450万人が利用するMedisafeアプリの事例から
AppleのHealth Records APIで多剤併用問題に切り込む投薬管理アプリベンダーの挑戦
Fast Healthcare Interoperability Resources(FHIR:医療情報の相互運用性のオープンな標準仕様)に基づくAPIが新たに登場している。これによって、モバイルヘルスアプリはさらに進化する可能性がある。
モバイルデバイスを使った医療活動支援アプリケーション(以下、モバイルヘルスアプリ)を作成する企業は、Appleの「Health Records API」などの医療関連API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用して、薬局や製薬会社のシステム同士、最終的には電子カルテ(EHR)を含めた連携に向けた次の重要なステップを踏み出せるところまできている。
一つの例がMedisafe Projectだ。同社は、個人向けのモバイル投薬管理アプリケーションを開発し、450万人の登録ユーザーを擁している。MedisafeのCEO兼共同設立者のオムリ・ショール氏は次のように話す。「ようやく当社の製品をより大きなサービスにつなげられるようになる。医療業界は、医療エコシステムのさまざまな分野を結び付けるきっかけとなる接続媒体を切望してきた。AppleのHealth Records APIのおかげで、相互運用の時代が到来しつつある。こうした相互運用の流れは、医療を提供する側から患者側へと広がっていくだろう」
機会を増やす
設立当初からMedisafeは、投薬のタイミングと投薬量を管理したり、処方薬同士の相互作用を確認したり、さらには本人が服薬を忘れた場合に友人や家族へ警告を送ったりするツールを提供してきた。ショール氏が求めているのは、こうしたツールと、医療プロバイダー、製薬会社、薬局のシステムの連携だ。こうした連携が可能になれば、患者が手作業で情報を入力する必要のない、真にインタラクティブなサポートシステムを実現できる。ショール氏は「その機能は既に当社が持っている。当然、近いうちに実現するだろう」と話す。
Medisafe製品のユーザーであるルーシ-・トレーシュマン氏は、1日に2回、たくさんの薬を服用している。同氏もショール氏の意見に賛成する。トレーシュマン氏はリウマチ科、整形外科、腎臓科など、8つの異なる専門医の診察を受けているが「どの診療科の医師も、それぞれの処方の相互作用を調整してくれない」と話す。2016年に病気になったとき、これほど多量の薬の処方を受けたことがなかったので、薬の服用状況をトレースし、警告を促してくれる何らかのサポートが必要だった。「それについて精通している人が誰もいない、奇妙な大量の薬を服用している」と同氏は語る。患者ポータルは自分で編集できないし、処方薬同士の相互作用について警告してくれないから、役に立たなかった。こうした情報を自分のスマートフォンに用意し、最終的には薬局や担当医につないでくれる機能があれば「極めて有益だ」と同氏は言う。
AppleのHealth Records APIは、Fast Healthcare Interoperability Resources(FHIR:医療情報の相互運用性のオープンな標準仕様)に準拠している。ショール氏は次のように語る。「このAPIはこれまでのプロセスに存在した問題点を取り除いてくれるだろう。患者はMedisafe製品から簡単かつ正確に、自身の投薬記録をダウンロードできるようになる」
見込みはある、だが道のりは険しい
調査会社Forrester Researchでアプリケーションの開発と提供を担当する、上級アナリストのアリエール・トゥルツシンスキ氏は「FHIRの採用は増えている」と説明した上で、その効果を次のように話す。「用語を統一し、送信されるデータに一貫性を持たせることが可能だ。スケーラブルな手法でデータを取り込むこともできる」
AppleのHealth Records APIには見込みがある。だが、Medisafeのような企業が向かう道のりは平たんでも簡単でもないように思える。その原因は、ひとえに医療業界の性質にある。「医療業界ではあらゆることに時間がかかる」とショール氏は話す。同氏は、大きな病院や医療事業グループと面談したが、そのほとんどが目下、適切な連携テクノロジーを有しておらず、財務面での魅力も足りないという。
「APIの利用には何らかのインセンティブが必要だ。APIをオープンにしている薬局もあったが、そのAPIを活用したビジネス実績がなかった」とショール氏は言う。現時点での最も有望なAPIユーザーは製薬会社と薬剤を購入する患者だという。どちらも薬を正しく投与することで利益を得るからだ。AppleのHealth Records APIが登場した今でも、ショール氏が見つめる先行きは遠い。「システムが運用される仕組みを理解することに、大きな価値がある」
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