英国・アイルランドのSAPユーザーグループが行った調査で95%の回答者がSAPのライセンス体系が複雑と回答した。サポート用のポータルサイトにも批判があった。SAPはユーザーの支持を回復することができるだろうか。
独SAPのライセンス体系に関する最近のユーザー調査の結果は、特にこのソフトウェアメーカーの仕事に不満を感じていた人々にとっては、曖昧でも意外でもなかった。英国・アイルランドのSAP User Groupが実施した調査によると、SAPは、たとえ将来目指す方向が不透明でも、ユーザーの声には耳を傾けているようだ。
同地域の150社、366ユーザーを対象に実施した今回の調査から、SAPユーザーの95%は、「同社ソフトウェアのライセンシングポリシーは全体的に複雑だ」と感じていることが分かった。
さらに、回答者の88%はSAPに価格表の公開を求め、「ライセンスコストの透明性を高めるべきだ」と考えていることも明らかになった。
こうした数字にあらためて驚くSAPユーザーはそう多くはないだろう。同グループの副会長であるフィリップ・アダムス氏は、今回の調査について、ライセンス体系や価格設定に関する顧客の懸念を掘り下げ、SAPにこの分野におけるマーケティングの改善を働き掛けるためのイニシアチブの1つだと説明する。アダムス氏によると、同様の調査を2013年にも再び実施し、どのような改善がなされたかをチェックする考えだ。
また今回の調査は、SAPのライセンス契約が不透明だといった一部の不満の声に応じたのではなく、ソフトウェアユーザー全般に共通する問題を取り上げた結果だという。
SAPはポリシーを変更するのではなく、セールスレベルの向上で状況を改善することができる。営業担当者が、現行のライセンス体系と価格設定を、顧客や見込み客により丁寧に説明し、「SAP Service Marketplace」の情報をもっと明確で分かりやすいものにすればよいのだ。SAP Service Marketplaceは顧客サポート、コンサルティングサービス、教育サービス、パートナーサポート情報のメインポータルである(参考記事:SAP ERP 6.0を2020年まで使い続けられる理由)。
「SAP Service Marketplaceを改善して分かりやすくすれば、ライセンスについて営業部員に聞けなかったことも、Webサイトにアクセスして知ることができるだろう」とアダムス氏はいう。
米調査会社のGartnerは2012年はじめ、SAPの製品やライセンス体系の情報を得るために顧客はどこへ行くべきかというリポートを発表した。その中で、他の情報ポータルとともにSAP Marketplaceについても批判している。
「正しい情報をそこで得るのは難しい」と、Gartnerのアナリストで同リポートの共著者であるデレク・プライア氏は語る。SAPがポータルで利用している検索技術が、Googleなどの広く知られるエンジンより「非効率的」であるからだ。
「SAP独自の検索技術は効率的ではない」とプライア氏。また同氏は、SAPのライセンシングを巡る混乱はますますひどくなっていると指摘する。「SAPのライセンス体系は次第に複雑さを増してきた。今や非常に非常に複雑なものとなっている」
SAPのライセンシングのやり方については、他の人々も同様に悲観的だ。今回の調査に回答した人々の多くは、「SAPソフトウェアのライフサイクルを通して、どのライセンスが必要なのかを知ることは難しい」としている。これは、利用権に関して異なる制約が含まれるマルチライセンス契約のSAPソフトウェアパッケージに起因する問題だ。
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