ビジネスインテリジェンス(BI)などのデータ分析をクラウドサービスで実現する動きが拡大しつつある。クラウドに関する最新の調査結果を基に、その理由を探る。
大型ハリケーン「アイリーン」の接近に伴い、米ニューヨーク市が警戒を強めていたころ、フィル・グリーン氏は、これから起こることが自身を取り巻くIT環境を永遠に変えることになるとは思わなかった。
グリーン氏の最大の懸念は、全米オープンテニスの会場となるフラッシングメドウズコロナパークにあった。テニスの4大国際大会「グランドスラム」の最終戦である全米オープンテニスが、開催を間近に控えていたのだ。だが同氏が心配していたのは、強風や大雨が試合に及ぼす影響ではない。全米テニス協会(USTA)の最新メディア担当上級ディレクターであるグリーン氏がもっぱら心配していたのは、もっとずっと基本的なこと、つまり「電気」の問題だった。
「『数日間は停電が続くのでは』といった臆測も出ていた」とグリーン氏は語る。
全米オープンテニスのWebサイトを運営するスタッフにとって、停電は死刑宣告に等しかった。大会期間中の2週間は、同Webサイトへのトラフィックが年間で最も多くなる時期だ。最新の記事や写真、動画、試合分析などを求めて、多くの人たちがアクセスしてくる。関係者の間では、アイリーン対策が差し迫った急務となった。
解決策となりそうな方法が1つあった。グリーン氏は、USTAの技術サポートプロバイダーである米IBMからの提案を受け、ハリケーンが通過するまでインフラとツールをクラウドへ移し、サイトの更新を続けられるようにしたのだ。「迷いはなかった。はらはらしていたのは事実だ」(同氏)
グリーン氏やUSTAはこうして思い切ってクラウドへの移行に挑戦したが、これまでのところ、多くの企業はクラウドへの取り組みに消極的だ。
公平を期すためにいえば、大半の組織は、「やらなければ、やられるかもしれない」という切迫した状況で決断が迫られているわけではない。いつでもすぐに製品とサポートを提供してくれるベンダーの存在があるわけでもない。
ただし、新しい調査結果は、クラウドが勢いを得つつあることを示している。とりわけ、ビジネスインテリジェンス(BI)とデータ分析に関しては、かなりの数の企業がそう遠くない将来における導入を計画している。
先頃実施された調査「2012 TechTarget Cloud Pulse」では、「現在、クラウドITサービスとアプリケーションを利用している」のが回答者全体の半数以上を占めた。また、クラウドITサービスの現在の用途については、詳細を回答した643人のうちの32%が「BIとデータ分析」を挙げている。
これは高い数値に見えるかもしれない。だが米コンサルティング会社McKnight Consultingのウィリアム・マックナイト社長は、特に意外だとは思わないと言う。最近は、BIもデータ分析も定義が広くなり、用途も分散されてきているからだ。
「われわれは分析に基いて会社を経営しているかのように思い込まされている。だが実際のところ、こうした分析は予測的というより、浅薄であるケースが少なくない」(マックナイト氏)
用語の定義はさておき、クラウドに良い面があるのは確かだ、とさらに同氏は続ける。クラウドには、システム担当者の人件費やインフラコスト、導入にかかる時間を削減できるという利点があるが、最大の強みは融通性だ。
「クラウドの利点の1つに、容量がどれだけ必要かを前もって厳密に予測する必要がない点がある。クラウドはスケールアウトが可能だ。パブリッククラウドプロバイダーを利用するのであれば、現在の割り当て分を使い切った時点で、いつでもすぐにハードウェアを追加できる。そして、継続的に容量を調整できる」と同氏は語る。
「これからビッグデータ分析に取り組もうという企業にとって、クラウドは資産にもなる」と指摘するのは、大規模分散処理ミドルウェア「Hadoop」のデータとBIツールを連係させる製品を手掛ける米CirroのCEO、マーク・タイセン氏だ。
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