営利目的の企業と同様、ミュージアム(博物館や美術館)もユーザー体験を向上させ、入館者数を増やして利益を上げる方法を見極めるために、データを集め、分析をしている。
博物館や美術館(以下、「ミュージアム」)とデータの関連性は、世界の歴史と素晴らしい美術品を展示するホールに足を踏み入れた時点で、最初に思い浮かぶことではない。だが入館者がシカゴ美術館(Art Institute of Chicago)で、20世紀を代表する米国の画家エドワード・ホッパー氏の作品「ナイトホークス」を見たり、米ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)で大きな恐竜の復元骨格を見たり、サンフランシスコのゴールデンゲートパークにあるカリフォルニア科学アカデミー(California Academy of Sciences)で熱帯雨林の中を歩いているとき、その裏ではデータ分析が適用されている。
営利目的の企業と同様、ミュージアムもユーザー体験を向上させ、入館者数を増やして利益を上げる方法を見極めるために、データを集め、分析をしている。ただし大半の企業とは異なり、多くのミュージアムは非営利団体で、一般市民の信頼の上に成り立っている。ミュージアムは、潜在的な入館者に最適なサービスを提供する方法を理解する目的にも分析を使用している。
「適切なデータがあれば、ミュージアムを素晴らしい場所にすることができる」。こう語るのは、ミュージアム向けにビジネスインテリジェンス(BI)ツールを提供するスタートアップソフトウェアベンダー、TravelSee Analyticsの設立者兼CEOを務めるクワシ・ホープ・アジェマン氏だ。
データを使用すると金銭面で利益を得られるだけでなく、公共サービスの面にもメリットがある。にもかかわらず、ミュージアムとデータの関係はまだ完全には開花していないのが実情だ。分析の革命が多くの業界で起きている。だが、古いやり方から脱却できずにいるミュージアムは少なくない。
「企業と比較すると、ミュージアムはデータに関して黎明(れいめい)期にある」。こう語るのは、米シアトルでミュージアム向けのコンサルティングを手掛けるWilkening Consultingを設立したスージー・ウィルケニング氏だ。ウィルケニング氏は、米ニューヨーク州ボールストンスパにあるブルックサイド博物館(Brookside Museum)で、サラトガ郡の歴史学会(Saratoga County Historical Society)のエクゼクティブディレクターを務めた経験がある。
現代のテクノロジー時代に適応してデータを活用するミュージアムは、情報に基づいて意思決定できるようになっている。中には展示物にまでデータを取り入れているところもある。
どの業界についても言えることだが、分析を活用しなければ競争に勝てないというリスクを抱えることになる。
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