米政府では医療APIによる、システム間での医療情報の連携を進めているが、普及率は低い。医療API利用の問題点と、普及率が低い理由について、専門家の意見と医療機関を対象にした調査の結果から説明する。
米国保健福祉省のIT政策部門である医療IT全米調整官室(ONC:Office of the National Coordinator)は、「医療API」による医療情報の相互運用性促進の取り組みを進めている。医療APIとは、医療機関で利用する医療システムや患者の利用する医療アプリケーション同士の連携を可能にするインタフェースを指す。医療機関はこの取り組みに対し、医療APIが患者データの安全性を確保するために取る方法を知りたいと考えている。
2019年前半、ONCは米国の医療保険制度を運用するメディケア・メディケイドセンター(CMS:Center for Medicare and Medicaid)と共同で、医療情報の相互運用性に関する新しい規則を提案した。この規則は、医療機関に医療APIを使用した医療情報の使用を義務付ける。これによりONCは医療システムや医療アプリケーションの市場を拡大し、市場に競争を生み出すことを考えている。
ONCが米ワシントンD.C.で2019年8月中旬に開催した相互運用性に関するフォーラム「ONC’s 3rd Interoperability Forum」で、ONCの室長級を務めるドン・ラッカー氏は「ONCは、米国民がスマートフォンでの相互運用性のメリットを得られるようにすべく真摯(しんし)に取り組んでいる」と話す。
ラッカー氏とONCは、患者が医療アプリケーションを使用してデータにアクセスできるようにすることや、データの安全性を確保することに注力している。しかし今回のフォーラムでは医療の専門家が、医療APIの使用に影響する恐れがある問題を幾つか指摘した。
ONCが提案した医療情報の相互運用性に関する規則には、医療コミュニティーから2000件以上のコメントが寄せられた。ONCが特に注目しているのは、医療アプリケーションで保存する医療情報の二次利用規則についての懸念だ。
この規則に対するコメントの募集期間が終了する前から、患者データの安全性を懸念する意見が寄せられていた。米国連邦議会の健康教育労働年金委員会が2019年5月に開催した意見聴取会では、医療アプリケーションのエコシステムにおける患者データの安全性を疑問視する声が、数名の上院議員から上がった。
医療関係者は、医療アプリケーションのユーザーが、使用許諾契約書に記載されているデータの二次利用の可否についての記述を見逃したり、内容を確認しないで同意したりする恐れがあることに懸念を示している。医療アプリケーションを使用したり、データを二次利用したりするには、使用許諾契約書に同意することが必要だ。しかし使用許諾契約書の多くは、難解かつ長文であることに加えて、小さな文字で記されている。そのため使用許諾契約書を十分に確認せずに同意してしまうユーザーは少なくない。ラッカー氏は、ONCが患者の同意を得る分かりやすい方法を探していると言う。
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