クラウドやHCIの導入状況は? 「脱クラウド」「オンプレミス回帰」は4割以上にサーバ&ストレージに関する読者調査レポート

サーバ&ストレージ製品の導入状況や投資計画に関する読者調査を実施した。クラウドサービスやHCIの導入が広がりつつあること、「脱クラウド」「オンプレミス回帰」に前向きな組織が4割を超えることなどが分かった。

2021年03月22日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

 TechTargetジャパンは2020年12月から2021年1月にかけて、TechTargetジャパン会員を対象に「サーバ&ストレージに関するアンケート調査」を実施した。サーバ&ストレージ分野において広範な製品分野の導入が進んでいる一方で、インフラを複数のユーザー企業が共用する「パブリッククラウド」の利用も広がっている状況が明らかになった。

 IaaS(Infrastructure as a Service)を利用する組織においては、4割以上がオンプレミスのインフラにシステムを移行した実績がある、または移行を検討している状況だと回答しており、単にクラウドサービスへの移行が広がっているだけではない現状が伺える。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が投資計画に及ぼした影響については、投資を増やした組織と減らした組織、計画を維持した組織に分かれる結果となった。

調査概要

目的:TechTargetジャパン会員でIT製品・サービスの導入に関与する方を対象に、サーバ&ストレージ製品の導入状況や投資計画を調査

方法:Webによるアンケート

調査対象:TechTargetジャパン会員

調査期間:2020年12月2日〜2021年1月13日

総回答数:133件

※各回答の割合(百分率)は小数点第2位を四捨五入して表示しているため、割合の合計が100%にならない場合があります。


ITインフラの利用状況

 サーバ製品の導入状況は「IAサーバ/PCサーバ」が58.7%で最も多く、「UNIX/Linuxサーバ」が33.8%、「メインフレーム/オフコン」が13.5%という結果になった(図1)。ストレージ関連の導入状況では、SSD(ソリッドステートドライブ)を含むフラッシュストレージが28.6%、HDDなどのディスクストレージが51.9%だった。ディスクストレージの導入が依然として多いものの、フラッシュストレージも企業向けストレージの選択肢としてディスクストレージに迫りつつある状況が分かる。

画像 図1 ITインフラの現状の利用状況《クリックで拡大》

 「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)を導入済みの組織は12.0%だった。2020年〜2021年の投資計画では12.6%の組織がHCIを投資対象として挙げており、オンプレミスのインフラとしてHCIの利用が徐々に広がる可能性がある。

 パブリッククラウドの利用率は28.6%で、既に4分の1以上の組織が利用している結果となった。ユーザー企業ごとにインフラを専用する「プライベートクラウド」では、ユーザー企業が自社で構築するオンプレミス型が19.6%、サービスとして利用するホスティング型が7.5%だった。

ハードウェアの老朽化や人員不足に課題

 サーバ&ストレージ分野における優先度の高い課題については、「ハードウェアの老朽化」が41.4%、「人員/スキルの不足」が38.4%で、突出して高い結果となった(図2)。本調査の自由回答でも「現管理者が定年を迎え、スキル低下に伴う障害が懸念される」といった声が寄せられている。この他に「運用管理コストの高さ」(27.1%)や「ハードウェアリソースの拡張性の不足」(26.3%)が比較的多く選択される結果となった。

画像 図2 サーバ&ストレージ分野における優先度の高い課題《クリックで拡大》

 2020年〜2021年の投資計画の対象としては、IAサーバ/PCサーバが42.3%で最も多かった(図3)。パブリッククラウドが26.1%と2番目に多く選択された点が注目に値する。ハードウェアの老朽化や人員不足、拡張性の不足など、上記の課題を補う目的でパブリッククラウドを選択する状況が推察できる。リソース分離型のインフラとして、比較的登場してから間もない「コンポーザブルインフラ」に関しては、現状の導入状況と2020〜2021年の投資対象を含めて選択した組織はなかった。

画像 図3 2020年〜2021年の投資対象《クリックで拡大》

半数以上が「コロナ禍でも投資計画は現状維持」

 新型コロナウイルス感染症がサーバおよびストレージ分野の投資計画に与えた影響についても聞いた(図4)。感染拡大を受けて投資予算を増額したという回答は8.3%だった一方で、投資予算を減額(ゼロではない)または投資予算をゼロにしたという回答は合計で22%を超え、増額よりも減額により広く影響する結果となった。投資予算を維持したという回答は合計で69.2%と、多くの組織のサーバおよびストレージ分野の投資計画には影響が見られなかった。

画像 図4 2020年〜2021年の投資計画に対する新型コロナウイルス感染症の影響《クリックで拡大》

オンプレミス回帰の傾向

 クラウドサービスの利用が広がる中で、クラウドサービスからオンプレミスのインフラにシステムやデータを移行する「オンプレミス回帰」(「脱クラウド」)の動きも生じている。本調査ではIaaSからオンプレミスのインフラにシステムやデータを移行する動向について聞いた(図5)。IaaSを利用している62組織のうち、IaaSからオンプレミスのインフラにシステム/データを移行した経験があるのは24.2%、移行の経験はないが検討しているのは16.1%と、合計で40%を超えた。

画像 図5 オンプレミス回帰の実績と予定《クリックで拡大》

 オンプレミス回帰の理由は「ハードウェアスペックの不足」「構築コストの高さ」「運用管理コストの高さ」が上位を占めた。ハードウェア選択の自由度の低さに起因する理由に加え、コスト面での問題がオンプレミス回帰に大きく影響を与えている可能性がある。この他の理由としては「人員/スキルの不足」「サービスの不安定さ」「セキュリティ対策の不徹底」が続く結果となった。


 サーバやストレージ、各種ソフトウェアといったオンプレミスのインフラ製品に対する投資意欲は、コロナ禍でも大きく衰えてはいない。パブリッククラウドやホスティング型のプライベートクラウドなどのクラウドサービスの利用も一定程度あり、利用する製品やサービスが広範に及んでいる。クラウドサービスからオンプレミスのインフラに回帰する動きも見られ、適材適所でインフラ製品を使い分け、個々の課題に対処する状況も伺える結果となった。

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