ハイパーコンバージド製品として注目される「Nutanix」と「Evo:Rail」。それぞれどのような特徴があるのか。
前編「バズワードで終わるのか? アナリストに聞く“ハイパーコンバージド”の意義」では、垂直統合型システムからハイパーコンバージドインフラへの流れについて解説した。後編でも、引き続きIDC Japanでインフラ部門を担当する2人のアナリスト――サーバーグループマネージャー 福冨里志氏とリサーチ第1ユニット(ストレージ/サーバ/HPC/PCs)グループディレクター 森山正秋氏のインタビューをお伝えする。
現在、ハイパーコンバージドインフラを提供するベンダーとして最も注目を集めているのが米Nutanixの「Nutanix」だ。なぜNutanixは急速にこの市場で頭角を現すことに成功したのか。福冨氏は「Nutanixはアプライアンスを提供しながらもハードウェアのビジネスにフォーカスしているわけではない」ところが既存のオールドベンダーにない特徴だと指摘する。
「サイロ型のシステムを新しいアーキテクチャに乗り換えただけの製品だったらNutanixはこんなに伸びていなかったはず。ユーザー企業が求める運用負荷の軽減やコストリダクションを実現するために何ができるのかを突き詰めた結果、専用ストレージをなくし、無償のハイパーバイザーや管理ソフトの提供につなげている。こうした発想は自社でハードやシステムインテグレーション(SI)を提供している既存のベンダーにはなかったものだったといっていい」(福冨氏)
一方、Nutanixの対抗馬として2014年のリリース以来、次第に存在感を増しているのが米VMwareの「VMware EVO:RAIL」だ。仮想化基盤のトップベンダーであるVMwareが初めて提供するアプライアンスとして注目されたが、福冨氏は「EVO:RAILもNutanix同様にハードウェアに特化したビジネスではない」点がこれまでの統合型インフラとは大きく異なっているという。
特に重要なのは、VMwareの“Software-Defined Storage”(SDS)技術である「VMware Virtual SAN」(VSAN)を実装している点で、これによって専用ストレージを必要とすることなく、サーバ内蔵のディスクを共有ストレージとして利用できる。ストレージはサーバに比べ“VM単位で管理する”という感覚がまだベンダーにもユーザーにも乏しい。EVO:RAILはこうしたハードルを超えるためのVMwareならではのソリューションともいえる。
「EVO:RAILは基本的にVMwareから各パートナー企業に対してOEMとして提供される。サーバやストレージをVMwareが提供するわけではなく、(VMwareの指定する仕様に準拠していれば)OEMパートナーは自由にハードを選択し、ユニークなEVO:RAILを顧客に対して販売できる。今後はEVO:RAILにおけるデータサービスやサポートなども差別化の要因になってくるだろう」(森山氏)
NutanixとEVO:RAILの最大の違いはサポートするハイパーバイザーにある。「VMware vSphere」だけをサポートするEVO:RAILに対し、Nutanixはマルチハイパーバイザーをうたっており、その中には当然vSphereも含まれる。NutanixにとってVMwareは競合でもあるが、重要なパートナーでもあるのだ。「ユーザーがどのハイパーバイザーを使いたいかという点は、これからのハイパーコンバージドインフラ市場で重要な指標になるはず」(森山氏)
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