Software-Definedへ向かうインフラの選択【前編】
バズワードで終わるのか? アナリストに聞く“ハイパーコンバージド”の意義(1/2 ページ)
仮想環境と汎用サーバで構成され、ソフトウェアで制御する統合システムの“ハイパーコンバージド”。これは過渡期の技術か、有力な選択肢か。IDC Japanのアナリストにインタビューした。
ここ1、2年、“ハイパーコンバージドインフラストラクチャ”という、バズワードというにはやや長いIT用語を聞く機会が増えてきた。代表的な製品ベンダーとしてまず名前が挙がるのは米Nutanixだ。「データセンターの複雑性を排除するプラットフォーム基盤」として、トヨタ自動車、米eBay、米Best Buyなど巨大データセンターを擁する世界中の大企業が同社のユーザーとなっている。また、米VMwareが2014年に発表した統合型アプライアンス「VMware EVO:Rail」も「VMware vSphere」ベースのハイパーコンバージドインフラとして急激に導入が進んでいる製品だ。
ハイパーコンバージドインフラは既存の垂直統合型システム(コンバージドインフラ)と比較してどういった点が評価されているのだろうか。本稿ではIDC Japanでインフラ部門を担当する2人のアナリスト――サーバーグループマネージャー 福冨里志氏とリサーチ第1ユニット(ストレージ/サーバ/HPC/PCs)グループディレクター 森山正秋氏に、ハイパーコンバージインフラをめぐる現状とその可能性について聞いた。
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垂直統合型システムからハイパーコンバージドインフラへの流れ
まずはハイパーコンバージドインフラが登場するまでの流れを整理しておこう。福冨氏は「そもそも統合型インフラが求められるようになった背景には、サーバ、ストレージ、ネットワークというインフラを個別に調達、運用していくことに限界を感じる企業が増えてきたという事情がある」と説明する。物理ハードウェアを個別に調達し、その上で動くミドルウェアやアプリケーションも個別にチューニングする。当然、運用管理もハードに依存することになる。IT部門に求められるのは個々のインフラに特化した最適化技術であり、いや応なしにインフラのサイロ化や分断が発生していた。
だが、個別最適化が進みすぎたITでは、もはやビジネスの激しい変化についていけないのが実情だ。ビジネスで案件が発生してからリソースの調達、デプロイメントまでに1年以上もかかる、そのリードタイムの長さに耐えられないというユーザー企業が増えている。そして、そうしたユーザー側のニーズである、ビジネスの変化に柔軟に対応できる、導入も運用もシンプルなインフラを望むユーザー企業の声に応えて登場したのが「Vblock」に代表される垂直統合型システムだった。
垂直統合型システムでは、サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化基盤などがあらかじめ1台の筐体内に設定されており、ユーザー企業が発注してから調達までの時間が大幅に短縮される。物理リソースや仮想化基盤が最適化されているので、極端に言えばユーザーは、“箱から出して電源を入れるだけ”で、インフラを利用可能になる。「筐体(アプライアンス)さえ購入すれば、すぐにアプリケーションをデプロイできる環境が整った。障害が起こってもリソースごとに切り分ける必要もなく、ワンストップで対処できる。個別に対応しなくてよいのでデプロイまでの時間が劇的に速くなった効果は大きい」(福冨氏)
ここまでは垂直統合型システムが登場した数年前の話である。垂直統合型システムのユーザーが増えるに従い、少しずつ「ミドルウェアより下のレイヤーをユーザー企業が気にしなくてもよいという土壌が形成されるようになった」と福冨氏は指摘する。ただしこの時点ではまだ“個別のサブシステムが1つの筐体に統合されたアプライアンス”の域を出ていない。運用においてはサーバとストレージは別々のサブシステムのままだからだ。
ここで同時期に起こったもう1つの大きな流れに注目しておきたい。それはクラウドコンピューティングやHadoopなど分散型システムの普及に伴うスケールアウトへのニーズの高まりだ。福冨氏は「それまでHPC(High Performance Computing)など限られた環境でしか使われていなかった分散コンピューティング技術が、『Amazon Web Services』(AWS)や『Google Compute Engine』(GCE)の功績により急激に身近な存在となった」ことで、ユーザー企業はこれまでの統合型システムでは物足りなさを感じるようになったと言う。「垂直統合型システムは、スモールスタートやシステムの縮退まで含めたスケールアウトへのニーズに柔軟に応えられるほどではなかった」(福冨氏)
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