“やっつけ”保守開発からの脱却を図るためには?開発側とユーザー側の慣れを排除する

システムの保守開発は、対象システムが移行または廃棄されるまで連鎖して続く。開発側とユーザー側の双方が慣れてしまいがちな保守開発を“やっつけ”にしないためには、一体どうすればよいのだろうか?

2009年09月10日 08時00分 公開
[西尾亮太,ビーブレイクシステムズ]

保守開発の現場で抱える問題

 現在の企業の情報システムは、変化・変容する業務に合わせて“保守開発”による改修が繰り返し行われる。一度稼働したシステムが、変更なしにユーザー要求を満たし続けることはできないからだ。また、保守開発の規模や対応期間は案件によってさまざまである。

photo 保守開発プロセスは、期間や規模もそれぞれの案件で異なり、時には並行して実施される

 保守開発では、その特性から以下のような事態が起こる。

  • 繰り返される保守開発に対する“慣れ”によって、開発側とユーザー側の双方で要求分析に対する“慎重さ”が失われる
  • ユーザーのシステム理解が進むことで、いつしかユーザーが主体となった“ユーザーの要求するがまま”の保守開発が行われる
  • リスク回避を優先しすぎて“つぎはぎ”のような機能拡張が行われる。またドキュメント管理がおざなりになり、仕様書やソースコードドキュメントが散在してしまう
  • 保守開発の規模や期間が案件によって異なるため、毎回同じ体制や同じ開発プロセスを組むことができない

 保守開発されたシステムでは、ある程度の“やっつけ”を容認してしまう傾向がある。ここでのやっつけとは、要件定義工程の簡素化やテスト工程の短縮化などの“開発プロセスの省略”、開発側とユーザー側が暗黙の了解としてお互いが確認を取らない“コミュニケーションの省略”、期間や納期、コストを考えて、ある程度の“妥協を容認する”ようなことを指す。そのため、以下のような問題が発生することがある。

  • 何度も同じような改修を実施する:潜在的・暗黙的なシステム要求を見落としてしまい、一度の保守開発で要求を満たすことができない
  • システム品質が低下する:不必要な機能の開発やアドホックな仕様が散在する
  • 変更漏れやデグレードが多発する:開発側がその影響範囲を読み違えてしまうことに起因する
  • システム運用コストが増加する:つぎはぎや散在化によって、システム改修の効率が低下する

 また、『年数のたったプログラムを安全に更新するのは難しいので、古いソフトウェアを変更したときの潜在バグ率は、新規ソフトウェアの約3倍になる。機能拡張作業における欠陥除去率も、新規ソフトウェアに対する欠陥除去率より5〜10%低くなる』(※)という統計結果もある。このように、保守開発はやっつけで対応できるほど甘くはないのだ。

※ 『ソフトウェア開発の定量化手法 第2版』(Capers Jones/著 鶴保征城・富野 壽/監訳:構造計画研究所)より。

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