製薬企業のMRが、ITツールを使いたがらない“残念な”理由製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用【第2回】(1/2 ページ)

製薬企業のMR活動のIT化が進んでいます。Webサイトやメールなど多角的な情報提供ができるようになってきたものの、現場のMR(医薬情報担当者)がツールを積極的に使いたがらないのはなぜでしょうか。

2017年04月03日 09時00分 公開

連載について

 製薬企業のプロモーションの在り方や行動基準を示した「医療用医薬品プロモーションコード」の厳しい規制の下で、製薬企業のMR(医薬情報担当者)やマーケティング担当者は適切な情報提供の在り方を模索している。eディテーリング(電子的な情報提供活動)ツールやメールマガジン、オウンドメディアなど、さまざまな情報提供の効果を判定するためには各活動の中で得られたログの分析が必要だ。だが十分な分析ができており、かつ分析結果を十分に活用できている製薬企業は多くない。

 本連載では、製薬企業の医療用医薬品ビジネスにおけるB2Bマーケティングの現状と課題を整理し、ITツールやデータの活用によってマーケティングの投資効果を高める解決策を探る。

製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用(連載インデックス)


 昨今、製薬企業からの医療従事者向け情報提供は、次のようにマルチチャネル化が進んでいます。

  • eディテーリングツール(電子的な情報提供活動)
  • Webサイト
  • 電子メール
  • 特定プラットフォーム(メッセージングサービスの「LINE」など)

 新たに投資が進んでいるのはITツールです。しかしマーケティングやディテール活動(注1)の現場においては、これらITツールの積極的な活用は遅々として進んでいません。その原因の分析と解決法について解説します。

 製薬企業のマーケティング担当者からは、「長いストラテジーフェーズを経て、ようやくeディテーリングツールにコンテンツ(注2)を落とし込んだのに、現場MR(医薬情報担当者)の利用率が上がらない」という声をよく聞きます。大きな投資をして最新ツールを導入したにもかかわらず、そのツールが利用されないというのは企業にとっても大きな損失です。そのボトルネックとは一体何なのでしょうか。

注1:メールマガジンやダイレクトメールなどを活用した仮想のプロモーション活動のこと。
注2:本稿では、医療用医薬品の販促資材として代表的な、リーフレットやプレゼンテーション資料などのことを指す。

 要因としては、次のようにさまざまなケースが考えられます。

  • 情報が現場MRのニーズに沿っていなかった
  • 製薬企業からの一方的な情報発信にとどまっており、医療従事者が必要とする情報になっていなかった
  • MRにとって、ツールの使い勝手が悪かった

 当然ですが、ツールの利用者であるMRと、情報を得る当事者である医療従事者のニーズに合ったコンテンツが載っていなければ、どんなツールも無意味になります。しかし場合によっては、たとえコンテンツに問題がなくとも、ツールが使われなくなるケースもあるようです。「コンテンツ以外の要因によってツールが使われなくなるケース」「コンテンツそのものに問題があるケース」の2パターンに分けて、双方の事例を分析しながら問題解決のための方法を探っていきます。

コンテンツ以外の要因によってツールが使われなくなるケース

 まずは、コンテンツそのものに問題がなくとも、ITツールを生かす仕組みがないために、利用率が上がらない例について説明します。以下は、医療従事者を対象にWHITEが独自に調査したデータです。

図1 図1 最も情報提供頻度が高い製薬企業MRの印象に当てはまる要素。サンプル数500サンプル(勤務医400サンプル/開業医100サンプル)、アンケート配信・回収対象は年齢全国の24歳~69歳の男女《クリックで拡大》

 ここから分かることは、医療従事者がMRを評価しているポイントについてです。

表1 「最も情報提供頻度が高い製薬企業MRの印象にあてはまる要素」の上位10位
1位 人柄の良さ・親近感 71.9%
2位 訪問時のマナー・態度 61.9%
3位 依頼事項への迅速な対応 59.6%
4位 基本的なコミュニケーション能力 56.3%
5位 自社製品についての知識の豊富さ 52.2%
6位 熱意 51.2%
7位 訪問頻度 48.1%
8位 簡潔明瞭かつ説得力のある説明を行う能力 40.4%
9位 医師のニーズをよく理解する能力 40.2%
10位 安全性情報提供、副作用発現時などの対応が迅速・的確 34.0%

 1位の人柄や2位のマナーなどはツールで満足度を上げることは困難ですが、表1の赤字部分に関してはITツールの活用が検討できそうです。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       1|2 次のページへ

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「遠隔医療」に一斉移行した医療機関 その方法とは?

遠隔医療体制を構築する際は、患者や通常業務への影響を押さえながら進める必要がある。パンデミック下で一斉に遠隔医療体制を構築した2つの医療機関の例を紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

オーストラリアの「電子処方箋」制度ができるまでの道のり

オーストラリアでは処方箋の完全電子化が一般化しているが、制度確立までの道のりは平たんではなかった。完全電子化を阻んだ課題とその解決策とは。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

湾岸諸国の「デジタルヘルスケア」推進 重点分野と課題とは?

コロナ禍を契機に、湾岸諸国では「デジタルヘルスケア」への移行が加速している。湾岸諸国におけるデジタルヘルスケア産業の重点投資分野とは。デジタルヘルスケア推進の”壁”とその対処法についても紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

医療機関で起こりがちな「データ品質」低下の理由と、改善に向けた方策とは

医療機関は膨大なデータを扱い、そのデータに基づいて重要な決定を下す場合がある。一方、データの質は低くなりがちだ。それはなぜか。データの品質を改善させるために必要な方策と併せて紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

NHSのデータ基盤計画が英国民の不評を買った理由

英国の国民保健サービスでイングランド地域を管轄するNHS Englandが、医療サービス向けの新データ基盤を構築している。この計画に英国市民団体が“待った”をかけたという。なぜなのか。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...