ビデオ会議では、相手の空間にあるものを直接指し示すことが難しい。伝えやすそうで伝えにくい「これは何?」を簡単にできるようにしたソニー製品には、同社が培った映像技術力が発揮されている。
先進的かつ独創的な技術をベースに、総合電機メーカーとして数多くのユニークな製品を世に送り出してきたソニー。その実力はビデオ会議システムの分野でも遺憾なく発揮されており、国内メーカーの中ではトップシェアを誇っている。2009年度はこの分野で過去最高となる売り上げを計上し、その勢いは2010年に入っても続いているという。では、なぜソニーがビデオ会議システム市場で強いのか? その理由は、民生用の液晶テレビからデジタルカメラ、産業用ネットワークカメラに至るまで広範にわたる「映像技術の総合力」にあるようだ。
ソニービジネスソリューション バリュー・クリエイション部門 ソリューションマーケティング部 コミュニケーションプロダクツMK課 統括課長の中村隆昭氏は、ビデオ会議システムの需要の伸びについて「昨今の厳しい経済状況の中でもビデオ会議システムが堅調に伸びているのは、企業にとって経費削減という大きな目的があるから。危機管理面からも、出張せずにコミュニケーションが取れる手段になり得るITツールとして再認識されているが、ここ1年間でビデオ会議システムのハイビジョン(HD)化が進み、会議だけではない新たな需要が創出されている」と指摘する。
HD化によって広がってきた用途の代表例として、文教や医療といった分野が挙げられる。今やビデオ会議システムは、大学での遠隔講義や大学間の研究共有手段として普通に使われるようになった。医療現場では、CT画像が鮮明に見えるため、手術の指針を決定する際のコミュニケーションツールにも利用されている。さらに製造業では、海外拠点との会議のみならず、実際の現場における品質管理への活用も始まっている。製造した基板上の電子部品の浮きやはんだ付け状態などを検討する際に、HD映像が利用されるケースも多くなってきた。
特に同社において、新しいマーケットに対する期待感は大きい。製造プロセスの最適化を行うための監視ツールや自動車・家電製品のデザイン共有など、今後新しい利用シーンでソニーならではの映像技術が生かせるからだ。「テレビ会議システムがHD化されることで、高解像度による大画面化はもちろんのこと、色味の再現性、被写界深度の深さ、リアリティーの向上など、われわれがオーディオ・ビジュアル分野で培ってきたノウハウが大いに役立つようになった。このような周辺技術はどの企業にも負けないと自負している」と中村氏は強調する。さらに、同コミュニケーションプロダクツMK課 統括課長の武田有正氏も「自然の状態をありのままに伝えるオーディオ・ビジュアル技術だけでなく、産業用ネットワークカメラのように“見えないものを見えるようにする技術”にもたけている点が強み」とする。
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