BI導入事例:Dr.Sum EA
決算報告作業の劇的な効率化を目指した中外製薬のBI活用
基幹システムの全面刷新に伴いERPパッケージとBIツールを導入した中外製薬。しかしその標準機能が、決算をはじめとする各種報告書や分析リポート作成業務すべてを効率化したわけではなかった。
ERP導入後も財務経理部門で効率化されなかった作業
2005年、中外製薬はBPR(Business Process Re-engineering)を行う目的で基幹システムの全面刷新を行い、会計/生産/販売など主要部門にERP製品「SAP R/3」をビックバン方式で導入した。そして、2007年には人事システムも「SAP ERP 6.0」で稼働開始した。
それと同時に、主に財務経理部および各機能の予算統括部門でのデータ活用を想定し、BI(Business Intelligence)ツール「SAPビジネスインフォメーションウェアハウス」(以下、SAP BW)を導入した。
中外製薬はスイスに本拠地を置くロシュ・グループの最重要メンバーであり、国内では中外グループの中核会社である。同社にとってもロシュ・グループにとっても決算早期化への強い要請があるため、月初第3営業日で中外グループ連結ベースの月次決算を取りまとめ(連結会計システム「DIVA」で行われている)、ロシュへ財務実績を報告する必要がある(ロシュ・グループ標準の連結システム「Cartesis Magnitude」経由)。
つまり、財務経理部門がデータにアクセスしてまとめ上げる時間は3日間しかない。連結ベースの売り上げデータは第1営業日に報告し、第3営業日までには貸借対照表や損益計算書と付属報告書を作り上げなければならないのである。しかも同社の場合、ロシュ・グループの会計基準(国際会計基準に準拠)での財務報告だけでなく、日本の上場会社であることから日本の会計基準での財務報告作成と、2つの会計基準による財務報告を同時に作成する必要があった。これら2つの会計基準では、固定資産の減価償却方法や引当金の計上基準が異なるといった損益に影響する差異があり、財務諸表そのものはSAPやDIVAシステムで同時かつ自動的に作成できる仕組みを実装していたが、付属情報や報告項目、形式など異なる点も多かった。
SAP R/3からの決算仕訳データ作成のためのデータ収集など、非常に時間のかかる作業を限られた時間で行う必要があった。検索条件を設定し、表示されるまでに30分、画面からデータをロードし、そのデータ加工に30分。設定条件を間違えるとそれだけで約1時間はロスしてしまう。決算作業は複数の担当者が流れ作業で行うため、ある工程で遅滞が発生すれば、後工程すべてが影響を受ける。データ取得のためのレスポンス向上は財務経理部門にとって重要なビジネスニーズだった。
一方、ERP導入後、四半期ベースでの売り上げや営業利益の予測の精密化、ビジネス環境の変化に対する機動的な予算コントロールがますます重要なビジネス上の課題となってきた。このためには常に直近の実績情報を把握し多角的に分析を行うことで、さまざまな打ち手を考えていく必要があると思われた。四半期ベースでのローリング予算管理を高い精度で行っていくためにも、予算を含めたデータベースの充実と共有化が必要であったが、この面でもSAP R/3やSAP BWのデータベースのみでは機能・対応スピードは不十分であった。結果として、担当者が自席PCのMicrosoft Office Excel(以下、Excel)にデータを抽出して加工するなどで対応しており、内部統制上の要件も考慮した利用しやすいデータベースが求められていたのである。
同社にはSAP BWのほかにも、営業システムの情報提供ツールとして導入したBIツール「Business Objects」があり、ホスト時代からの利用実績に続き、ERP導入後も総勘定元帳など一部の財務データはそこに蓄積されていた。しかし蓄積されたデータは十分に大量で、担当者の思い通りに検索するというわけにはいかなかった。作業負荷の軽減と経理/予算情報の一元化・共有化のために、既存のBIツールに代わる何かが必要だったのである。
100万件1秒の高レスポンスを評価してDr.Sum EAを選択
同社ERP推進部 経理人事グループ 課長の楠 博之氏がウイングアーク テクノロジーズの多次元高速集計検索エンジン「Dr.Sum EA」を見たのは、ウイングアーク テクノロジーズ主催のセミナーでのことだった。セミナーで行われたデモでは、100万件のデータへの検索結果を1秒で返していた。楠氏は以前、「Dr.Sum Standard」のデモを見学したことがあり、そのときはそれほど速いという印象がなかったため、そのレスポンスには「何かからくりがあるのでは?」と疑ったという。しかし、特にハイスペックとはいえないPCで実際に100万件のデータを検索しているのを確認した楠氏は、当時のBusiness Objects最新版と比較した後に、Dr.Sum EAを同社で実装したSAP ERPとSAP BWの機能を補完するツールの候補として考えるようになった。ほかにも幾つか製品を探してみたが、レスポンスの観点でDr.Sum EAが最適と考えたという。
