「OptiNAND」とは、Western Digitalが発表したフラッシュメモリを搭載する新たなHDDの設計だ。これがHDDにどのようなメリットとデメリットをもたらすのか。他のHDDやDRAMとの違いも交えて紹介する。
Western DigitalはHDDにフラッシュメモリを組み込んだ「OptiNAND」という技術を発表した。「同社がHDDとフラッシュストレージの両分野で取り組んできたマイルストーンだ」。調査会社IDCでリサーチ担当バイスプレジデントを務めるエリック・バーゲナー氏はそう言う。
OptiNANDの特徴として特筆すべき点の一つは、「書き込みキャッシュ」の有効モードと無効モードの間の違いをなくすことだ。この特性を含めてOptiNANDを採用するHDDにはどのようなメリットとデメリットがあるのか。他のHDDやDRAM(Dynamic Random Access Memory)と比較して紹介する。
OptiNANDの設計にすると、書き込みキャッシュを有効にした場合と無効にした場合の書き込み速度にほとんど違いがなくなる。OptiNANDを使うと、ストレージ管理者は書き込みの処理時間とデータ損失の潜在的なリスクの間でバランスを取らなくてもよくなると、バーゲナー氏は話す。
書き込みキャッシュとは、ストレージへの記録前に揮発性(電源を失うとデータも失うこと)メモリが一時的にデータ保管する仕組みだ。書き込みの処理速度は向上するが、電源を失った場合はデータが消える可能性がある。
メタデータの格納にDRAMではなく組み込みフラッシュメモリを使用する場合の潜在的なデメリットは寿命だ。DRAMは揮発性だが、半永久的に使える。これに対してフラッシュメモリは書き込むときに劣化する。ただしWestern Digitalはこの劣化に配慮している。OptiNANDのフラッシュメモリは、基本的に最も耐久性のある「シングルレベルセル」(SLC)方式だ。SLCは1つのメモリセルに1bitのデータを格納する。
Western DigitalはOptiNANDを採用した容量20TBのHDD製品も発表した。OptiNANDによるメリットの一つは大容量化だが、バーゲナー氏は「特に競合製品と差別化できるものではない」と指摘する。Seagate Technologyも東芝デバイス&ストレージも、HDDの大容量化に力を注いでいるからだ。東芝デバイス&ストレージも、容量20TBのHDDを自社製品のロードマップに組み入れている。
HDDベンダー各社が記録密度を高めるために採用する技術には違いがあるものの、それはユーザー企業にとってはあまり問題ではない。ユーザー企業はデータ操作時の待ち時間や信頼性、コストによって製品を評価する。
「OptiNANDと競合他社の技術は、馬車と自動車ほどの大きな違いはない」とバーゲナー氏は話す。
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