Googleの「Android Instant Apps」は、エンドユーザーがデバイスにインストールする必要のないサイズの小さなアプリを指す。本稿では、このテクノロジーの長所と短所、そしてユースケースを取り上げる。
アイスクリームショップのマーケティングモデルはシンプルだ。客は味見して、希望するアイスクリームを購入する。Googleは「Android」の開発者に、「Android Instant Apps(以下、Instant Apps)」を使って、同じアプローチを勧めている。
Instant Appsは、ネイティブモバイルアプリの一部に当たる。ユーザーはWebブラウザでGoogle検索かGoogle Playの「今すぐ試す」ボタンからこのアプリにアクセスできる。Googleは2017年5月にこの機能をAndroid開発者に公開したが、まだ浸透し始めたばかりだ。2018年3月下旬に開催されたイベント「Droidcon Boston 2018」では、開発者がInstant Appsのユースケースや構築プロセスを話し合った。
Instant Appsを起動するにはまず、Androidデバイスのブラウザで、例えば「New York Times Crossword」を検索し、表示されたリンクをクリックする。すると、特定のクロスワード機能を実行できるコードのみを使用して、New York Timesのクロスワードアプリの一部が自動的に実行される。ユーザーがアプリを試し終えたら、システムがコードを消去する。
プログレッシブWebアプリ(PWA)と同様、Instant AppsはモバイルアプリとWebの境界を曖昧にする。つまり、アクセスしやすいというブラウザのメリットを利用して、アプリの検索率を上げている。ただし、PWAとは異なり、Instant Appsはネイティブコンテナで、ローカルアプリのように実行される。また、Instant Appsはデバイスのハードウェアにアクセスする。
Instant Appsはアクセスが容易であり、企業にとってはユーザーにアプリを購入前に試してもらえる魅力的なサービスだ。企業のIT部門であれば、Instant Appsを使用して、従業員のデバイスへのビジネスアプリの導入を促進できる。だが、アプリを少量のコードセットに分解するプロセスにはセキュリティ上の懸念があり、多くの攻撃ベクトルが生じる恐れがある。
シンガポールに拠点を置くオンライン食料品販売サービス企業RedMartは、モバイルからアクセスしやすいWebストアを運営している。同社のシニアソフトウェアマネジャーを務めるアドナン・A M氏は、自社のネイティブAndroidアプリを顧客がダウンロードするよう促したいと考えていた。同社はInstant Appsを1カ月で構築した。構築はとても簡単で、1週間でもできたかもしれないと同氏は言う。結果的に、多くの顧客が同社の完全なアプリをダウンロードするようになっている。
アプリの導入率向上は重要な目標の1つだと話すのは、ペット用品オンライン小売業者Chewyでソフトウェア開発マネジャーを務めるザッカリー・ドゥナイスキー氏だ。同氏が率いるチームは、Instant Appsをサポートするため、さらにはプログラミング言語のKotlinでアプリを作り直すなどの改善を行うために、同社のAndroidモバイルアプリを再構築している。
Instant Appsを構築するには、開発者はまず、アプリを小さなコードモジュールにコンパートメント化し、具体的な機能モジュールにリファクタリングしなければならない。
「問題は、ほとんどの開発者がAndroidアプリを1つのモジュールで構築していることだ。全ての要素をコンパートメント化できるようにするには、どのようにアプリを構築すべきか考えなくてはいけない」(ドゥナイスキー氏)
同氏のチームは例えば、コンパートメント化を可能にするために、同社が使用するFacebookの「Facebook Analytics」ライブラリとGoogleの「Googleアナリティクス」ライブラリを1つのライブラリに統合し、アプリの依存関係を減らすことに力を注いでいる。
Instant Appsには、検索率と導入率を向上する以外にも多くの長所がある。エンドユーザーにとってはアプリをインストールする必要がない。開発者にとっては新たにアプリを作成する必要がない。既存のアプリをInstant Appsに変換できる。特別なスキルは必要なく、Googleの「Android Studio」を使って構築できる。
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