知らないとまずいことになるNASとSANの技術的な違いネットワーク対応ストレージを比較

SANアーキテクチャとNASアーキテクチャを使うならば、それぞれの違いを理解する必要がある。オブジェクトストレージとクラウドの台頭で違いへの理解が一層重要になってくる。

2017年04月04日 12時00分 公開

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左がNASで右がSAN。構成違えば適切な役割も変わってくる

 SAN(Storage Area Network)は一般的にスイッチ経由でファブリックに接続しているストレージだ。SANには多数の異なるサーバがアクセスできる。サーバのアプリケーションとOSにとって、SANのデータストレージとローカルにあって直接接続しているストレージは、どちらにアクセスするにしても大きな違いはない。SANは、DAS(Direct Attached Storage)と同じようにデータへのブロックアクセスをサポートしている。

 NAS(Network Attached Storage)はリモートでファイルを供給する方法だ。ファイルへのアクセスは、使用中のファイルシステムにインストールしているソフトウェアではなく、ファイルのI/O処理を代行するCIFS(Common Internet File System)やNFS(Network File System)などのリモートプロトコルを使用して別のデバイスにリダイレクトする。リダイレクト先のデバイスは、独自のファイルシステムを使用する何らかのサーバとして運用している。この仕組みによりファイルの共有とデータの一元管理が可能だ。

 NASとSANを比較した場合、NASはファイルI/O用のシステム、SANはブロックI/O用のシステムと捉えることができる。ただし、NASとSANの比較で覚えておくべきことが1つある。それは、NASにおける「ファイルのI/O要求」を最終的にアタッチしたストレージデバイスのブロックアクセスに変換することだ。

 ストレージのオブジェクトI/Oが普及するにつれて、ブロックストレージと併用するSANおよびファイルストレージと併用するNASの境界は曖昧になるだろう。ストレージにおけるオブジェクトI/Oの普及は、クラウドストレージにおけるストレージでもオブジェクトI/Oの使用が増加している事情の影響が大きい。

 ベンダーは各社のストレージニーズに対応するため、ブロックI/OやファイルI/OからオブジェクトI/Oに移行している。だが、ユーザーは慣れている方法でデータにアクセスすることを望んでいる。具体的には、SANであればブロックストレージ、NASであればファイルストレージだ。ベンダーはフロントエンドでNASやSANの操作性を提供し、バックエンドはオブジェクトストレージをベースとするシステムを提供するようになっている。

ファイル、ブロック、オブジェクト

 ファイルI/Oストレージでは、クライアントPCが搭載するストレージドライブと同じ方法でデータを読み書きする。フォルダ内にファイルがある階層構造を採用し、フォルダは別のフォルダの入れ子にできる。これは一般的にNASシステムで使用するアプローチで、次のような利点がある。

  • NFSやCIFSなど最も一般的なNASプロトコルを使用すると、ユーザーはローカルドライブと同じようにファイルやフォルダ全体をコピーして貼り付けられる
  • IT部門による管理の簡略化に役立つ

 ブロックI/Oストレージは、各ファイルやフォルダを小さなデータのブロックとして処理し、各ブロックのコピーをSANシステムの各種ドライブとデバイスに配布する。このアプローチには、次のような利点がある。

  • データの信頼性が高くなる。1台以上のドライブで障害が発生しても、引き続きデータにアクセスできる。
  • 高速なアクセス。ファイルはユーザーの最寄りのブロックから再構築できるので、ユーザーはフォルダ階層を操作しなくて良い。

 また、オブジェクトストレージと従来のストレージの特徴をまとめて比べると以下の通りになる。

ストレージタイプ オブジェクトストレージ ファイルベースのストレージ ブロックベースのストレージ
トランザクション単位 オブジェクト(カスタムメタデータを伴うファイル) ファイル ブロック
対応している更新の種類 インプレース更新非対応(更新により新しいバージョンのオブジェクトが作成される) インプレース更新対応 インプレース更新対応
プロトコル REST、SOAP over HTTP CIFS、NFS SCSI、ファイバーチャネル、SATA
メタデータの対応 カスタムメタデータ ファイルシステムの固定属性 システムの固定属性
最適なもの 比較的静的なファイルデータ、クラウドストレージとして 共有ファイルデータ トランザクションデータ、更新頻度の高いデータ
メリット スケーラビリティ、分散アクセス 共有ファイルのアクセスと管理のしやすさ 高パフォーマンス
デメリット 更新頻度の高いデータに向いていない、ロックメカニズムのある共有プロトコルが提供されない データセンターを超えて拡張するのが難しい データセンターを超えて拡張するのが難しい

 オブジェクトI/Oストレージは各ファイルを1つのオブジェクトとして処理し、入れ子になったフォルダの階層を持たない。前者はファイルI/Oと同じで、後者はブロックI/Oと同じだ。オブジェクトストレージでは、全てのファイルとオブジェクトは1つの巨大なデータプールまたはフラットなデータベースに格納する。ファイルは、ファイルに関連付けているメタデータまたはオブジェクトストレージOSによって追加したメタデータに基づいて検出する。

 オブジェクトストレージは3つの中で最も低速なストレージで、主にクラウドのファイルストレージとして使用している。ただし、メタデータへのアクセス方法に関する最近の進歩と高速なフラッシュドライブの普及により、オブジェクトストレージ、ファイルストレージ、ブロックストレージの間にあった転送速度の差は縮まっている。

ユーザーから見えるNASとSANの姿

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