複数のKubernetesディストリビューターが競争し、コミュニティーが発展し、Kubernetes用の多数のツールが生まれている。ジョー・ベダ氏が考えるエコシステムの理想型とは。
前編「VMwareは『Tanzu』でユーザーをロックインしようとしているのか?」では、TanzuでKubernetesに独自機能を付加するVMwareの思惑をジョー・ベダ氏に聞いた。続けてエコシステムの発展とゴールについて同氏に尋ねた。
――オープンソースコミュニティーとディストリビューターが開発している機能はたくさんあります。Kubernetesにとって優先度が高いのは何ですか。
ベダ氏:VMwareの目標はKubernetesを意識する必要のないものにすることだ。コミュニティーの立場に立ってもその目標は変わらない。優れたインフラは目には見えないものだ。
コミュニティーが取り組んでいる分野は拡張性に関係するものが多い。プロジェクトの初期、コミュニティーはKubernetesのコアに組み込む機能を増やそうとしていた。その後、コアプロジェクトに関与しなくてもKubernetesを拡張できるようにすることに重点を移し始めた。
それは大成功を収め、エコシステムを生み出している。このエコシステムが優れている点は、物事を遮る門番がいないことだ。オープンソースプロジェクトには、「それをしてはいけない」と発言するグループがある場合が多いがKubernetesにはそれがない。私には優れたアイデアとは思えないことをしている人々もいるが、彼らはそれを進めることが許される。
VMwareが力を注いでいる領域の一つが、クラスタのライフサイクル、特にクラスタAPIに関する部分だ。Tanzuはクラスタをベースとしているため、業界全体にとってメリットがあるとVMwareは考えている。
もっと大胆かつ率直に言うと、Kubernetesを運用する人々が増えるほど、VMwareにとってはチャンスが増える。できる限り多くの人々がクラスタを利用し、そこでの用途を見いだせば、それがVMwareの利益になる。難しいことだが、Kubernetesがもっと簡単になるようにしたいと考え、そこに多くの労力を費やしている。
――市場に複数のKubernetesディストリビューションが存在していることを一種のプラットフォーム戦争だと思いますか。Internet Explorerに携わった経験があると伺いましたが、この競争は1990年代のブラウザ戦争に似ていますか。
ベダ氏:Kubernetesに多くの競争があり、多くの人々がこれを改善しようと取り組むことはユーザーにとって良いことだ。
完璧な移植性ではないとしても、それでもある程度の移植性がある。それは顧客にとって価値があり、顧客が求めていることだ。その移植性がアプリケーションとその依存関係に密接なほど、そうしたシステムがオープンになることを望む可能性が高くなる。そして、コミュニティー主導になるのが理想だ。
Kubernetes以外にも、ベンダーが補助的なオープンソースプロジェクトを主導する機会が増えている。さまざまな環境の多くにKubernetesの影響が広がるのを目にするのは興味深い。その一例が「Envoy」というCNCF(Cloud Native Computing Foundation)のプロジェクトだ。Envoyは多くの価値をもたらすロードバランサーだ。もう一つのCNCFプロジェクト「Contour」も大きな推進力になっている。ContourはEnvoyの内部で使われるイングレスコントローラーだ。このように独立したエコシステムが立ち上がり、成熟していくのは素晴らしいことだ。
――Tanzuの興味深い点は何ですか。
ベダ氏:魅力的なのはユースケースの多様性だ。VMwareは、顧客が時間の経過とともに運用、管理するクラスタの増加に注目している。これは特に、管理の必要なインフラが急拡大しているグローバルな大企業で起きている。こうした部分にTanzuのハイレベルなサービスが取り入れられ始めている。こうした顧客との会話の多くは、個々のクラスタで何が起きるかについてではなく、1万を超えるクラスタを管理、監視、保護する方法についてだ。私は、そこから物事が興味深くエキサイティングになり始めると考える。
――さまざまなアプリケーションのために複数のプラットフォームとKubernetesディストリビューションを運用している企業もありました。そうした企業には複雑さと相互運用性の問題が必ずありました。そうした企業にはどのようなアドバイスをしますか。
ベダ氏:クラスタやシステムのサプライヤーやフレームワークが異なっていても、オープンインタフェースとオープンプロトコルで複数のクラスタやシステムの相互運用性は実現できる。
Heptioを立ち上げる前に着手していたオープンソースプロジェクトの一つに「SPIFFE」(Secure Production Identity Framework For Everyone)がある。これはIDを証明書にエンコードし、それをワークロードで利用可能にするID標準だ。VMwareでSPIFFEに取り組んでいるチームがあることに興奮している。それはオープン仕様であり、オープンなレファレンス実装だ。これらは、異なるソリューション間の相互運用性を生み出すのに役立つ。
次が管理製品の「Tanzu Mission Control」だ。これはKubernetesに準拠する全てのKubernetesクラスタで機能する。クラスタで「Tanzu Kubernetes Grid」を運用していなくても、IT担当者が自社の資産全体を俯瞰(ふかん)するときに一定レベルのポリシー監視と単一のタッチポイントを提供可能にしたいとVMwareは考えている。
複雑な企業にとって、一貫したインフラを持つことは夢のようなことだと思う。常に何らかの枝分かれが発生する。買収・併合を経て、技術がハイブリッドに混在していくことになる。これはある時点で起きることではなく、人々が日常向き合っている現実だ。VMwareがTanzuでやろうとしていることの大部分は、この現実と戦うのではなくこの現実に向き合い、VMwareのスタックの至るところで誰もが標準化を推し進めることだ。
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