けた。このインタビューは同局のWebサイトに掲載されている。

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