顧客の囲い込みにAI技術を生かす、組織・人事コンサルティング大手のMercer。同社の最高デジタル責任者によると、AI技術に即効性を期待するべきではないという。それはどういうことなのか。
2019年5月22日に米マサチューセッツ州ケンブリッジで経営・ITイベント「2019 MIT Sloan CIO Symposium」が開催された。ここで、組織・人事コンサルティング大手Mercerの最高デジタル責任者ゲイル・エバンス氏が、同社の多角的デジタルビジネスモデルの開発戦略について、TechTargetのインタビューに答えた。
インタビューでエバンス氏は、Mercerが人工知能(AI)技術の活用で目指すところと、直面した課題について語った。
Mercerは、顧客の囲い込みや購入意思といった重要なKPI(主要業績評価指標)を適切に理解するためにAI技術を応用している。デジタルワークフォース(デジタル労働力)としてのbotのアウトプットも評価している。だが、AI技術への投資は一晩で回収できるものではない。エバンス氏に課された大きな任務の一つは、最後までやり遂げるようビジネスパートナーを説得することだ。
―― Mercerは、AI技術をどのように活用していますか。
ゲイル・エバンス氏(以下、エバンス氏) MercerにとってAIは幾つかの意味がある。1つ目は意味のあるデータを特定しなければならないことだ。データがなければ、AI技術は役に立たない。そこで当社はデータ活用の仕組みを作成して、データの収益化に着手した。データから当社が得ようとしているのは、アルゴリズムに基づく経済の構築だ。
これを実現するため、幾つかしたことがある。まず、ビジネスインテリジェンス(BI)に着手して、顧客の囲い込みと製品の予測に関するアルゴリズムを作成した。顧客に関する情報から、顧客が保有する製品の数を把握できる。そこから、次に購入する可能性の高い製品を推測する。
非構造化データも視野に入れている。サードパーティーと連携して、構造化されていないドキュメントからデータを収集する作業に着手し、収集したデータの活用にAI技術を応用している。
当社が捜し求めているのは、AI技術を応用してビジネス価値が得られる実用的な用途だ。
―― MercerはAI技術のビジネス価値をどのように評価していますか。
エバンス氏 当社には評価基準が幾つかある。アルゴリズム構築のために顧客の囲い込みに着目している。関係が不安定な顧客と、当該顧客から上げられる収益を予測できるようにするために、それらに関する情報を追跡している。
AI技術にはプロセスの自動化技術も含まれる。AI技術の確実な用途として、タスクの自動化に関連するデジタルワークフォースを追跡することができる。
当社のAI活用例は、どれも何らかのビジネスの評価基準と関連付けられる。最終的には、収益を促進して、ビジネス目的を達成したいと考えている。テクノロジーはビジネスを促進するものではなく、メインストリームビジネスの一部になるべきだ。
―― AI技術のビジネス価値を確固たるものにする上で、直面した課題を教えてください。
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