「AIは即もうかる」は幻想、諦めずやり切るべし 人事大手が語る活用の極意Mercerの最高デジタル責任者に聞く

顧客の囲い込みにAI技術を生かす、組織・人事コンサルティング大手のMercer。同社の最高デジタル責任者によると、AI技術に即効性を期待するべきではないという。それはどういうことなのか。

2019年08月27日 05時00分 公開
[Linda TucciTechTarget]
画像 《クリックで拡大》

 2019年5月22日に米マサチューセッツ州ケンブリッジで経営・ITイベント「2019 MIT Sloan CIO Symposium」が開催された。ここで、組織・人事コンサルティング大手Mercerの最高デジタル責任者ゲイル・エバンス氏が、同社の多角的デジタルビジネスモデルの開発戦略について、TechTargetのインタビューに答えた。

 インタビューでエバンス氏は、Mercerが人工知能(AI)技術の活用で目指すところと、直面した課題について語った。

 Mercerは、顧客の囲い込みや購入意思といった重要なKPI(主要業績評価指標)を適切に理解するためにAI技術を応用している。デジタルワークフォース(デジタル労働力)としてのbotのアウトプットも評価している。だが、AI技術への投資は一晩で回収できるものではない。エバンス氏に課された大きな任務の一つは、最後までやり遂げるようビジネスパートナーを説得することだ。

―― Mercerは、AI技術をどのように活用していますか。

ゲイル・エバンス氏(以下、エバンス氏) MercerにとってAIは幾つかの意味がある。1つ目は意味のあるデータを特定しなければならないことだ。データがなければ、AI技術は役に立たない。そこで当社はデータ活用の仕組みを作成して、データの収益化に着手した。データから当社が得ようとしているのは、アルゴリズムに基づく経済の構築だ。

 これを実現するため、幾つかしたことがある。まず、ビジネスインテリジェンス(BI)に着手して、顧客の囲い込みと製品の予測に関するアルゴリズムを作成した。顧客に関する情報から、顧客が保有する製品の数を把握できる。そこから、次に購入する可能性の高い製品を推測する。

 非構造化データも視野に入れている。サードパーティーと連携して、構造化されていないドキュメントからデータを収集する作業に着手し、収集したデータの活用にAI技術を応用している。

 当社が捜し求めているのは、AI技術を応用してビジネス価値が得られる実用的な用途だ。

―― MercerはAI技術のビジネス価値をどのように評価していますか。

エバンス氏 当社には評価基準が幾つかある。アルゴリズム構築のために顧客の囲い込みに着目している。関係が不安定な顧客と、当該顧客から上げられる収益を予測できるようにするために、それらに関する情報を追跡している。

 AI技術にはプロセスの自動化技術も含まれる。AI技術の確実な用途として、タスクの自動化に関連するデジタルワークフォースを追跡することができる。

 当社のAI活用例は、どれも何らかのビジネスの評価基準と関連付けられる。最終的には、収益を促進して、ビジネス目的を達成したいと考えている。テクノロジーはビジネスを促進するものではなく、メインストリームビジネスの一部になるべきだ。

利益は後から付いてくる

―― AI技術のビジネス価値を確固たるものにする上で、直面した課題を教えてください。

ITmedia マーケティング新着記事

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...

news047.png

【Googleが公式見解を発表】中古ドメインを絶対に使ってはいけない理由とは?
Googleが中古ドメインの不正利用を禁止を公式に発表しました。その理由や今後の対応につ...

news115.jpg

「TikTok禁止法案」に米大統領が署名 気になるこれからにまつわる5つの疑問
米連邦上院が、安全保障上の理由からTikTokの米国事業の売却を要求する法案を可決し、バ...