企業での導入は時期尚早か
待望の「Outlook for iOS」にセキュリティ問題か、ユーザーはがっかり
米Microsoftの新たなメールアプリ「Outlook for iOS」についてセキュリティに関する懸念の声が挙がっている。特に、MDM機能の欠如は多くのIT管理者にとって頭痛の種になり得る。
米Microsoftが先日リリースした新たなメールアプリ「Outlook for iOS」は、セキュリティ上の懸念を理由に、企業での利用を制限する動きがある。
OutlookアプリはiOS/Android版が提供されている。その最大の欠点は、モバイル端末管理(MDM)プラットフォームとの連係機能が備わっていないことだ。多くの企業にとってこれは致命的なデメリットとなる。
さらにセキュリティ問題に関しては、特にOutlook for iOSにおいて深刻な状況となっている。ドイツのコンサルティングサービス&ソフトウェア開発企業であるMidpointsで開発事業を統括するルネ・ウィンケルマイヤー氏は、同アプリについて複数のセキュリティ上の懸念点を挙げている。
同氏のブログ投稿によると、Outlook for iOSは「Dropbox」や「Google Drive」「Microsoft OneDrive」をはじめとするファイル共有サービスと接続し、個人用アカウントをアプリ内で設定すれば、こうした外部サービスを用いて添付ファイルを共有することができるという。ここでの落とし穴は、IT管理者がアプリ内の通信をコントロールできないことにある。
アプリのコンテナ化は、通信を制御する有効な手だてとなり得る。しかし、それを実現するのは、ソフトウェア開発キット(SDK)が、Outlook for iOSなどのアプリに実装されている場合に限られる、とウィンケルマイヤー氏は話す。
「全ての端末の通信をVPNやMDMを経由するようにして、Dropboxなどへのアクセスをブロックすることは可能だ。だが、そのためには多くの企業で、VPNインフラを大きく変更する必要がある。端末のトラフィック全体が影響を受けるだろう」(同氏)
Outlook for iOSはまた、ユーザーが複数の端末を使っている場合、その全てで同様のExchange ActiveSyncクライアントIDを使用する仕組みとなっている。つまり、IT部門はユーザーがiPhoneやiPadなど、どの端末からアプリを使っているのかを区別することができないのだという。
最後の懸念点は、IT部門にとって最も深刻な問題だ。Outlook for iOSを利用するユーザーの認証情報が、Microsoftのクラウドに取得・保存されている可能性があるというのだ。ウィンケルマイヤー氏は、自身のメールアカウントを詳しく調査したところ、同社が個人の認証情報とサーバ情報をクラウドに保存していることを発見した。
「Microsoftのクラウドを既に導入している企業にとっては問題ないことかもしれない。だが、何らかの理由でActiveSyncサーバをクラウド化していない企業にとっては、由々しき問題だ」(同氏)
Outlook for iOSの利用を制限するには
一方で、Microsoftはウィンケルマイヤー氏のブログ投稿に応えて、Outlook for iOSのプライバシーおよびセキュリティ機能、IT管理者向けのコントロール機能は、同社の基準を満たしており、セキュリティ標準に対応するよう引き続き取り組んでいくとしている。
消費者はTechNetのガイダンスに従って、アプリをブロックすることが可能だ。また、セキュリティ上の懸念があるのであれば、iPhone/iPad/Android向けの「Outlook Web Access」(OWA)アプリを使うことができる、とMicrosoftの広報担当者は話す。
ソフトウェアおよびその他の技術関連ビジネスに投資する米国のある投資会社は、Outlook for iOSに慎重な態度を取っている。
同社のITプログラム担当ディレクターは匿名を条件に取材に応じ、「われわれは現在、全ての投資先企業に対して、Outlook for iOSによるExchange/Office 365インスタンスへの接続をブロックするようにアドバイスしている」と話した。
同社がこうした措置を取る理由は、Microsoftが機密情報をクラウドに保存していることと、IT部門がそれをコントロールすることができないことにある。加えて、Outlook for iOSアプリはバージョン1.0の製品であることも不安材料であるのだという(Microsoftは2015年2月7日にバージョン1.0.2をリリースしている)。
「われわれは実験台になりたくない。そのため最初のバージョンには飛び付くようなことはしない。少なくとも幾つかのサービスパックが提供されるまでは待つ方針だ」
規制の厳しい業界では論外
Outlook for iOSは正式版がリリースされているにもかかわらず、「Outlook for Android」アプリはまだプレビュー版となっている。このアプリは、Microsoftが2014年12月に買収した「Acompli」から名称を変更したものだ。
Microsoftは近いうちに、Acompliのソースコードに手を加えて、自社の品質基準に見合うように改良するのではないか、と米Directions on Microsoftのリサーチ担当副社長であるウェス・ミラー氏は指摘する。
「Microsoftは『われわれはこれらの問題を理解しなければならない。いずれ対処するつもりだ』とでも言いそうだが、今は状況を軽視している様子だ」(同氏)
セキュリティ違反や暗号化キーへのアクセスを厳しく制限しているIT環境において、こうしたOutlookアプリの利用は論外だろう。特に、機密情報の取り扱いに対する規制順守が必要な企業にとっては致命的だ。
「機密情報がどこか別の場所に保存されている状況で、企業がコンプライアンスを守るのは不可能だろう」(ミラー氏)
Microsoftは今後の計画として、OutlookアプリにMDM機能を追加する予定であることを、ブログ投稿で明らかにしている。MDMはセキュリティ上のリスクをある程度まで軽減できる、とウィンケルマイヤー氏は話す。MDMの機能を使えば、アプリをブラックリストに登録したり、特定の動作をブロックしたりといったことができる。ただし、IT管理者がアプリストアなどへのアクセスをブロックしない限り、Outlookアプリ自体のダウンロードを防ぐことはできない。
Microsoftは「Office 365」にMDM機能を組み込むことを計画している。2015年第1四半期に提供が開始される見通しだ。「新たなモバイル向けOutlookアプリに合わせて新機能をリリースできれば、同社にとって非常に有利である」とミラー氏は指摘した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
7
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
8
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー