手荷物の取り違えや機内食のまずさも解消
つながる飛行機とデータサイエンスが航空業界を変える
航空業界はデータ活用によって、大きな変革が起こりつつある。高速インターネット接続が可能で、自己メンテナンス機能を備えた航空機用電子システムの開発も進んでいる。
輸送業界のテクノロジーは、ここしばらく成熟期に入っている。古くから存在する他の業界と同様、AI(人工知能)や機械学習がらみのイノベーションなど、さらなるイノベーションが望まれる。そのため管理部門はレガシーシステムを手放さざるを得なくなっている。輸送業界の新しいテクノロジー導入の中でも、コネクテッドカーやコネクテッドフリートの管理が注目を集めている。今後大きな変革を迎える業界がもう1つある。それは航空業界だ。
2017年に全世界で運航されたフライト数は3680万便に上り、商業運航の乗客数は40億人を超える。フライト数と乗客数は共に上昇している。航空業界の技術革新は数十億人に影響することになる。
航空機にも、大量データを収集する高性能テクノロジーが利用されている。燃料の消費量から天候システムまで、各航空機から得られるデータの量は驚くほど多い。複数の報告書によれば、データ収集のための高性能テクノロジーを装備した機体の製造が予定されているという。2027年までに、58%の航空機がこうした新世代の機体に変わるだろう。新世代の機体を利用する航空会社には、収集されるデータを分析して、優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すデータサイエンティストのチームが必要になる。本稿ではデータサイエンスによって、航空輸送業界が今後どのように進化するかを解説する。
データ活用で手荷物の取り違えを減らす
航空業界団体SITAが公開している「Baggage Report 2017」(2017年度版手荷物レポート)によると、航空業界の手荷物管理システムでは、2017年に49億個を超える手荷物が扱われたという。そして乗客1000人当たり5.73個の手荷物が誤って処理されていると記されている。この数値は2016年比で12.3%の減少になるが、荷物の取り違えがいまだに解消されていないことが分かる。
2018年6月1日、国際航空運送協会(IATA)が決議753を施行した。IATAによると、航空会社は、「乗客から航空会社への手荷物の預かり」「航空機への積み込み」「手荷物受け渡しエリアへの配送」「乗客への引き渡し」という4つの重要なポイントで手荷物を追跡しなければならないという。IATAの決議は改善のきっかけにはなるだろう。しかし手荷物の取り違えを改善するには、航空会社のデータサイエンス活用の方が重要になる。
RFID(Radio Frequency Identification)タグを利用すれば、手荷物の動きを監視して、手荷物についての最新追跡情報を持ち主に提供できる。データを分析すれば、手荷物の取り扱いを誤る一番の原因である短い乗り継ぎ時間でも、航空会社は迅速に手荷物を処理できる。手荷物の動きを細かく追跡する最新技術を活用するには、データサイエンスの利用が欠かせない。
一人一人の乗客に応じた機内食の提供
機内食に満足していない乗客は多い。航空会社は乗客の食欲を満たすことを考える際、栄養価や品数をあまり気に掛けない。機内食のカロリーは乗客が通常摂取するよりも高く、味は大抵物足りない。航空会社は各フライトの食事の選択肢を、40%が鶏肉、40%が牛肉、20%がベジタリアン向けという具合に織り込み済みで、乗客の実際の好みには配慮していない。ビッグデータは、この状況を変えることができる。
帰りのフライトで1杯の赤ワインを楽しんでいるところを想像してみる。帰りのフライトで赤ワインが飲めるように、その情報が自分のチケットに対応付けられている。こんなことは、データサイエンスを利用しなくては実現できない。航空会社は、長時間のフライトで乗客が好む食事をより明確に予測して、ニーズにあわせた食事やサービスを提供できる。
航空会社の運用向上
データ分析によって遅延や天候パターンを予測すれば、空港の適切な運用が可能になる。例えば嵐のときに乗客に飛行ルートの変更を提案したり、悪天候が近づいているときに適切な準備を整えたりできる。コネクテッドテクノロジーによって、旅行者は空港到着前でも、運航遅延の通知の受けとりや、迅速な旅行のルート変更ができる。
スケジュール設定も改善が見込める。搭乗員の疲労や人手不足を避けるために、データを利用してフライトの客室乗務員とパイロットのスケジュールを管理できるようになる。航空路の混雑も抑えた状態に保てる。旅行中によく目にする、15~20分の離陸の遅れがなくなるところを想像してほしい。
予測分析によって、故障の恐れがある部品をオペレーターに警告して、より安全な飛行を実現できる。オペレーターは、問題が生じた後ではなく、事故が発生する前にこのような部品を交換することが可能だ。データは航空会社の円滑な運航を、旅行者には快適なエクスペリエンスをもたらす。
航空業界の新時代
高速インターネット接続が可能なハネウェルの航空機の電子システムを搭載した、ボーイング757型機「コネクテッドエアクラフト」が2017年に試験飛行を開始し、航空業界の新時代の幕開けを告げた。同システムのシニアディレクターを務めるエリカ・ブリンカー氏によると、コネクテッドエアクラフトを支えているのは、機体に自己監視機能を備えるという考え方だという。「航空機には、運航中のメンテナンスをどうするかという課題がある。開発中のコネクテッドエアクラフトは、次回フライトの前に必要な作業や修理箇所を、航空会社に通知する。そのためフライトが終了するとき、メンテナンスチームがゲートで待機できる。これにより年間250億ドルのコストにもなるフライトの遅れを緩和/排除できる。当社はこのテクノロジーを活用することで、機体の問題の診断にかかるコストが25%削減されると見積もっている」(ブリンカー氏)
ビッグデータは、航空機の運航に革命を起こす力を備えている。高性能テクノロジーを備える航空機が増えれば、さらにデータ量も増えていく。しっかりとしたデータサイエンスチームを備える航空会社は、運航の最適化によって遅延を減らし、サービスと満足度を向上させて、より多くの顧客をつかむことになるだろう。
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