新スマホ移行の段取りを効率化するには
古いiPhone、Androidを上手に手放す「ライフサイクルポリシー」が必要な理由
IT部門がスマートフォンのライフサイクルポリシーを作成する際は、利用できるリソースと、ユーザーのニーズを考慮しなければならない。そうしたポリシーが必要な理由と、その設計方法について解説する。
ほとんどの組織では、PCやサーバといった設備の入れ替えに対処するための計画を立てている。だが全ての組織が、業務用スマートフォンの入れ替え戦略を持っているとは限らない。これは組織がスマートフォンを限定的な使い方しかしていなかった時代の名残である可能性がある。だがその時代はとうに過ぎた。
スマートフォンユーザーを抱えている組織は、スマートフォンのライフサイクルポリシーを立てる必要がある。IT部門がいつ新しいデバイスを調達すべきか判断するために、解決しなければならない課題を以下に紹介する。
スマートフォンのライフサイクルポリシーで考慮すべき要因
スマートフォンは永久に使えるわけではない。性能を考えると、ほとんどのスマートフォンは約2年ごとに入れ替える必要がある。入れ替えには相応のコストが発生するが、2年の寿命を超えたデバイスの性能問題や、サポートが必要になることに起因する生産性低下の代償は、新しいデバイスのコストを大幅に上回る。年収6万ドルの従業員の生産性が5%低下すれば、組織は3000ドルのコストを負担することになり、新しいスマートフォンを調達するよりはるかに高くつく。
スマートフォンからの情報漏えいを監視している組織はほとんどない。一方で現代のデバイスは、32GBや64GB、あるいはそれ以上のストレージを搭載している。ユーザーが持ち運べるデータは膨大な量になり、組織を簡単に危険にさらす。
AndroidデバイスでもiPhoneでもライフサイクルポリシーは必要
「Android」搭載デバイスの場合、攻撃者が会社のシステムへの不正アクセスに悪用できる重大なセキュリティホールを排除するために、Googleやデバイスベンダーは比較的古いバージョンのAndroidに対してもパッチを提供している。それでも組織としては、古いAndroidを搭載するデバイスの利用は、可能な限り避けるべきだ。古いデバイスは生産性低下の問題とともに、セキュリティホールによるリスクが高まる。
市販のAndroidデバイスは、その多様性が原因でOS更新の管理が難しい。従ってこの点においてはApple「iPhone」の方が圧倒的に有利だ。それでもやはり、同じ生産性の理由からiPhoneも定期的にアップグレードする必要がある。
スマートフォンに関して、私物デバイスの業務利用(BYOD)を認めている組織は珍しくない。私物のスマートフォンであっても、ライフサイクルポリシーを立てる必要がある。上記のようなセキュリティおよび実務上の理由から、組織内LANへの接続を認めるのは、会社が許可したデバイスのみに限定しなければならない。
BYODを許可する組織は、ユーザーが業務利用できるデバイスを4~6種類リストアップする必要がある。それ以外のデバイスは組織内LANへの接続を認めてはならない。IT部門はこのリストを、最長でも6カ月ごとに更新すべきだ。IT部門はデバイスごとに会社のポリシーに対する順守状況をテストしなければならないため、このリストのメンテナンスはある程度の負担になるだろう。それでも長い目で見ると、不特定多数のデバイスが会社のリソースにアクセスしてサポートを必要とする事態に比べれば、そちらの方が望ましい。
デバイスのアップグレードだけでは十分ではない。組織はまた、セキュリティ問題とパフォーマンス問題の両方に対処し、サポートの必要性を最小限に抑えるために、ユーザーがモバイルアプリケーション(会社購入、個人購入問わず)を最新バージョンに更新していることを確認する必要がある。これにはセキュリティパッチ、VPNコンポーネント、デバイス内のマルウェア対策ソフトウェアを含めなければならない。組織はそれぞれのデバイスの各コンポーネントについてログを記録し、ポリシーを順守していないデバイスを洗い出す手段を持つ必要がある。こうした機能は「エンタープライズモビリティー管理」(EMM)製品や「統合エンドポイント管理」(UEM)製品に搭載されていることもある。
スマートフォンライフサイクルポリシーの導入
スマートフォンライフサイクルポリシーを確実に機能させるためには、たとえ従業員の私物デバイスであっても、IT部門がそうしたデバイスを効率的に管理できる仕組みを用意する必要がある。近年のEMM/UEM製品は、単純な資産管理の域を越えた相当量の機能がある。
EMM/UEM製品の機能を適切に利用することは、組織を守ることにつながる。各デバイスの状態が鮮明になって、どのデバイスに問題があるかを把握できる。組織はEMM/UEM製品のログ機能や分析機能を使って、ユーザーのスマートフォンの状態をIT部門が確認できるようにしなければならない。そうすればどのデバイスの入れ替えが必要かに関する情報も取得できる。
パフォーマンスが低下しているスマートフォンが見つかれば、IT部門はEMM/UEM製品を使って、ユーザーをスムーズに新デバイスに移行させることができる。こうした製品を使えばユーザーによるセットアップのプロセスを省くことができ、遠隔操作で新しいデバイスをプロビジョニング(利用できるようにするための準備)して、古いデバイスの登録を解除する手続きもできる。そうした機能を利用すれば、ユーザーが組織のリソースに接続できなくなる事態を起こさずに新しいデバイスを支給できる。
ユーザーが新しいデバイスを受け取ったら、IT部門はデバイス切り替え作業を実行できる。IT部門がこのプロセスのスケジュールを立て、夜間などユーザーがデバイスを必要としない時間帯に作業を進めることで、生産性の低下を最低限に抑えることが可能だ。新しいデバイスのプロビジョニングと古いデバイスの登録解除は、通信状態によって、わずか数分か、かかったとしても数時間で済ませることができる。IT管理者は、そのデバイスのためのユーザープロファイルを設定するだけで済み、そのプロセスも比較的シンプルだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
5
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
6
エンジニアの生産性はどう測る? マネジメントに不可欠な可視化の実現方法とは
-
7
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
8
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
9
「また同じ説明か」 消費者の半数が離脱するAIチャットbotの“記憶喪失”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー