検査待ち時間7割減 「デジタル患者パス」導入の医療機関が語る“驚きの効果”クリニカルパスのデジタル化がもたらす価値【後編】

オーストラリアの医療グループCALHNが導入した「デジタル患者パス管理システム」は、時間がかかりがちな検査プロセスを大きく短縮し、医療スタッフの業務負荷低減に貢献している。具体的な成果は。

2022年01月05日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 前編「『デジタル患者パス管理システム』で医療接遇はどう変わる? 導入した医療機関に聞く」に続き、後編となる本稿も、オーストラリアの地域医療グループCentral Adelaide Local Health Network(CALHN)が導入した「デジタル患者パス」(digital patient pathways)の管理システムについて取り上げる。グループ傘下の医療機関であるRoyal Adelaide Hospital、Queen Elizabeth Hospital、SA Dental Servicesにおける20個以上の診療科が、医療系のスタートアップ(創業間もない企業)Personify Careのデジタル患者パス管理システムを利用し、クリニカルパス(標準化した治療手順をまとめた計画書)のやりとりをデジタル化して効率化と医療の質の向上を目指している。

 デジタル患者パス管理システムは2020年から2021年の間に、オーストラリアとニュージーランドに所在するCALHNグループ傘下のさまざまな医療機関に普及した。これらの医療機関は、620万人以上の患者とデジタル患者パスでやりとりをしたという。

検査待ち時間は7割減 「デジタル患者パス管理システム」の驚きの効果

 Queen Elizabeth Hospitalは、内視鏡によるダイレクトアクセス検査(DAE:Direct Access Endoscopy、注)にデジタル患者パスを導入した。その結果、DAEが可能かどうかをスクリーニングする臨床現場のプロセスが効率化し、検査の前処置のマニュアル(腸管洗浄のガイド付き手順書)をデジタルデータで患者と共有するといったことが可能になった。

※注:ダイレクトアクセス検査は、かかりつけ医(GP:General Practitioner)の紹介から専門病院での検査実施までにかかるプロセスを短縮するための制度。オーストラリアや英国における国民保健サービス(NHS)の制度で医療を受ける場合、患者はまずGPの診察を受ける必要がある。通常、患者が専門病院で検査を受ける際は、GPが発行した紹介状を用意して、紹介先の病院の専門医の診察を受けることになる。ただしダイレクトアクセス検査の制度を設けている病院の場合、ガイドラインに合致する患者であれば専門医の診察を省略できる。

 DAEの効率化によって患者の待ち時間は71%短縮し、患者の約4割は看護師や検査スタッフからの事前連絡(検査前の電話通知)をもらわなくても検査を受けられるようになり、医療従事者の管理負担が軽減したという。

 「Personify Careのおかげで、われわれは既存のプロトコールを変更することなく、4週間以下でデジタル患者パス管理システムを新規導入できた」と、CALHNのデジタルデザイン担当エグゼクティブディレクター、ポール・ランバート氏は語る。デジタル患者パス管理システムは「既にチーム医療の効率化と質の向上、リスクの早期発見に貢献している」とランバート氏は指摘。「南オーストラリア州の人々の健康状態を改善する新たなケアモデルの実践にもなっている」と説明する。

 CALHNとPersonify Careとの協働は、オーストラリア政府の「Go2Govプログラム」の支援を受けている。Go2Govプログラムは、公共機関に革新的な解決策をもたらすことを奨励、支援する施策で、南オーストラリア州に本社を置くスタートアップが対象となっている。

 Go2Govプログラムの責任者でもある南オーストラリア州の産業技術大臣デイビッド・ピソーニ氏は「南オーストラリアのスタートアップがこのような素晴らしい成功を収め、代表的な事例となる大規模ユーザー施設とともにソフトウェアの有用性を証明できたことは喜ばしい」と語る。

 Personify Careは、デジタル患者パス管理システムの需要に応えるために、2021年12月までの1年間で、オーストラリアを拠点とするチームの規模を2倍にし、次年度のさらなる成長を支援すべく積極的に採用活動を実施してきた。

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