デジタルツインで進化する「フォーミュラE」はF1並み――開発者が語る魅力とはEVレーシングカーの改良【後編】

電気自動車(EV)のレース「フォーミュラE」には、F1とは違うフォーミュラEならではの面白さがある。Jaguarのレーシングチームのエンジニアにその魅力を聞いた。

2024年01月19日 08時00分 公開
[Dickon RossTechTarget]

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 「電気自動車(EV)のフォーミュラ1(F1)」と呼ばれる自動車レースが「ABB FIA Formula E World Championship」(以下、フォーミュラE)だ。フォーミュラEではレーシングカーのシャシー(車体の骨格)やエンジンの仕様が規則で定められているため、いかに車体の能力を引き出せるかが勝負の鍵を握る。同じ消費電力量でいかに走行距離を稼げるか、どれだけのスピードを出せるかといった性能向上の取り組みは、公道を走るEVの開発にも役立つ。

デジタルツインで進化するフォーミュラE その魅力とは

 フォーミュラEの出場チームJaguar TCS Racingの公式テクノロジーパートナーTata Consultancy Services(TCS)でバイスプレジデント兼シニアマネージングパートナーを務めるバルン・カプール氏は、フォーミュラEの開発における「デジタルツイン」(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)の重要性を説明する。

 例えば常設のレース専用コースがあるF1とは異なり、フォーミュラEでは大半の場合、市街地や公道でレースを開催する。コースは都市ごとに異なり、一つ一つ特色がある。Jaguar TCS Racingは各コースを再現したシミュレーターを用意しており、選手は練習期間中、レーシングカーのデジタルツインを操縦して仮想空間上のコースを走行できる。

 Jaguar Land RoverとTCSのパートナーシップは、公道を走るEVの開発にも及ぶ。EVの信頼性を確立するには複雑なインフラが必要だ。バッテリーや電気モーター、集積電子システムなど、車体を構成するコンポーネントの実験を反復する際にデジタルツインを活用することで、時間やコストの節約など実験の効率化につなげているという。

 実際に同社の高価格帯EV「I-PACE」では、フォーミュラEの開発で培ったトルク(駆動力)管理の技術を応用することで、同じバッテリー容量で従来より20キロ長く走行できるようになったという。

開発者が語る「フォーミュラEの面白さ」

 フォーミュラEは、EVの普及役として重要な役割を担う。世界各地の都心部がレースコースとなるため、普段は郊外のサーキットまで出向かないような層の関心を引くことができるという。Jaguar TCS Racingでチームディレクターを務めるジェームズ・バークレー氏は、フォーミュラEを「世界最先端のEVが集うレースだ」と説明する。

 フォーミュラEで話題になるのは、レーシングカーのスピードと航続距離だ。フォーミュラEの出場チームは両方の問題に取り組んでおり、レースでは効率性やエネルギー管理といった戦略を競う。「エンジン車かEVかでレースのスリルが大きく変わることはない。さらに、フォーミュラEで各チームが培った技術は、公道を走るEVの開発にも貢献する。フォーミュラEはF1に負けないくらいエキサイティングだ」とバークレー氏は話す。

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