2014年08月11日 08時00分 公開
特集/連載

「OpenStackはクラウドではない」――OpenStackプライベートクラウドを構築したeBayOpenStack採用で見えたメリット/デメリット

eBayは、OpenStackを利用してプライベートクラウドを自社開発し、コスト削減やセルフサービスの柔軟性、キャパシティー管理など多くのメリットを享受した。ただし、メリットを得るには条件があった。

[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 オンラインマーケットプレースを運営する米eBayのWebサイトは、最も負荷が高いサイトの1つである。eBayは、このWebサイトを自社開発したOpenStackプライベートクラウドプラットフォームで運営している。

Computer Weekly日本語版 8月6日号:RAIDはもういらない

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 3年前は、全てオンプレミスのデータセンターインフラで運営していた。

 「現在、eBayマーケットプレースのトラフィックの95%が当社のOpenStackクラウドを利用しているが、3年前は全く利用していなかった」と、ロンドンで開催された第6回Cloud World Forumのカンファレンスで、eBayのクラウドエンジニアリング部長、サンニート・ナンドワニ氏は語った。

 「当社のOpenStackベースのクラウドは、2012年に開発者によるクラウドプロジェクトとしてスタートした。現在はマルチテナント構成で多言語対応のセルフサービスクラウドへと進化し、社内ユーザーが利用するビジネスに不可欠なアプリと、開発者が使用するプラットフォームをホストしている。OpenStackクラウドはパブリッククラウドの原則を全て備えているが、社内用として使用している」と同氏は話す。

クラウドインフラの構築

 同社は、PayPal WebサイトやeBay Webサイトなど全ブランドが求めるIT要件をサポートできる、堅牢でスケーラビリティが高く、アジャイルなインフラの構築を望んでいた。目的を実現するにはクラウドインフラが必要だと考えたITチームは、独自のプライベートクラウドの開発に着手した。

 この時点ではOpenStackの利用は考えていなかった。だが、eBayチームはすぐにこれは「あまり賢明なやり方ではない」と考えるようになったとナンドワニ氏は言う。そこで、チームはプライベートクラウドの構築に、OpenStackアプリケーションプログラムインタフェース(API)を選んだ。それは、OpenStack APIが成熟したオープンソースシステムだったためだ。

 「サプライヤーに縛られるのは避けたいということだけは、非常に明確に決まっていた」(ナンドワニ氏)

 オンラインマーケットプレースの運営には、コンプライアンスと規制に関する厳密な要件がある。そのためITチームは、セキュリティが確保され、PCIに準拠するクラウドインフラを構築しなければならなかった。

 「現在、当社のクラウドインフラで7000を超えるサーバインスタンスが動作し、インターネットマーケットプレースはクラウドでミッションクリティカルなワークロードを実行するというメリットを生み出している」とナンドワニ氏は述べる。

 「例えば、開発者にとってはアプリのプロビジョニング時間が短縮された。データセンターインフラでは4週間掛かっていたのが、クラウドでは30分で完了する」と同氏は話す。「また、運用効率も上がり、ハードウェアコストを数百万ドル節約できた」

 だが、これだけではない。セルフサービスの柔軟性、ソフトウェアやアプリ開発の容易さ、自動化されたインフラなど、クラウドインフラには他にもメリットがある。2012年までは、夢物語と思っていたことばかりだ。

 「商品を掲載するまでの時間も45日から3日へと、大幅に短縮された」と同氏は付け加えている。

キャパシティー管理の強化

 ITチームの主な要件の1つに、キャパシティー管理に関係する資産や機能の透明性を確保することがあった。「それまでは資産の現状、効率良く稼働している資産、資産の管理方法などを把握していなかった。クラウドの導入により、資産の透明性が確保された」

 「eBayのWebサイトは絶対にダウンさせることができないので、高度なキャパシティー管理機能も必要だった」とナンドワニ氏は語る。だが、これまでのITではキャパシティーを事前に予測するのは難しかった。「キャパシティーは、不足を避けるために常に多めに見積もり、コストを余分に掛けていた」と同氏は話す。クラウドコンピューティングにすることでeBayはこの問題を解消し、ITチームは必要なキャパシティーを正確に予測できるようになった。

 またeBayのITチームは、クラウドのショーバックとチャージバックの機能も利用できるようになった。

 ITチャージバックとは、ITサービス、ハードウェア、ソフトウェアに掛かるコストを、それらを使用する事業部門に振り分ける会計手法だ。この機能は、コストの管理をユーザーにシフトし、ITサービスを他のユーティリティと同様に扱うことを目的としている。これは、中央の部門がITコストを一元管理する従来のIT会計モデルとは異なる手法だ。管理者は、ITチャージバックを利用するリポートシステムにより、コスト上昇の要因を明確に把握し、それに応じた予算を立てることができる。

オープンソースの課題

 こうした動きに課題がなかったわけではない。「OpenStackの問題点は、オープンソースであるがために問題を解決してくれるベンダーが存在しないことだ」とナンドワニ氏は話す。「クラウドで問題が生じたら、自分たちで対処しなければならない」

 それでも、チームはOpenStackの利用を進めた。OpenStackはオープンスタンダードであり、クラウドエンジニアリングチームがこのシステムを経験していたためだ。「当社の開発者がOpenStackを経験していたので、プラットフォームを開発し、コードをコミュニティーと共有することにした」と同氏は語る。

 同氏は、eBayの同僚が執筆したブログ「OpenStack is not cloud」(OpenStackはクラウドではない)を次のように引用した。

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