クラウドが発展を続ける中で、CIOはクラウドベース製品とオンプレミスシステムとの親和性に目を向ける必要がある。
企業には、自社のデータセンターでアプリケーションを実行する、コロケーションセンターを利用する、完全にホスティングされたデータセンターを運用するといった選択肢がある。ほとんどの企業にとって、何もかもクラウドに移行させるのは非現実的だ。
だが、誰がITを保有あるいは運用するかという問題以上に、CIOはクラウドアプリケーションを本格的なエンタープライズシステムの一部として機能させることの現実性を検討しなければならない。
英国の調査会社Ovumの最近の報告書「Exploring Different Approaches to SaaS Integration」(SaaS統合への各種アプローチの検討)の中でアナリストのサウラブ・シャーマ氏は、クラウドコンピューティング全般、特にSaaS(Software as a Service)の急成長が、エンタープライズアプリケーションポートフォリオの混在性を加速させていると指摘した。
同氏によると、クラウドコンピューティングが情報サイロの増大と、統合の一層の複雑化につながりかねないことは多くの組織が認識している。「複数のエンタープライズプロセスの自動化を伴うオンプレミスとSaaSやB2Bの統合など、複雑な統合要件を満たせる点が、サービス指向アーキテクチャ(SOA)普及の最大の原動力となっている。SOAがふさわしい選択肢になるオンプレミスとSaaSアプリケーションの統合には、共通するシナリオが幾つかある」と同氏は言う。
Gartnerによれば、SaaS統合はSaaSの普及曲線を追う形で進行している。言い換えれば、企業は単一のSaaSアプリケーションを運用してビジネスプロセスに組み込むだけでなく、SaaSを統合する必要がある。これは中堅企業で起きているとGartnerは見る。ただ、この1年ほどでさらに規模が大きい企業もSaaSと非SaaSシステムの統合に乗り出した。
Gartnerフェローのマッシモ・ペッツィーニ氏は、SaaSとオンプレミスシステムの統合に当たって企業は幾つもの筋書きに対応しなければならないと指摘する。まず第1に、明らかに最も直接的なものとして、顧客情報をSAPのようなシステムからSalesforce.comにアップロードする際に行わなければならない一度限りのタスクの抽出、変換、ロードの作業がある。ペッツィーニ氏は、「採用から退社までといったエンド・ツー・エンドのビジネスプロセスも統合されるようになっており、統合の条件はさらに高度化している」と話す。
IT部門が導入済みの技術は何であれ使い続けることが可能だが、クラウドサービスの統合にはオンプレミスの統合プロジェクトとは異なる問題があるとペッツィーニ氏はくぎを刺す。例えばセキュリティリスクはクラウドサービスを使った方が増大する。もう1つの要因はタイムスケールだ。ユーザーはSaaS製品を導入するに当たり、新しいソフトウェアがすぐ使える状態になることを期待する。「統合は実現しなければならず、迅速にプロビジョニングする必要がある」とペッツィーニ氏は言う。
SaaSとオンプレミスITの統合に関してIT部門が直面するもう1つの問題は、アップデートの調整だ。「Salesforce.comのソフトウェア更新は3カ月ごと、Googleでは毎日行っている。従ってユーザーが全ての変更を把握し続けるのは非常に難しい」とペッツィーニ氏は指摘した。
クラウドの導入がなぜうまくいかないのか? 「ベンダーの責任」を指摘するユーザー企業に対し、デルは「ユーザー企業の責任」と反論。両者の溝は埋まるのか?
主なサプライヤーを見てみよう。SAPは、クラウドベースのコマースネットワーク事業者Aribaの買収や、SAP HANAクラウド統合に関する戦略的な発表を通じて一定の進展を見せている。Aribaの買収はSAPの統合戦略上、理にかなうとペッツィーニ氏は言う。
SAPはプレパッケージ型インテグレーションを提供する計画だ。システムインテグレーターは、HANAクラウド統合プラットフォームを使って独自のプレパッケージ型ソリューションを構築できるようになる見通しだ。
一方、OracleのいわゆるRed Stackは、まだクラウド統合の答えにはなっていないと同氏は見る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。
半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。
システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。
SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。
生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...