5分で分かる「ハイパーコンバージドシステム」の仕組みと主要製品知らないとちょっとマズい

サーバやストレージ、ネットワークなどを単一筐体にまとめた「コンバージド(垂直統合型)システム」。最近は「ハイパーコンバージドインフラ」とうたう製品も出てきた。その違いや共通点とは?

2015年04月24日 08時00分 公開
[Meredith CourtemancheTechTarget]
photo 米VCEのコンバージドインフラ製品「Vblock」《クリックで拡大》

 「コンバージド(垂直統合型)システム」と「ハイパーコンバージドインフラシステム」。データセンターの管理者は現在、この2つの選択肢がある。両者には違う点も多いが、フラッシュストレージという共通要素もある。

 「今後3〜5年の間に、データセンターではオールフラッシュがプライマリストレージになる」とIT分析会社の米Evaluator Groupでアナリストを務めるキャンバリー・ベイツ氏は話す。同社は、ハイパーコンバージドインフラのガイドを最近発行したばかりだ。

オールフラッシュ採用が正解とはいえない理由

 「コンバージドインフラやハイパーコンバージドインフラの購入時にオールフラッシュを導入すると、データセンターのストレージインフラを全面的に変更する前に、プロセスの変更を採用してオールフラッシュの機能を調査する機会が得られる」と同氏はいう。コンバージドインフラには、新しいインフラを導入する際の統合や管理における煩わしさを取り除く効果がある。

 オールフラッシュストレージでは、ソリッドステートドライブ(SSD)に対して読み取りと書き込みを行うため、標準的なHDDより処理が高速になる。だが、高性能なウェアレベリングソフトウェアがなければ、企業の品質基準を下回ることがある。パフォーマンスという観点で見ればフラッシュの価格はHDDとほぼ等価と見なされつつあるものの、潜在的に不要なパフォーマンス向上という観点で見ればHDDより高価な選択肢であることに変わりはない。

 米Oracleの「Oracle Virtual Compute Appliance」など一部のCI(継続的インテグレーション)システムでは、SSDが全面的に採用されているか、HDDとフラッシュストレージを組み合わせてシステム内でデータを階層化している。

 「ユーザーはまずオールフラッシュモデルを検討し、その後に財政やユースケースによってハイブリッドモデルを検討する」

 「高速なフラッシュを導入すると、待ち時間が長いJBOD(Just a Bunch Of Disks:シャーシ内の複数のディスクをサーバに接続した構成)では不可能だった新たな解析のビジネスケースを実現することができる。だが、アプリケーションにとって必ずしもフラッシュが適切な選択肢になるとは限らない」(ベイツ氏)

オールフラッシュ一辺倒ではない“コンバージドインフラ”市場

 米VCEは、コンバージドインフラ製品「Vblock」に続いて、2015年3月に「VxBlock」を発表した。「VxBlock System 540」ではオールフラッシュの設計が採用されている。VxBlockは、米Cisco Systemsのネットワークとサーバ、米EMCのストレージ、米VMwareの仮想化テクノロジーを利用している。また、VMwareの「VMware NSX」やCiscoの「Cisco Application Centric Infrastructure(ACI)」を選択できる柔軟さも備えている。

photo 米Oracleの「Oracle Virtual Compute Appliance」《クリックで拡大》

 Oracleは2015年2月に同社の「X5」製品群にOracle Virtual Compute Applianceを追加した。オールフラッシュストレージ、またはHDDとフラッシュを組み合わせたハイブリッドなストレージのいずれかを選べる。X5では、Oracleの2ソケットコモディティサーバの「Sun Server X4.2」を使用しており、自社のExadataアプライアンスから脱却している。また、19.2TバイトのメモリとInfiniBandネットワークにより、2〜25台の範囲で計算ノードのスケールアップ/ダウンに対応している。また、Oracleのソフトウェアによって仮想化とクラウドワークロードのプロビジョニングと管理が自動化される。

 ただし、最新のコンバージドインフラシステムが全てオールフラッシュ主義に追随しているわけではない。Ciscoは2014年12月に米IBMと提携し、コンバージド参照アーキテクチャ「VersaStack」を打ち出した。これはCiscoのサーバ「Cisco Unified Computing System(UCS)」、Ciscoのスイッチ「Cisco Nexus」「Cisco MDS 9000」とIBMのディスクアレイ「Storwize V7000」を組み合わせたソリューションだ。VersaStackは、VCEのVxBlockと同様にCisco ACIと連動する。IBMのStorwize V7000は、フラッシュとディスクの自動階層化機能を備えた仮想ストレージである。

 ベイツ氏は、特定の機能セットを購入する前に、CIの使い方、目標、パフォーマンスの評価方法を決めておくことを推奨している。「特定のアプリケーション用のスタンドアロンのシステムになるのか、それともプライベートクラウドなどの全体的な戦略の一部になるのかを考えてみてほしい」

 「コマンドソフトウェアで利用できる管理オプションの数や統合レベルによって、CIの価格は大きく異なる。そのため、オールフラッシュとハイブリッドのアプローチは、単純に安価および高価な設備投資のカテゴリに分類できるわけではない」(ベイツ氏)

オールフラッシュ化を進める“ハイパーコンバージドインフラ”ベンダー

 ベイツ氏によると、ハイパーコンバージドインフラシステムでは、管理機能はそれほど重要ではなく、低価格であること、統合とスケールアップ/ダウンのシンプルさが重視されているという。このシステムは、中小企業やリモートブランチオフィスでプライマリシステムとして使用した場合と、クラウドインフラで「Rack and Stack」(事前設定済みの機器をラックに搭載する)ユニットで使用した場合に真価を発揮することが多い。

 米Nutanixは2014年10月にスケールアウトなデータ圧縮と重複排除の機能を備えたオールフラッシュドライブ搭載のハイパーコンバージドプラットフォーム「NX-9000」をリリースした。この製品はオンライントランザクション処理などのデータベースワークロードのタスクに適している。読み取りのリクエストはサーバにアタッチされたフラッシュに送信され、データストアはプラットフォームで直線的にスケールできる。各ノードには米Intelの「Xeon E5」デュアルプロセッサが搭載されている。また、ストレージは1ノード当たり6台のSSD(800Gバイト、1.6Tバイト)に拡張できる。データは10ギガビットイーサネットネットワーク、1ギガビットイーサネットネットワーク、10/100 BASE-T RJ45イーサネットネットワーク経由で送信される。このアプライアンスの価格は、1ノードにつき11万ドルからとなっている。

 米Pure Storageは2014年12月に「FlashStack CI」を持ってコンバージドインフラ市場に参入した。FlashStack CIは、同社の「FlashArray 400」シリーズストレージとフラッシュネイティブな制御ソフトウェアを、Cisco UCSブレードサーバ、Nexusスイッチ、VMwareの仮想化テクノロジーと統合する。FlashStack CIは、統合アーキテクチャまたは参照アーキテクチャとして利用可能で、価格は公認のパートナーが再販業者、構成、サポートに基づいて設定する。

 米Dell Software(Dell)は2015年2月に「Dell XC」シリーズアプライアンスの第2世代を発表した。このアプライアンスは、IntelのXeon E5を搭載した「Dell PowerEdge」サーバを、Nutanixのソフトウェア、VMwareの「VMware ESXi」、米Microsoftの「Microsoft Hyper-V」と組み合わせる。

photo 米Dell Softwareの「Dell XC」シリーズ《クリックで拡大》

 このシステムではクラスタサーバとDAS(直接接続型ストレージ)リソースを集約管理するため、システムの利用者は、さまざまなストレージ容量を選択することができる。このアプライアンスはHDDとフラッシュのハイブリッド構成で、2015年後半にオールフラッシュの構成が提供される見込みだ。価格については、Dellの「XC630」は3万2000ドルで、これには200GバイトのSATA接続SSDが2台、1TバイトのHDDが4台、Dellによる1年間のサポートが含まれる。また、「XC730xd」は4万5000ドルで、これには200GバイトのSATA接続SSDが2台、4TバイトのHDDが4台、Dellによる1年間のサポートが含まれる。

photo EMCの「VSPEX BLUE」《クリックで拡大》

 EMCは2015年2月に同社の「VSPEX」製品群にハイパーコンバージドインフラ「VSPEX BLUE」を加え、VSANデータストアの「VMware EVO:RAIL」インテグレーションを導入している。2015年後半にEVO:RAILで利用できる見込みの最新バージョンのVSANでは、オールフラッシュストレージがサポートされる。VSPEX BLUEでは、4台のノードにIntelの「Xeon E5 v2」デュアルプロセッサが搭載されている。各ノードはクアッドチャンネルメモリを持ち、最大8枚のRDIMMを搭載できる。ストレージノードは1台の400GバイトのSSDを3台の1.2TバイトのHDDと組み合わせている。EMCは、InfiniBandまたは10Gビットイーサネットネットワークを提供している。

 VMwareのEVO:RAILソフトウェアは、他のコンバージドインフラでも実行される。例えば、米NetAppの場合はクラスタ化された「Data ONTAP」ストレージソフトウェア、NetApp FAS 2552」ディスクアレイ、コモディティサーバの組み合わせで実行される。米Hewlett Packard(HP)の場合は「HP ProLiant」サーバをベースにした「HP ConvergedSystem 200-HC EVO:RAIL」、Dellの「Virtual Infrastructure」とVMwareの「VMware Horizon View」エディションでも実行される。

 ハイパーコンバージドベンダーの米SimpliVityは、まだ同社の「OmniCube」のオールフラッシュ構成について発表しておらず、オールフラッシュストレージは「データサイクルの一部で有効なだけだ」としている。SimpliVityは、メモリ、SSD、HDD階層のデータを圧縮および重複排除するアプローチを採用している。

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