カートに入れた商品をコンピュータビジョンで認識するAmazon方式よりも低コストなレジなし店舗ソリューションがある。これを利用している日本企業子会社とは?
オンラインショップの当初の目的は、実店舗の体験をデジタルに再現することだった。だが、技術が進化するにつれて逆の現象が起きた。顧客がオンラインで楽しむ豊かで摩擦のない体験を実店舗に持ち込むことを求める小売業者が増えている。
Trust Systemsのマイク・ダウソン氏(コマーシャルディレクター)によると、コロナ禍によってオンラインショッピングに慣れるにつれて消費者の行動は多様化し、実店舗がEコマースから受けるプレッシャーが高まっているという。
実店舗は変わる必要がある。実店舗で新たな没入型の役割を生み出し、それを全体的なデジタル戦略に統合する必要がある。
ITによってもたらされる最も急進的な変化がレジなし店舗だ。そのパイオニアがAmazon.comだ。この分野の競争は激化しており、Marks & Spencer、Aldi、WH Smith、Tescoなど、多数の小売業者がこのコンセプトを試し、さまざまなソリューションが登場した。
その一つがMishiPayのソリューションだ。Flying Tiger CopenhagenやMUJI(訳注)などの小売業者にセルフチェックアウト技術「Scan and Go」を提供している。来店者は入店時にモバイル端末でQRコードをスキャンし、商品のバーコードを読み取り、ショッピングを終えたらその端末をチェックアウトする。
訳注:原文は「Muji」。良品計画の子会社と思われるがMUJI EUROPE HOLDINGSのことを指しているのか、その子会社のRYOHIN KEIKAKU EUROPEのことなのか、さらにそれ以外なのかは不明。
MishiPayのデービッド・グラハム氏(マーケティングディレクター)は、コンピュータビジョンとスマートシェルフを利用するシステムとは異なり、導入にはほとんどコストがかからないと言う。「実店舗はオンラインでの摩擦のない体験に追い付く必要がある。このソリューションは非常に自律的であり、実際に商品に触れ、持ち帰ることができる」
MishiPayのソリューションは、店舗スタッフと来店者の関わりを促す手段として、商品をインテリジェントに売り込むアルゴリズムとAIによるレコメンデーションエンジンを組み込んだ独自の端末を提供する。
「関連商品も推奨できる。いわゆる『これを購入した人は、こちらも購入している』機能だ。商品を探すだけでなく、在庫を処分したい小売業者を支援するオファーやプロモーションも可能だ。MUJIは、新商品の発売時にこの機能をよく利用している」(グラハム氏)
レジなし店舗でのプロモーション活動の機会はAmazon.comでも失われていない。同社は、画面やスマートショッピングカートなどの店舗内資産を使ったデジタル広告の販売を検討している。これは、店舗のデジタルサイネージに表示していたものよりもはるかに豊富なデータを利用する提案になる予定だ。
Trust Systemsは、デジタルサイネージを見直す提案にも関わっている。「デジタルサイネージを一新し、関連性を付与し、リアルタイムに動かす必要がある」
「クリスマスの時期に提示されるイースターエッグのような古いコンテンツはデジタル画面から取り除く。従来の再生リストは情報が多過ぎて顧客を混乱させる」(ダウソン氏)
値下げしてでも売らなければならない商品群を抱えている小売業者も多い。そうした商品を特定の場所の画面にリアルタイムに表示すれば、効率的に売り込めるかもしれないとダウソン氏は補足する。
デジタルサイネージには、顔認識を使って顧客の行動に基づいて構築したデータを利用できる可能性があることもダウソン氏は強調し、「人は、自分の好みを知っている顔見知りの店主に、自分に合う商品を薦められるのを好む」という昔ながらのシナリオを引用する。
だが、このシナリオを大型小売業者が大規模に行うには、データとデジタル技術が必要だ。「唯一の方法は、没入型の体験を提供して関連商品を宣伝することだ。小売業者は顔認識を使って来店者を確認し、客をグループ化して宣伝する必要がある」
Kyndrylのスティーブ・パウエル氏(ビジネス開発パートナー)によると、店舗での顔認識やカメラの類いは、AIを利用して人間よりも効率的にパターンを見つけ、意思決定するようになっているという。
AsdaもAIと顔認識を利用するシステムを試している。セルフチェックアウト端末にカメラを組み込み、アルコール類を購入する客の年齢を確認している。
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