Wi-Fiのローミングには「OpenRoaming」と「Passpoint」という2大規格がある。それぞれにメリットがあり、特徴や仕組みを理解する必要がある。OpenRoamingについて解説する。
無線LAN(Wi-Fi)には2つのローミング(異なるネットワークへ接続を切り替えること)規格がある。 無線LANの業界団体「Wireless Broadband Alliance」(WBA)による「Wi-Fi」の相互接続基盤「WBA OpenRoaming」(以下、OpenRoaming)と、もう一つの無線LAN業界団体「Wi-Fi Alliance」(WFA)によるWi-Fiホットスポットの接続規格「Wi-Fi CERTIFIED Passpoint」(以下、Passpoint)だ。
どちらも、エンドユーザーが移動しても、クライアントデバイスが互換性のある無線LANに接続し続ける仕組みだ。自治体や企業、施設管理者が公衆無線LANをエンドユーザーに提供したい場合、片方を選んで導入できる。
ただし、ローミングの仕組みを導入するにはコストがかかることや、通信速度が低下するといった注意点があるため、それぞれの仕組みの特徴をよく知ることが大事だ。まずはOpenRoamingの特徴を解説する。
OpenRoamingは、相互運用可能な無線LANの相互接続基盤であり、フェデレーション(連携)サービスでもある。OpenRoamingに準拠した公衆無線LANに対して、OpenRoamingに準拠したクライアントデバイスは自動でローミングできる。
つまり、エンドユーザーは無線LANのネットワークを選び、アクセスを要求し、デバイスを認証するといった手順を踏むことなく、複数のOpenRoamingに準拠した無線LANに自動的に接続できるというわけだ。ローミング機能で接続先を変更しても、接続は中断されない。
OpenRoamingは現在、世界各国に広がっている。OpenRoamingはもともとネットワーク機器ベンダーのCisco Systemsが開発した規格で、2020年からWBAが管理するようになった。
OpenRoamingでは、デバイスを使用するエンドユーザーは、インターネットにアクセスするために、IDを発行・管理する「IDプロバイダー」を経由して一度だけIDを登録(サインイン)する。デバイスが一度認証されれば、以降の作業は自動化される。利用可能な無線LANを改めて検索したり、繰り返し登録したりする必要はない。
OpenRoamingは異なるネットワーク同士をシームレスに連携するために、ローミング用のフレームワーク「WRIX」(Wireless Roaming Intermediary Exchange)を定めている。各ネットワークはWRIXに沿って設定することで、OpenRoamingに準拠した無線LAN間でローミングのプロセスを標準化できる。
セキュリティ面では、「AAA」(Authentication, Authorization and Accounting)の仕組みを設定したクライアントデバイスが、「RadSec」(RADIUS over TLS:TLSでRADIUSデータを転送するプロトコル)で通信することで保護する。AAAは、認証、認可、アカウンティング(アクセスの履歴をログに記録すること)をチェックするセキュリティの枠組みを指す。
エンドユーザー視点ではOpenRoamingに以下のメリットがある。
一方で事業者視点では以下のような課題がある
中編はOpenRoamingにも採用されているPasspointについて解説する。
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