効率的に顧客を絞り込む
顧客は何を欲している? 受発注システムの新たな使い道を探る
受発注処理プロセスが複雑化するにつれ、より優れた受発注管理が不可欠になっている。受発注管理システムの効率的な運用方法、顧客との関係強化に結び付ける方法など、ユーザーや専門家のアドバイスを紹介する。
ビジネスで最も重要なことは、顧客の動向をつかむことだ。タイラー・ウィルソン氏によると、その価値ある情報をつかむための鍵は、受発注管理技術にあるという。
「最大のトレンドは、受注時により多くの情報を取り込みたいというもので、そのために今注目を集めつつあるのが受発注システムだ」と、米Panorama Consulting Solutionsで上級ERPコンサルタントを務めるウィルソン氏は語る。
しかし、受発注システムはどのような種類の情報を提供してくれるのだろう? ERPや電子商取引システム(eコマース)との連携はどうなっているのだろう? 以下、受発注システムの効率的な運用方法、顧客との関係強化に結び付ける方法など、ユーザーや専門家のアドバイスを紹介する。
受発注システムでマーケティング
企業は、どの製品が売れているかという情報を知りたいだけでなく、どのような顧客が製品を買っているのかという情報も知りたいと考えている、とウィルソン氏。顧客について詳しく知れば、顧客の望むものを効率的に提供できるからだ。
「顧客マスターファイルを作成し、顧客層の内訳を詳しく知れば知るほど、より綿密なマーケティング戦略を構築することが可能になる」とウィルソン氏は説明する。「基本的には、受注した時点に得た情報で全てが決まる」
顧客との複数の接触手段を有するマルチチャネル小売業、米Hanover Directが受発注システムの運用で得たものは、まさにそうした効果だった。同社 最高情報責任者(CIO)のジェフェリー・ロゼンホルツ氏によると、米NetSuite社の受発注システムによって顧客の購買行動、購買習慣をより詳しく知ることができるため、ターゲットとする顧客層に的確なマーケティング戦術でアプローチできるという。
同システムは、オーダープロセスそのものも効率化した。NetSuiteを導入する前、Hanover Directでは1日分のオーダーをメインフレームシステムでバッチ処理していた。つまり、その日に届いたオーダーは、翌日まで処理されなかったのである。現在、同社ではオーダーの到着と同時に処理できるようになっている。
NetSuiteはまた、同社の顧客理解を大きく前進させただけでなく、「問題処理能力も大幅に強化した」とロゼンホルツ氏はいう。Hanover Directの顧客記録が旧システムからNetSuiteに移植された結果、コールセンターのスタッフや他の従業員は顧客に関して統一された360度の視界を持つことができるようになった。こうした顧客に対する包括的な理解は、問題への対応を迅速化し、顧客サービスの向上につながった。
受発注管理ハブの実現
受発注管理は伝統的にERPと緊密に連携していたが、近年そうした状況は変わりつつある。そう語るのは、米調査会社Forrester Research副社長で主任アナリストのジョージ・ローリー氏だ。
ERPと受発注管理が統合化されていたのは、受発注管理の技術が「顧客と製品データ」に依存する必要があったためだが、「この2つの技術のつながりは徐々に緩くなり、供給業者、配達業者、販売業者、設置業者、顧客を結ぶコラボレーションスペース、いわゆるオーダーハブへと移行しつつある」と同氏は指摘する。
マルチチャネルの要求に対応し、エンドツーエンドのビジネスプロセスを可能にするこうした受発注管理“ハブ”は、特に企業・コンシューマー間(B2C)の世界で急速に普及し始めている。その背景には、より優れた受発注管理が、複雑化する受注処理プロセスに不可欠な技術になってきたことがある。
米Constellation Researchの主任アナリスト、R・“レイ”・ワング氏は、前出ローリー氏の意見に同意する。
「もはやオーダーマネジメントというよりも、オーダーオーケストレーションだ」と同氏は指摘する。「単にERPシステム内からオーダーを引き出すだけではない。全てのチャネルにまたがり、CRM(顧客管理システム)を通して、フロントオフィスから最終工程に至るまで、オーダーをスムーズに流す仕組みになっている。ビジネスの成功に不可欠なものになったといえるだろう」
