生成AIは、そのビジネスへのメリットから企業における活用が拡大すると見込まれる。企業が生成AIの導入を検討する際の課題や、導入前に確認すべきポイントを2つ解説する。
2022年にAI(人工知能)ベンダーOpenAIがAIチャットbot「ChatGPT」や画像生成AIエンジン「DALL・E 2」を発表して以来、テキストや画像を生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)は急速に普及した。Googleの「Bard」など競合製品も登場し、生成AIが生成したコンテンツは日常的に活用されるようになった。その利便性から活躍の幅が広がる生成AIだが、導入前に確認すべき点が幾つかある。ビジネスに生成AIを活用して成功したい企業が押さえるべきポイント7つのうち、2つを紹介する。
調査会社Gartnerのテクノロジーイノベーション部門でアナリスト兼バイスプレジデントを務めるアルン・チャンドラセカラン氏は、「一般的な企業で生成AIモデルのトレーニングを実施するのは非現実的だ」と話す。生成AIの構築には数十億から数兆個ものパラメータ設定が必要な場合があり、実現には膨大な労力とコストを要する。さらに、CPUやメモリといったコンピューティングリソースを大量に消費する場合、サステナビリティ(持続可能性)にも負荷を掛けることになる。
チャンドラセカラン氏は、豊富なリソースを持つ企業のみが生成AIへの技術投資が可能になるのではないかと懸念すると同時に、今後はクラウドAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を個別にチューニングする方法が一般的になると予測する。
IT部門のリーダーは、レガシーシステムと生成AIを統合するか、それともレガシーシステムを刷新するか決断を迫られる。ITコンサルタント企業West Monroeでパートナーを務めるパブロ・アレホ氏は、「レガシーシステムへの生成AI組み込みは、企業にとって別の問題を引き起こす可能性がある」と指摘する。
例えば、不正取引判定における生成AI活用を検討する金融機関は、現行の勘定系システムのタスク処理方法と、生成AIのやり方は共存できないという印象を持つだろう。レガシーシステムは特定の方法でタスクを処理するのに対して、生成AIは全く新しいタイプの処理方法を用いるからだ。「より効果的にアウトプットを出せるように、企業は新しいシステムの形を検討すべきだ」とアレホ氏はアドバイスする。
中編は、生成AI導入の先を見据えて考えるべきアプローチを紹介する。
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