ユニークなサービスで差別化を図る「BIGLOBEクラウドホスティング」企業向けシステムを構築するパブリッククラウド【第11回】

NECグループのパブリッククラウド「BIGLOBEクラウドホスティング」。ニフティクラウドとの比較や、“小さめの物理筺体”を生かしたサービス、オンプレミスの専用線引き込みサービスなど特徴を概観する。

2012年09月19日 08時00分 公開
[加藤 章,電通国際情報サービス]

 本連載「企業向けシステムを構築するパブリッククラウド」ではさまざまなパブリッククラウドを解説している。今回はNECビッグローブ(以下、ビッグローブ)の「BIGLOBEクラウドホスティング」(以下、BIGLOBEクラウド)を取り上げる。2012年8月31日に新機能が追加され、同サービスの特徴が強化されたようだ。日本の企業ユーザーにとってどんなメリットがあるのか、ビッグローブへの取材をベースに、その特徴を概観してみたい。

NECグループのパブリッククラウド

 ビッグローブは、NECグループのインターネットプロバイダー(ISP)である。1980年代のNECのパソコン通信「PC-VAN」をルーツとし、その後、他のインターネット関連事業を統合して、1996年に発足した。コンシューマー向けISPのイメージが強いが、2000年ごろから法人向けサービスを強化し、データセンターを用いたハウジング/ホスティングや、オンラインストレージなどのサービスを提供している。

 これらのサービスのファシリティや運用ノウハウを「IaaS(Infrastructure as a Service)型パブリッククラウド」として外販しているのがBIGLOBEクラウドである。このあたりの経緯は、パソコン通信時代からの良きライバルであるニフティクラウド(富士通グループ)の系譜とほぼ一致していると見てよいだろう。

 NECおよびNECグループは、さまざまな業種で開発から保守運用までを行う日本のIT界の巨人である。グループ全体で“クラウド”と名打ったサービスも多数あるようだが、実態はデータセンター事業、あるいは関連の保守運用サービスなどのようである。真に「クラウド」と呼べるものがどの程度あるかは分からないが、いずれも「プライベート」色の強いものばかりのようだ。同グループの中でIaaS型パブリッククラウドを掲げているのは、唯一、BIGLOBEクラウドだけと聞いている。リリースは2011年1月である。

BIGLOBEクラウドの概要

 サービス内容は、基本的には仮想サーバ(インスタンス)の時間貸しおよびその周辺の付帯サービスである。Amazon Web Services(以下、AWS)をライバルと見ており、オンデマンドでセルフサービス、API(AWS互換)公開という路線を踏襲している。差別化ポイントとしては、日本語の管理コンソール、マルチアカウント機能(最大100人)、ログ取得機能、デフォルトでのHA構成、月額固定料金制度、人間系でのマネジメントサービス/サポートサービスなど、AWSにない機能やサービスを付加している。

 ざっと大急ぎで書いてしまったが、ここまでお読みになってぴんときた方もおられるのではないだろうか。BIGLOBEクラウドは、以前、本連載で紹介したニフティクラウドにとてもよく似ている(ニフティクラウドの記事:システム管理者に優しいIaaS「ニフティクラウド」)。沿革の類似性は前述の通りだ。機能的には、いずれも仮想化基盤にVMwareを採用しており、大きな差は生じにくそうだ。サービス面でも、両社ともAWS対抗で「国産の安心感」を売りの1つとしており、戦略的に似通ってこざるを得ない。両社の類似点と差異について、目立ったところを表1にまとめた。以前の記事などを参照しつつ、比較してみていただけると良いだろう。

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