受発注管理は、ERPシステムの他の部分にフィードする基盤的トランザクションの1つだ、とウィルソン氏はいう。
「受発注管理はあらゆる業務の主要トランザクションである」と同氏。「ERP、サプライチェーン、その他、企業の受注業務に関連する全てのものと連動する。売り上げ、売掛金の流れをフィードすれば、その後のプロセスにフィードされ、最終的にはキャッシュに変わる。またそれらは、将来の事業予測の重要なパートになるだろう」
ローリー氏の説明によると、受発注管理ではまず企業が顧客を特定する。次に、企業が製品を出荷すると、送り状を発行、売掛金勘定に未決済明細を生成し、入金で決済となる。
「企業がバックエンドのERPシステムとともに受発注管理を利用する方法は幾つかある」と語るのは、米Gartnerの副社長でアナリストのジーン・アルヴァレツ氏だ。
「受発注システムは、コールセンター、Webサイト、店舗、モバイルデバイスなど、顧客セールスの複数の接点を1つにまとめたキューとして利用できる」と同氏は語る。「全てのオーダーは、さまざまなエンドユーザーとの接点で取り込まれ、1つのキューに送られ、ERPに受け渡される」
「その他のアプローチとしては、受発注管理を利用してバックエンドにある複数のERPシステムを利用する方法もある」と同氏は続ける。「例えば、配送センターが複数あって、それぞれ同じERPシステムでフルフィルメントを実行している場合、どのセンターが顧客に最も近いか判断する必要がある。受発注管理で、そうした判断を行うことが可能だ」
受発注システムはまた、企業のM&A(合併・買収)にも役立つ。
「例えば、ある会社が異なるERPシステムを利用する会社を買収したとしよう。買収した会社の製品を自社のチャネルで販売する場合、分散受発注管理を利用してオーダーを買収した会社のERPシステムに取り込み、フルフィルメントを実行すればよい」とアルヴァレツ氏。「また、受発注管理は卸売業などのサードパーティーからのオーダー処理にも利用できる。財務面でいえば、オーダーを単一のキューにして財務部に転送すれば、収益の把握にも役立つ。
しかし、電子商取引の利用に話が及ぶと、受発注管理とERPの連動はものごとを複雑にする可能性がある。なぜなら、「eコマースアプリケーションには一般的に受発注管理が含まれるからだ」とローリー氏は指摘する。オンライン小売業の米Airsoft Megastoreが、受発注システムに投資してもERPには投資しなかった理由がそこにある。
Airsoftでは、その代わりにフロントエンドのeコマースアプリケーションと連動する受発注システムを利用している。いずれのシステムも、eコマース技術ベンダー、米OrderDynamicsの製品だ。
「われわれはフルフィルメントサイクルの中で受発注システムを利用している」と語るのは、Airsoft Megastoreの社長兼最高執行責任者(COO)のマイク・ザング氏。「システムは在庫と連動しており、オーダーの出荷時に在庫の割り当てと差し引きが行われるが、全て受発注管理コンソール内で実行される。そしてオーダー、出荷、梱包伝票の作成、製品の梱包、出荷に至るまでのフルフィルメントの全工程をカバーしている」
サング氏によると、同社では伝統的なERPシステムよりも、eコマースに特化したアプリケーションを常に選択してきたという。Airsoftは以前からOrderDynamicsのフロントエンドショッピングカートを利用していたため、統合化が容易な同じベンダーのバックエンド受発注システムを導入することが自然だった。
しかし同社では、小売業の効率的な業務管理、自動化、経営支援のために設計されたリテールオペレーションのプラットフォームを現在評価中だという。そうしたプラットフォームが受発注システムを補完するものになると、ザング氏は期待している。
「eコマースのダイナミックな特性と比べれば、ERPシステムは多くのシナリオで多少扱いにくい面がある」と同氏。「しかし、リテールオペレーションプラットフォームを受発注システムに追加すれば、われわれのビジネス手法に革命を起こすことも可能だ。恐らく業務全般にわたって、効率的なオペレーションが実現するだろう」
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