「Windows Installer」に“凶悪”な脆弱性 専門家が危惧する理由は?管理者権限を不正に取得可能

「Windows Installer」の脆弱性「CVE-2021-41379」に亜種が見つかった。専門家によると、CVE-2021-41379のパッチとしてMicrosoftが配布した更新プログラムでも、この亜種を修正できない。その危険性とは。

2021年12月31日 05時00分 公開
[Alexander CulafiTechTarget]

 「Windows」用のソフトウェアインストーラー「Windows Installer」の脆弱(ぜいじゃく)性を悪用した攻撃が観測された。この脆弱性は、より上位のアクセス権限を不正に取得する「権限昇格」を可能にする。

 2021年11月21日(現地時間)、セキュリティ研究者アブデルハミド・ナセリ氏は、この脆弱性の概念実証(PoC:Proof of Concept)コードを公開した。攻撃者がこの脆弱性を悪用すれば、管理者権限を取得できる可能性がある。

 今回見つかった脆弱性は、ナセリ氏自身が発見したWindows Installerの脆弱性「CVE-2021-41379」の亜種だ。Microsoftが配布した2021年11月の月例更新プログラムは、CVE-2021-41379の修正を含んでいた。だが同氏はこの更新プログラムを適用してもCVE-2021-41379を完全に修正できないことを発見し、その分析中に新たな亜種を発見した。

「Windows Installer」に見つかった脆弱性が“厄介”な理由

 ナセリ氏がPoCコードを公開して以来、Cisco Systemsのセキュリティ研究機関Cisco TalosとセキュリティベンダーMcAfeeの少なくとも2組織が、今回見つかったCVE-2021-41379の亜種の悪用を報告した。

 Cisco Talosのセキュリティインテリジェンス・調査グループのテクニカルリーダーであるジェイソン・シュルツ氏は、2021年11月23日(現地時間)に同機関のブログのエントリ(投稿)を公開した。その中でシュルツ氏は、同機関がCVE-2021-41379の亜種を悪用するマルウェアを検出したと伝えた。

 McAfeeでチーフサイエンティストを務めるラジ・サマニ氏は2021年11月29日(現地時間)、同社が23カ国と複数業種でCVE-2021-41379の亜種の悪用を検出したと、ミニブログ「Twitter」に投稿した。悪用が見つかった国は米国、カナダ、中国、インド、ブラジルなどで、特に攻撃が目立ったのはサウジアラビア、ウクライナ、ベルギーの3カ国だった。

 米TechTargetの取材に対してナセリ氏は、自身が作成したPoCコードと他の脆弱性を組み合わせてリモート乗っ取り攻撃を仕掛けることは不可能だと説明した。同氏によると、CVE-2021-41379の亜種はリモート攻撃には悪用できず、ローカルでの攻撃のみに限られる。ただし「たとえローカルでしか悪用できないとしても、攻撃者がこの脆弱性を悪用してできることはたくさんある」点を同氏は強調する。

 「問題は、今回のような『管理者権限の不正取得が可能な脆弱性』に『真の価値』があることだ」。ナセリ氏はこう語る。

 攻撃者が、強い権限のないエンドユーザーとして、標的デバイスでマルウェアを実行することは難しくない。一方で管理者権限の取得は困難だ。そうした状況で、管理者権限を取得できるCVE-2021-41379の亜種には「価値がある」のだとナセリ氏は言う。「攻撃者が管理者権限を不正に取得して標的企業のマシンを制御下に置くことができれば、標的企業の全マシンを乗っ取る状況にもなり得る」と同氏は説明する。

 2021年12月、今回見つかったCVE-2021-41379の亜種に、個別の脆弱性識別子(CVE:Common Vulnerabilities and Exposures)である「CVE-2021-43883」が割り振られた。Microsoftは、同月の月例更新プログラムにCVE-2021-43883の修正を含めている。

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