広がる「ハイパーコンバージド」の波と、ベンダーのざわめきデータ保護/セカンダリストレージまで

ハイパーコンバージドインフラはプライマリストレージに影響を与えているが、ベンダーはこのインフラのコンセプトをデータ保護にも応用しようとしている。

2015年09月17日 15時00分 公開
[Arun TanejaTechTarget]
photo 参照:ハイパーコンバージドの2大勢力「Nutanix」と「Evo:Rail」、違いを比較《クリックで拡大》

 ハイパーコンバージド(超垂直統合型)インフラストラクチャ製品の成熟化に伴い、データ保護の分野を中心に、ハイパーコンバージドベンダーの取り組みの方向性が幾つかに分かれてきている。データ保護の在り方は大きく変わりつつあるが、ハイパーコンバージェンス(超垂直統合)によってさらに新たな次元が加わることになる。

 データの重複排除や圧縮、継続的データ保護(Continuous Data Protection:CDP)、合成バックアップ、コピーデータ管理、高速スナップショット、レプリケーション用WAN最適化といった技術の台頭により、データ保護の方法は従来とは変わってきている。また、さまざまなプライマリストレージベンダーがフラットバックアップを推進する動きも出始めている。このアプローチでは、ユーザーはバックアップソフトウェアを使わずに、バックアップデータをセカンダリストレージに直接送信できる。

 米Gridstore、米Maxta、米Nimboxx、米Nutanix、米Scale Computing、米SimpliVity、米VMwareの「EVO:RAIL」パートナーの製品は、表面上はかなり似て見えるかもしれない。しかし、中身を見ると、根本的な違いが現れている。非常に基本的な違いは、サーバとストレージのコンバージェンス(統合)だけが実現されていて、他のレイヤーが放置されているかどうかだ。もしそうである場合、それはせいぜい基本的なハイパーコンバージェンスであり、SimpliVityのようなベンダーは、そうした製品はハイパーコンバージドのカテゴリーにすら入らないと主張する。特定のベンダー製品でどのようなコンバージェンスが実現されていて、自社のITインフラ全体を完成させるには、他に何が必要かを理解することが重要だ。そしてベンダーによって、実現されているコンバージェンスの違いが最も大きい分野が「データ保護」だ。

さまざまに分かれるハイパーコンバージドベンダーの戦略

 例えば、SimpliVityは、同社の製品さえあれば、(ネットワーキング以外の分野では)「完全なITインフラを構築できる」と総合性を強調している。これは、データ重複排除アレイやWAN最適化アプライアンス、DR(ディザスタリカバリ)製品、メディアサーバ、バックアップ、レプリケーション、パフォーマンス、構成、SRM(ストレージリソース管理)の各マネジャーといった専門機能に特化した製品が必要ないということだ。

 いずれはこのリストにアーカイビングやガバナンス、コンプライアンスも加わると予想される。ことによると、Hadoopベースのビッグデータ分析ツールまで加わるかもしれない。これら以外にも、需要があればどんな機能もSimpliVity製品に取り込まれることになりそうだ。SimpliVityはハイパーコンバージェンスに関して、筆者が見てきた中では業界随一の包括的なビジョンを持っている。もちろん、実際には、物事が進化するとともに、いずれは新たな技術が必要になる可能性があることは周知の通りだ。それでも、同社のビジョンは極めて明快で、ITインフラを構築する1つの簡単な方法を提供するというものだ。

 対照的なのがNutanixだ。同社は“プライマリストレージ”に限定してハイパーコンバージェンスを実現するというアプローチを堅持している。セカンダリストレージについては他社に委ねたいというわけだ。この戦略はSimpliVityとは全く異なっている。筆者は市場の成熟化に伴い、ベンダーの戦略はある程度多様化するだろうと予想していた。だが、両社の戦略の違いは歴然としており、両社は「どの企業と組むか」「どの企業と競合するか」などをはじめ、全く別の道を歩んでいきそうだ。

 プライマリストレージに特化したNutanixのアプローチから、セカンダリストレージの市場機会を見いだし、コンバージェンス全体がもたらす価値も踏まえて、米Cohesityと米Rubrikという2社の新興企業が、セカンダリストレージの世界を変えようとしている。両社のアプローチには違いがあるが、いずれもハイパーコンバージェンスの原理をセカンダリストレージに適用している。それは基本的に、バックアップやアーカイビング、DR、テスト/開発、アナリティクス、コンプライアンス、ガバナンスなどを1つの大規模なスケールアウトストレージアレイで実行するということだ。

 こうした一連のベンダーの動きは、主要アプリケーションで使われる「プライマリデータ用のスケールアウトストレージアレイ」と、主要アプリケーション以外で使われる「セカンダリデータ用のスケールアウトストレージアレイ」という2つのスケールアウトストレージアレイをそれぞれ推進する取り組みが進められているということを意味する。もちろん、この2種類のストレージは要件が大きく異なる。プライマリストレージでは、パフォーマンス(IOPS、トランザクションスループット、低レイテンシ)や弾力性、可用性が最も重視され、セカンダリストレージでは密度や不変性、技術アップグレードの容易さが最も重視される。

製品が乱立していたセカンダリストレージ市場

 現在、セカンダリストレージ市場では、多数のハイパーコンバージドベンダーから多種多様な製品が提供されており、それぞれが個別の専門分野に特化している。前出のCohesityやRubrikのような新興企業は、この状況の変革を目指している。大胆な目標だが、データ保護の分野は変革の機が熟している。

 多くの企業は現在、膨大なデータから価値を引き出すことはもとより、それらのデータの保存や保護、管理に四苦八苦している。新たな時代が到来しており、それに対応した技術の進化はまだ始まったばかりだ。ハイパーコンバージェンスがプライマリストレージの変革をもたらしているように、ハイパーコンバージェンスの原理がセカンダリストレージのあらゆる側面に適用されつつあり、スケールアウト方式の導入が進んでいる。これによって、プライマリストレージでスケールアップ型製品を使う際に対処しなければならなかった問題を、回避できることが期待されている。米Commvaultや米EMC、米IBM、米Symantecといったデータ保護分野の大手ベンダーにも大きな影響が及ぶ可能性がある。

 分野としてのデータ保護は数十年にわたって変化に乏しかったが、データ管理のコンバージェンスが、この分野に必要な活性化のきっかけになるかもしれない。エキサイティングな変化に備えよう。

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