ガートナーいわく「今がITの買い時」クラウドならSIerはいらない?

今、IT市場には価格を押し下げる複数の要因が作用している。企業の購買担当者は、この機会をとらえて値引き交渉すべきだ。一方、ITサプライヤーとシステムインテグレーターにとっては受難の時代になりそうだ。

2014年08月25日 08時00分 公開
[Cliff Saran,Computer Weekly]
Computer Weekly

 米調査会社のGartnerは、企業の購買担当者がITサプライヤーに対して最近さかんに値引きを要求する風潮を「価格の圧力」と名付けている。

 GartnerのIT支出に関する最新の予測によると、サプライヤーに対して、同業者間の競争激化、従来のエンタープライズソフトウェアからコスト削減を狙ってクラウドベースに切り替えようとする購買担当者の要望からのプレッシャーが今後強まるとみられる。

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 従来のエンタープライズソフトウェアのサプライヤーは、他社製品との差別化に苦しみ、価格に見合う価値を提供していないとみられている。一方システムインテグレーターは、事業自体が先細りとなりそうだ。クラウド製品は一般的には導入が容易だからだ。

 Gartnerは先日、「Worldwide IT Spending Forecast」(世界的なIT支出の予測)と題したリポートを発表した。その中で同社は、企業間競争の激化、製品の差別化が困難になっていること、クラウドコンピューティングの普及によって価格の圧力が生じており、これがITサプライヤー間の値下げ競争をさらにあおっていると述べている。

 Gartnerの取締役兼副社長、リチャード・ゴードン氏は、製品のコモディティ化がITの価格低下の要因となっていると主張する。「2014年の第1四半期はわずかながらも成長が見られたが、この第2四半期はゼロ成長だ。価格の圧力が大きく、サプライヤーは高額の請求が難しい状況にあるからだ」と同氏は説明する。

 「われわれは、従来の製品に代わる選択肢、例えばクラウドを選ぶ購買担当者が今後増えるとみている。既存のビジネスモデルに対しては(変化を求める)プレッシャーがあり、デバイス(電子機器)市場も飽和しつつある」(ゴードン氏)

 ここで「デバイス」と呼ぶ機器には、PC、Ultra-Mobile PC(UMPC)、携帯電話、タブレット、プリンタが含まれる。Gartnerは、この市場の売り上げが2014年は685億ドル、前年比1.2%増となると予測している。これは、携帯電話とタブレットについて価格の下落が見込まれるためだと、Gartnerのアナリストは説明している。

 一方ゴードン氏は、クラウドコンピューティングの影響が大きいと指摘する。「従来のオンプレミス製品をカスタマイズする場合に比べて、クラウド製品は一般的に標準の設定のまま利用することが多い。言い換えると購買担当者にとっては、システムインテグレーションに対して追加料金を支払う必要がなくなっている」と同氏は語る。

 さらにゴードン氏は「顧客にとっては、クラウド製品の場合ライセンス体系が従量制になることも(出費を抑える意味では)有利だ」と付け加える。

 「価格の圧力のために、サプライヤーは自社製品の価値を創造する新たな方法を模索しなければならなくなっている」(ゴードン氏)

クラウドがデータセンターの統合を促進

 データセンターシステムに対する支出については、2014年は前年比0.4%増の1400億ドルになるとGartnerは予測する。成長率が低いのは、データセンターの統合が進んだためだ。費用が掛かる従来のプラットフォームから、より低コストの新たな選択肢へと移行する企業が増えていることでサーバ市場にかげりが見えてきた点に、Gartnerは注目する。

 一方、市場の中でハイパースケール分野はこれまで主にコンシューマー向けの事業で利用が進んでいた。非常に低コストなプラットフォームでありながら、確実に市場全体を活性化する要因となっている。これが、データセンターシステムの全体的な支出レベルにさらなる影響を与えている。

 「データセンターの演算ストレージは、現在統合が進んでいる。データセンターの数が減り、大規模なものが残っている」とゴードン氏は語る。同時に、クラウドプロバイダーがサービスの提供に当たって、この大規模なデータセンターを利用する例が増えている。なお大規模なデータセンターは、低コストなx86ハードウェアで構築されている。

 エンタープライズ向けソフトウェアの市場に関しては、2014年の支出は前年比6.9%増の3210億ドルになるとGartnerは予測する。インフラソフトウェアの成長率が微増するという予測は結果的に的中したが、これはアプリケーションソフトウェアの成長率が予測を下回ったことによるものだと、リポートには記されている。

 「ビッグデータとアナリティクスがソフトウェア市場のけん引役を果たしている」とゴードン氏は語る。「デジタルビジネス時代が到来した。これは、われわれの身の周りにデータが激増したために、分析と格納の手段が必要となったことを意味する。従って、今後はデータベース管理システム(DBMS)に注目が集まる」(ゴードン氏)

 アプリケーション市場の成長は鈍化すると予測される。特にOfficeスイートやデジタルコンテンツ作成(DCC)の分野では、この傾向が顕著になる。これは、PCの売り上げが低調なことと、クラウドベースの製品に移行する企業やITプロフェッショナルが急増していることの影響を受けたためであると、Gartnerはリポートで指摘している。

ITアウトソーシング契約の価格も低下

 一方ITサービス市場に対しては、2014年の支出は2013年に比べてわずかに持ち直すと、Gartnerは予測している。

続きはComputer Weekly日本語版 8月20日号にて

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