Windows XP移行の悪夢がよみがえる
“惰性”が生む「Windows Server 2003」継続利用の悲惨な結末
延長サポートの終了が近づく「Windows Server 2003」。多くの企業が最新OSへの移行を進めている。だが、移行コストや社内の慣習など、中には決して容易に決断できない状況もある。果たして移行を阻む原因とは何だろうか。
米MicrosoftのサーバOS「Windows Server 2003」のサポート終了が近づいている。そのため、多くの企業は「Windows Server 2012」などの最新プラットフォームに移行を進めている。だが、その中には決して容易に決断できない状況もある。
そうした要因の1つに、全体的な移行コストがある。これにはハードウェアの大規模アップグレードや必要不可欠な更新作業が含まれる。既製または社内開発された16ビット/32ビットアプリケーションが更新作業の対象となり、64ビットのOS環境に対応させる必要がある。
移行が必要不可欠と見なされない要因は複数ある。1つは社内に根付いている惰性、もう1つはITシステムに対する時代遅れの考え方だ。IT予算を拡大するよりも、最新のデータセンターテクノロジーに関する教育を行った方が有効な打開策になるという見方もある。
米ヒューストンのWiProでソリューションアーキテクトを務めるマイク・ドリップス氏は次のように語る。「ある企業ユーザーから『Microsoft .NET Framework』のアップグレードに関する問い合わせがあった。バージョン1.1から4.5へのアップグレードということだったが、話を聞くと『Windows Server 2000』を利用しているという。そのため、.NET Framework 4.5へのアップグレードの話をしている場合でないと伝えた。『壊れていないものを修理するな』という古いことわざを守り続けている企業は少なくない。ただし、このやり方には限界がある」
現在稼働しているWindows Server 2003サーバの正確な台数を把握するのは困難だ。だが、多くのアナリストは1000万台に近い想定値を出している。
独立系ITコンサルタントのマイケル・カップ氏は次のように話す。「このような惰性に多くの企業が流されているのは、実に驚くべきことだ。あるF1チームの例を紹介したい。このF1チームは、今季のレースが終わっていないにもかかわらず、来季のマシン開発に着手している。IT部門にもこのような心構えが必要だ」
大半の企業は単なる惰性で移行を先延ばしにしているわけではない。新しいハードウェア/ソフトウェアのプラットフォームや、古くなった社内の基幹アプリケーションの更新に費用を捻出する余裕がないのだ。
一方、予算の投入を予定している企業もある。だが、その対象は収益増加をけん引するアプリケーションに限定される。
分散型アプリケーションの運用管理を専門とする米BlueStripe Softwareの共同創業者でCOO(最高執行責任者)を務めるビク・ナイマン氏は次のように分析している。「移行を実施するか否かは、切り替えに掛かるコスト次第である。顧客と接するうちに分かったことがある。企業のビジネスモデルや収益にかかわるアプリケーションは、全て最新バージョンのWindows Serverで稼働している。一方、電子メールなどのソフトウェアの大半は、Windows Server 2003などの古いプラットフォームで稼働している」
サポート終了が間近に迫ったWindows Server 2003
Windows Server 2003の延長サポートは2015年7月14日(米国時間)に終了する。それでもWindows Server 2003を使い続けた場合、悲惨な結末を迎える企業もあるだろう。この日以降、Microsoftは、同OSに対するセキュリティ更新プログラムやその他の修正プログラムの提供を停止する。そのため、ミッションクリティカルなアプリケーションが危険にさらされる恐れがある。
また、旧式のプラットフォームを使用し続けると、国や地方自治体などが定めるさまざまな規制を順守することが困難になる。
米マサチューセッツ州フラミンガムの米IDCでサーバやシステムソフトウェアのプログラミング担当部長を務めるアル・ギレン氏は次のように指摘する。「サーバ製品のサポート終了は、法規制の順守などに関する非常に深刻な問題を引き起こす。企業の上層部がシステムのアップグレードを拒み、それが原因で会社が『PCI DSS』や『HIPPA』などに準拠できなくなったとしても、その問題をCEO(最高経営責任者)に報告しようと考えるIT担当者はいないだろう。こうした事態を防ぐためにも、上層部はシステムのアップグレードを支援すべきだ」
だが、サーバOSの移行は、「Windows XP」などのデスクトップOSの移行と比べて、複雑な作業である。
16ビットアプリケーションを完全に排除できないことを重大な問題と考えるのはギレン氏だけではない。特に、必要となるハードウェアやソフトウェアを購入し、アプリケーションを再開発する人材を確保する金銭的な余裕がなく、財政的に厳しい中堅・中小企業にとって大きな問題だ。
IT部門が移行に乗り気でない理由は他にもある。ウイルス対策やエージェント管理など、カーネルと通信する重要なアプリケーションのアップグレードは難しく、移行作業が中断される恐れがある。Windows Serverは、2009年にリリースされた「Windows Server 2008 R2」以降、全てのバージョンで完全に64ビット化されている。
「移行を成功させるには時間がかかる。社内に担当者がいないときは専門家を雇う必要があり、さらに費用が掛かる。だが、ここまで移行を先延ばしにした企業はコストを掛けることは好まず、安価に済ませようと考える。その結果、最終的に高くつく場合がある」(ドリップス氏)
ハードウェア費用がかさむのには理由がある。その最大の要因は、Windows Server 2003からWindows Server 2008 R2に移行する段階を踏まずに、Windows Server 2012に直接移行しようとすることにある。Windows Server 2012は、Windows Server 2003と比べて大幅に進化しており、「Hyper-V」「Windows Azure」などの高度な仮想化環境が備わっている。
BlueStripe Softwareのナイマン氏は次のように述べている。「当社が対応しているWindows Server 2003からWindows Server 2012への移行を希望している顧客の大半は、シングルイメージのVM(仮想マシン)からマルチイメージのVMへの移行も行っている。顧客が購入するのは、2wayや4wayのコンピュータではなく、16wayのコンピュータだ。少なくとも16Gバイトのメモリが搭載されており、高密度の仮想化機能が実装されることになる」
企業がWindows Server 2008 R2への段階的な移行手順を踏まない理由は他にもある。Windows Server 2008 R2のメインストリームサポートが2015年に終了するためだ。延長サポートは2020年まで継続される。だが、新しいアプリケーションを運用し始めたばかりのときに、OSのテクニカルサポートが終了する不安を回避したいと考えるユーザーは少なくない。
Microsoftの関係者は次のように話している。「Windows Server 2008への移行は有効策ではないと考えるユーザーが増えている。メインストリームサポートが2015年に終了するためだ。ユーザーは購入するものに対して、できるだけ長くサポートを受けたいと考えるものだ」
Windows Server 2003からの移行は、Windows Server 2008からの移行問題と比べると比較的小さな問題だ。ギレン氏によると、Windows Server 2008のユーザー基盤は、Windows Server 2003よりもかなり大きい。また、Windows Server 2008 R2には、非常に多くの仮想化機能が組み込まれ、より規模の大きな企業環境で定着している。
「Windows Server 2008のサポート終了は、さらに大きな問題を引き起こすことが予想される。Windows Server 2008の利用ユーザーを完全に新しいOSに移行する作業は一部の企業で困難を極めることになるだろう」(ギレン氏)
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