「GPT-3.5」と「GPT-4」は結局、何が決定的に違うのか?OpenAIのLLMを比較【前編】

OpenAIは大規模言語モデル(LLM)「GPT」の改良を進めている。「GPT-3.5」とその改良版「GPT-4」は何が違うのか。それぞれの特徴と違いをまとめた。

2024年05月09日 08時30分 公開
[Will KellyTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)をビジネスに活用する動きが広がっている。生成AIを活用するに当たってまず重要なのが、適切なモデルの選択だ。

 AIベンダーOpenAIは、大規模言語モデル(LLM)「GPT」(Generative Pre-trained Transformer)の改良に取り組んでおり、「GPT-3.5」や「GPT-4」など複数のモデルを発表している。それぞれ何が違い、どのような特徴があるのか。

GPT-3.5、GPT-4の違い

会員登録(無料)が必要です

 OpenAIは2022年11月にGPT-3.5を、2023年3月にはGPT-4を発表している。それぞれの特徴と、違いをまとめた。

GPT-3.5

 GPT-3.5は自然言語を理解し、回答を生成する。自然言語処理に関する幅広いタスクをこなすことができる。主要な用途は以下の通り。

  • 文章要約
  • メール本文の作成
  • 翻訳
  • ソースコード生成
  • チャットbot/仮想アシスタント

 開発者は改良版のモデルである「GPT-3.5 Turbo」を使い、独自にモデルをトレーニングする「ファインチューニング」を実施することで、特定の用途向けに最適化することができる。パラメーター(モデルのトレーニングに使う変数)の変更をせずに、少数の例文を提示するだけでタスクを解決できる「フューショット学習」(Few-shot Learning)機能も提供する。

 OpenAIはAIチャットbot「ChatGPT」のLLMを利用するためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)「Chat Completions API」を公開している。外部のアプリケーションやサービスから、GPT 3.5 Turboの以下のモデルにアクセスできる。

  • gpt-3.5-turbo-0125
    • 対話能力に特化したモデル。1万6385トークン(トークンはテキストデータを処理する際の単位)のコンテキストウィンドウ(生成AIがやりとりの中で保持する情報量)を備える。
  • gpt-3.5-turbo-instruct
    • 一問一答のような単純なタスク処理に特化したモデル。4096トークンのコンテキストウィンドウを備える。

GPT-4

 GPT-4は、OpenAIの企業向けプラン「ChatGPT Team」「ChatGPT Enterprise」が採用しているモデルだ。基本的な機能はGPT-3.5と同じだが、回答の信頼性やクリエイティブ性に優れており、プロンプト(生成AIに対して出す質問や指示)の微細な意図をくみ取ることが可能だという。

 その他の大きな違いは以下の通りだ。

  1. マルチモーダルAI機能
    • GPT-4は、数値や画像、テキスト、音声など複数種類のデータを組み合わせて、あるいは関連付けて処理できるモデルだ。入力した画像のキャプション生成や分析などができる。
  2. コンテキストウィンドウサイズ
    • コンテキストウィンドウのサイズについて、GPT-4は8192トークンと、一部開発者向けに3万2768トークンの2種類を提供する。後者は約2万5000語を扱うことができ、長文コンテンツ生成などに活用できる。
  3. ナレッジベース
    • トレーニングに使用する学習データの範囲が、2023年4月時点までに拡張された。
  4. 安全性と整合性
    • OpenAIはGPT-4の安全性向上に取り組み、改良を加えている。2023年3月にOpenAIが発表した内部評価によると、GPT-4は未許可コンテンツに対するリクエストへの応答率がGPT-3.5と比較して82%低下し、事実に基づいた応答の生成率が40%高くなっている。

 開発者は、Chat Completions APIからGPT-4を利用できる。OpenAI によると、2023年7月時点でAPI経由のGPT利用のうち97%をGPT-4が占める。


 後編は、GPTの各モデルを精度とコストの面から比較する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

2025年版AIセキュリティレポート:利用拡大の裏で高まる脅威とリスクの実態

AI技術は業務効率化などの恩恵をもたらす一方で、セキュリティやガバナンスに関する課題も顕在化している。本資料では、2025年版AIセキュリティレポートの結果を基に、AIの利用状況、リスク、セキュリティ対策などを多角的に解説する。

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

製造業のAI活用を成功に導くインフラデザインとは?

研究開発や設計支援など、製造業におけるAIのユースケースは多岐にわたる。企業の競争力を高めるため効果的にAIを活用するためには、ICTインフラ環境の高度化が不可欠であり、用途に合わせた最適なインフラのデザインが求められる。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

調査で見えた生成AI活用の実態、課題解決の鍵は「AIプラットフォーム」の導入

ビジネスにおける生成AI活用が進む中、多くの企業がPoC(概念実証)から本番環境への移行に課題を抱えている実態が明らかになった。その解決策の1つである「AIプラットフォーム」の必要性や導入価値について解説する。

製品資料 株式会社日本能率協会マネジメントセンター

【企業向け】生成AIで差をつける、企業がビジネスに生かす生成AIを学ぶ方法

競合他社に差をつける手段として注目度が高い「生成AI」。ビジネスメリットの話題には事欠かないが、意外にも企業における生成AI活用度は低い。原因の1つが学習機会の欠如だ。生成AIを効果的に導入し、活用できる人材を育成するためには?

製品資料 日本アイ・ビー・エム株式会社

生成AI活用を加速、試験段階から生産性向上へと導くツールの条件とは?

エンタープライズ向け生成AIの導入が進む中、期待した成果が得られていない企業もあり、システムの分断やROIの低下といったリスクも顕在化しつつある。このような課題を解消するためには、どのようなツールが求められるのだろうか。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...