テープはなくなるどころか、出荷容量が増えてストレージ市場における存在感を大きくしている。根強いテープ人気の理由はどこにあるのか。新規格の動向をまとめて探る。
ストレージ分野では「テープの終わり」が叫ばれて久しい。ところが、その終わりは一向にやってこない。テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)を策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(TPCs)は、2022年4月に年次出荷レポートを発表した。
TPCsのレポートによると、2021年におけるLTOテープの出荷容量は圧縮時148EB(エクサバイト)と、過去最高だった。なぜテープは市場から消えることなく企業を魅了し続けているのか。
企業がテープを使用する理由は、主に2通りに分類できる。1つ目はデータを長期保存するアーカイブ用、2つ目はサイバー攻撃からデータを守るためのエアギャップの確保だ。エアギャップは本番システムのネットワークにテープを接続しないなど、テープを隔離することを指す。
富士フイルムの米国子会社FUJIFILM Recording Media U.S.A.のリッチ・ガドムスキー氏は、「テープは電力使用量が他の主要ストレージに比べて少ないため、サステナビリティ(持続可能性)に貢献することもメリットの一つになる」と話す。テープカートリッジを棚で保管しておくだけであれば電力を必要としないことが理由だ。
バックアップ用のストレージにHDDやSSDを使用することは一般的になった。それに対して、テープは特に長期のアーカイブ用として活用されている。調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリスト、ランディ・カーンズ氏はクラウドベンダーが長期アーカイブのサービスにテープを使用している例を挙げる。「クラウドベンダーの長期アーカイブはデータに接続する際の時間は長くなりがちだが、コストは下がる。それが、テープ市場が成長する大きな要因だ」(カーンズ氏)
1カートリッジ当たりの容量増加が続く点も、テープユーザーを引き付けている。TPCsが公開しているロードマップによると、「LTO-10」の容量は圧縮時90TB、非圧縮時36TBになる。その前世代で最新のLTO-9の容量は圧縮時45TB、非圧縮時18TBであるため、1世代新しくなることで容量は倍増する。
LTO-10準拠の製品が登場する時期はまだ分かっていない。過去には2〜3年でLTOテープの新規格が出るのが一般的だった。LTO-9の製品が2021年に発売したことを考えれば、それほど先の話ではない。
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