実際、財務経理部の担当者やマネジャーに製品デモを行った際、返ってきたのはそのレスポンスへの感動の言葉と、「どれくらいの価格で導入できるのか」という前向きに検討するための質問だった。
Dr.Sum EAが同社にとって魅力的だったもう1つの点に、サーバライセンス体系というファクターがある。直近でBIツールを利用することになっていたのは、財務経理部門関係者だったが、使えるBIツールとなればグループ全体に利用を広げていく可能性がある。そうしたとき、ユーザーライセンス体系の製品ではコストが展開の障害になる可能性があり、「コストがボトルネックになることは避けたい」と楠氏は考えていた。
今回のDr.Sum EA選定に第三の理由があるとしたら、製品に多彩なインタフェースが用意されていたことだろう。「Dr.Sum EA Datalizer for Excel」という製品は、Dr.Sum EAで集計した複数の結果をExcelで展開できる。「Dr.Sum EA Datalizer for Web」は、Webブラウザ上に集計結果を表示でき、その出力結果をExcel文書やPDFに出力したり、逆にそれを制限することが可能だ。また「Dr.Sum EA Visualizer」は、集計データの可視化で意思決定支援を行うビジュアライゼーションシステムだった。いずれのインタフェースも参照権限をきめ細かく設定でき、詳細な監査ログが取得可能であるため、内部統制要件も満たせるはずだ。
「キーワードは“高いレスポンス”でした。その点Dr.Sum EAは最適で、競争優位性が一番でした。また将来的な水平展開も考えやすく、選定上の大前提である内部統制ニーズもクリアしていたので、迷うことなくこの製品導入を提案することにしました」(楠氏)
瞬時のデータ出力で担当者に生まれた精神的余裕
Dr.Sum EAファミリーでBI環境が構築されたのは2008年12月のこと。以来、SAP R/3上の財務データは日次でDr.Sum EAへ更新されるとともに、DIVAシステム上の連携会計データや調整データも月次でここへ集結し、Dr.Sum EAは決算・予実実績報告書作成のためのデータを一元管理する格納庫となった。データ容量は、予算実績管理データで2100万件、総勘定元帳で3450万件ある。
財務経理部門の担当者は、Dr.Sum EA Datalizer for Excelを利用して月初から直ちに作業に入るが、損益計算書や貸借対照表のドラフトデータはほんの10数秒で出力可能になる。自身の作業が迅速になるだけでなく、関係部門に対してのレビュー依頼をいち早く出せ、その結果、元データが求められてもDr.Sum EA上でドリルダウンが可能になる。以前はSAP R/3にログインしてダウンロードし、データ加工する必要があったため、その点での効率向上が大きいようだ。
また、最新データは常にDr.Sum EAで一元管理されているため、担当者のリポート出力や前提データの重複作業がなくなり、「単体P/L(損益計算書)ビューの2月のリポートのことだけど」と共有を前提とした会話が成立するようになるだろう。医薬品メーカーは新薬開発と市場導入のために常にローコストオペレーションが求められるが、このように最新の財務データを一元的に共有できることは、その実践のための一助になると確信しているという。
同社では、月ごとの製品別売り上げ一覧といった定型リポートはSAP BWで、大量データを対象にユーザーがさまざまな角度から分析を行う非定型リポートはDr.Sum EAで行うというBIツールの使い分けを行う予定だ。
さらなる展開で情報共有と気付きを促進
2009年度でDr.Sum EAによる経理系データベースの構築は一段落する。「安定的で信頼性の高いデータベースから、今後Dr.Sum EA Visualizerをさらに活用してビジュアルな分析に慣れていくことで、業務担当者にとってさまざまな気付きやアイデアを得ることができ、仕事のやり方もよりクリエイティブになっていくことを期待しています」と楠氏は語る。
「経理情報だけでなく、R&D(研究開発部門)や生産、営業などにもDr.Sum EAは有効に活用できる場面があるのではと思っているので、今後ビジネスサイドと話をして行きたいですね」(楠氏)。大量データの高速集計、自由検索、高レスポンスという要望を満たしたBIツールは、全社から熱い視線が寄せられているようだ。
<導入企業紹介>
中外製薬株式会社
生命関連企業としての高い倫理観と道徳観をベースに、医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値の創造と人々の健康に貢献している医薬品メーカー。スイスに本拠地を置くロシュ・グループの最重要メンバー企業の1つでもあり、国内外において革新的な新薬を継続的に提供。特に、がんなどの特定の細胞や組織にだけ効果がある、抗体を利用した抗体医薬などバイオ医薬の分野では世界をリードしている。
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