Microsoftによるロックインを回避するために苦心する筆者は、Citrixに関心を寄せているという。Windows NT 3.51時代(WinFrame)から現在に至るCitrixの存在に着目する理由とは何か。
Citrix SystemsとMicrosoftは相思相愛の関係にある。部外者にとって、その関係はいつも少し奇妙に見える。Citrixが「Windows」のデスクトップ仮想化のために行った初期の作業の大半は、Microsoftによって模倣されてきた。事実、Microsoftはデスクトップ仮想化機能を大きく育ててきた。
歴史的に見て、仮想デスクトップがWindowsのユースケースの中でも退屈で実利的なものを象徴しているという事実に何らかの関係があるのは確かだ。要求があまり厳しくない作業(サーバベースのデスクトップが従来ターゲットとしてきた作業)を多くのユーザーが実行できるようにすることは、新しいPCで独創的なことをすることほど魅力的ではない。
結局のところ、MicrosoftはデスクトップOSを売り込みたいと考えている。
Citrixが見いだしたのは、日常業務の遂行だけが必要なユーザーグループに費用対効果の高いデスクトップサービスを提供するというニッチな分野だった。この分野は不可欠だが、刺激的ではない。もちろん、Citrixに対して誰もがこのように考えるとは思わない。これは認識の問題だ。Citrixの内部関係者はこれを継続的な課題として認識しているかもしれない。
ここで示した見解は極めて時代遅れだが、歴史を知ることは重要だ。そうすれば、現在のCitrixの本当の姿と対比できる。現在の同社は、エンドユーザーコンピューティング分野で見られるトランスフォーメーションの最先端に位置する。
まず、デスクトップ仮想化で本来中心となった命題がどのように進化しているかを見てみよう。デスクトップ仮想化の初期にCitrixが優位に立った理由の一つは、巧みなエンジニアリングによってレイテンシを克服したことだった。現在はバックエンドにGPUを組み込めるようになり、ユースケースに関するこれまでの常識の多くが覆された。
高度なモデリングや設計作業を行うエンジニアといった要求が厳しいユーザーのニーズは、机上のワークステーションよりもサーバベースのデスクトップの方が確実に満たせる。これはハイブリッドな働き方やコラボレーションなどのトレンドを考えると重要になる。高価な装置を収容するサーバルームにいなくても、その装置を利用できる。要求が厳しいユーザーでも、使う端末の形状、サイズ、クラスを問わず、どこでも仕事ができる。プロジェクトニーズの変化やパートナー企業に合わせて、コンピューティングリソースを自由に割り当てられる。
要求が厳しいユーザーでも可能ならば、他の多くのユーザーにも同じ手法を当てはめることができる。事業部門もIT部門も、コスト削減、容易な管理、セキュリティ強化といったメリットを得ながら個人の能力、自由度、柔軟性を強化できる。
ここまでの内容はWindowsデスクトップを中心に展開している。だが、Windowsデスクトップは複数の選択肢の一部にすぎなくなった。ユーザーにとって重要なのはアプリケーションとデータに、迅速かつ便利で信頼性の高い方法でアクセスできることだ。これに対応するのが「Citrix Workspace」だ。Citrix Workspaceはユーザーにとって重要なものをデジタルワークスペースにまとめ、Windows PC、「Mac」「Chromebook」、タブレットなど、任意の端末でアクセスできるようにする。
デジタルワークスペースを実現するため、Windowsアプリケーションのパッケージ化とストリーミングに必要なものやSaaSおよびローカル/クラウドベースのファイルストアを環境に結び付けるのに必要なフックも提供する。バックエンドシステムのアラートやタスクを表示する機能、「App Builder」として知られるCitrixの統合ローコード環境によるシンプルなワークフロー開発機能も利用できる。
Citrix Workspaceが優れているもう一つの点がシングルサインオン機能だ。シングルサインオン機能はユーザーエクスペリエンスを向上させるだけでなく、セキュリティとリスクの点でも明らかなメリットがある。このメリットは、データやアクセスポリシーの一元化といったサーバベースコンピューティング固有の機能のメリットを上回る。
現時点でCitrixが重視するのがDaaS(Desktop as a Service)だ。DaaSと言うと、多くの人々はパブリッククラウドで提供されるデスクトップを考える。Microsoftはこの分野で独自の役割を果たしており、Citrixがこれを補完している。だが、Citrixのアプローチが好評を得ているのはそのオープン性と柔軟性だ。
例えばユーザー独自のCitrix環境を任意のパブリッククラウドで運用できる。従量制課金モデルでデスクトップをオンデマンド提供するCitrixパートナーと連携することも可能だ。パートナーは、この2つのモデルをうまく調整してホスト型サービスとマネージドサービスをさまざまな形式と規模で提供できる。
DaaSはまだ初期段階なので、多くのベンダーはさまざまな価格モデルを用意する段階には至っていない。DaaSへの関心は高まっているため、この分野は今後2〜3年で非常に活気づくと思われる。
Citrixの製品やサービスのポートフォリオは着実に広がり続けている。これを認識しているのは同社のコアな既存ユーザーぐらいだ。それも同社が現在感じている欲求不満の一つかもしれない。Citrixは、セキュアなプライベートアクセスからコラボレーションやプロジェクト管理ソリューションまで、製品やサービスを着実に展開している。Citrixは事業担当者やIT担当者のニーズに対応することに絶えず目を向けている。
その好例がWrikeの買収だ。Wrikeのターゲットは、重量級のプロジェクト管理ツールと軽量な調整ツールの間にある。
Citrixに大きな敬意を抱くもう一つの理由は、根っからのMicrosoft顧客が他の選択肢に目を向け、代替ソリューションを採用するのにCitrix製品が役立つ点にある。このことは、筆者がMicrosoftのロックインから逃れる考え方を示したことに大きく関係する。「Chrome OS」を搭載する端末にCitrix Workspaceをインストールすると、Chrome OSではネイティブ実行できないアプリケーションが使えるだけでなく、SaaSやWebアプリケーションに高度なセキュリティを適用可能になる。
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