複合機の使い方を変える「サーバ化」と「クラウド連携」複合機における“質の変化”を見逃すな

コスト削減活動の余波で設置台数や利用機会が縮小している複合機。コピー・FAXといった従来機能にとどまらない、今の複合機の質的な変化を積極的に取り込めば、一層のコスト効果を得られるかもしれない。

2010年03月31日 08時00分 公開
[岩上由高,ノークリサーチ]

 デジタル化の進んだ現代においても、紙文書がまったく不要になるわけではない。そのため複合機は、紙文書とデジタルの世界を結び付けるためには依然として必須の要素だといえる。しかし、IT運用コスト削減の要請が強まる中、複合機は「なるべく利用しない方がよい物」ととらえられがちだ。トナーセービング、複合機の統廃合、MPS(Managed Print Service)は、いずれも複合機関連の運用コストを抑える目的で導入されることが多い。こういった施策において、複合機自体は従来と同じだが、それらの導入台数や利用頻度に変化が生じている。その意味でこれは「量の変化」であるといえる。現在はこの「量の変化」に注目が集まっているため見落としがちではあるが、実は複合機自体にも「質の変化」ともいうべき動きがあるのだ。

 そこで本稿では、プリント・コピー・FAX・スキャンという従来機能の観点だけでなく、サービスまで視点を広げて今後有効になるであろう「複合機における質の変化」に注目し、大手複合機メーカーの各ソリューションを紹介する。

姿と役割を変え始めた複合機

 複合機とは、「プリント・コピー・FAX・スキャンの4つの機能を兼ね備えた専用機器」を指す。基本的な形態はここ数年変わっておらず、性能(毎分の出力枚数など)と価格のみが進化の指標であると考えがちだ。だが、昨今ではこれまでになかった複合機自体の大きな変化が見られる。その中でも特に注目すべきなのは、以下の3点である。

  1. デスクトップ環境との親和性
  2. ファイルサーバとの融合
  3. 紙文書とクラウドの橋渡し

 以下、それぞれの変化について詳しく見ていく。

1. デスクトップ環境との親和性

 複合機で紙文書を出力したり、逆に紙文書をスキャンする際には、実にさまざまなオプションを設定することができる。両面印刷、集約印刷、ステープル留めなど多種多様だ。しかし、それらを設定する画面は一般的に複雑であり、メニュー階層も深い。急いで印刷をしたいのに、どうやって設定すればいいのか分からず困ったという経験をお持ちの方も多いだろう。

 そうした状況を解消するのが「複合機を操作できるデスクトップツール」である。印刷ダイアログからオプションを選んで表示する設定画面と異なり、これらのツールはPCのデスクトップ画面上に配置しておくことができる。数多くの機能の中から自分が頻繁に利用するものだけを選んで表示できるため、毎回の作業時に煩わしい思いをしなくて済む。各自のデスクトップ上から手軽に複合機を操作/制御できるようになったことで、利便性の大幅な向上が期待できる。また、各自のPCに導入されたデスクトップツールを介して、詳細な利用状況の把握が可能となる。つまり、セキュリティ向上や利用効率改善に役立てることができるわけだ。

図1 デスクトップとの親和性

2. ファイルサーバとの融合

 従来、紙文書をスキャンしたデータはネットワークを介してファイルサーバなどに格納されていた。また昨今では、大容量のHDDを搭載でき、自身がファイルサーバとして機能する複合機も登場してきている。複合機とファイルサーバを連携させる場合、作業を簡便化するためにファイルサーバ側の保存先フォルダは誰でもアクセスできる状態にしてしまっているケースも見受けられる。だがこうした運用は、マルウェア感染被害を拡大させる要因にもなりかねない。複合機と連携させるためにファイルサーバのセキュリティを無防備にすれば、そこを基点として共有データを利用するクライアントPCが次々とマルウェアに感染する恐れがある。そこで複合機自体にファイルサーバ機能を包含させれば、ファイルサーバとの連携そのものが不要になり、ファイルサーバを無防備にしてしまうリスクを防止できる。

 このように複合機自体にファイルサーバ機能を包含させることは、ファイルサーバというハードウェア機器の削減だけでなく、セキュリティ対策という効果にもつながる。ただし、複合機自体がファイルサーバ機能を持つということは、複合機側のセキュリティ対策についてはこれまで以上に十分配慮する必要がある。これは複合機の「質の変化」全般にいえることだが、複合機を単なる印刷機器ととらえず、サーバと同じように扱うという意識も今後重要になってくるだろう。

図2 ファイルサーバとの融合

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