HTMLの書き換えによるネットワークの効率化
HTMLコードの自動最適化によるWebアプリのパフォーマンス向上
パフォーマンスが低いWebアプリケーションを改善するには? WAN最適化によって高速化を図る従来の方法とは異なり、ネットワーク効率の観点からHTMLコードを最適化する方法が注目を集めている。
一般的にWebベースアプリケーションの最適化とは「データセンターエンジニアがアプリケーションデリバリコントローラー(ADC)を使って、特定のパケットやプロトコルレイヤーを対象とした圧縮やキャッシング、SSLオフロード、ロードバランシングを実行する」ことを指している(関連記事:WAN最適化とアプリケーション高速化──データセンター統合成功の決め手)。しかし、「スタックの上位レイヤーに焦点を当て、HTMLコード自体の最適化によってパフォーマンス向上を図る」という新しいタイプのベンダーが登場している。
Webコンテンツ最適化の専門企業を名乗るこうした新興企業は、Webページがユーザーのブラウザで効率的にロードされるように、HTMLを自動的に書き換えるアルゴリズムを開発済みだ(関連記事:Web2.0アプリのパフォーマンスを改善する10の方法)。
この分野の新興企業にはカナダのStrangeloop、ニュージーランドのAptimize、イスラエルのAcceloWebなどがあるが、大企業もこの分野に関心を持っている。米Googleは独自のWebコンテンツ最適化サービス「Page Speed Service」をリリースしている。また、WAN最適化ベンダーの米Riverbed Technologyが2011年7月にAptimizeを買収し、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)プロバイダーの米Limelight Networksが5月にAcceloWebを買収している。さらにStrangeloopはCDNプロバイダーの米Akamaiと提携している。
関連コンテンツ
- Webアプリケーション開発におけるパフォーマンス・ボトルネック34の問題&回答(ホワイトペーパー)
- GoogleやMSNも導入したアプリケーションパフォーマンス改善の決め手(ホワイトペーパー)
ネットワーク効率の観点からHTMLコードを最適化
HTMLプログラマーやWebデザイナーは、ネットワークエンジニアのようには考えない。彼らは「ナビゲートしやすく、機能的で、見栄えのする」Webページを作成しようとする。だが、ネットワーク効率については必ずしも考えない。20個の画像があるWebページでは、各画像のダウンロードのためにラウンドトリップが20回発生するかもしれない。これではリソースが消耗されてしまう。
「Webベースアプリケーションの多くはパフォーマンスが低い。ブラウザベースアプリのプログラミングに使われているツールでは、信じられないほどお粗末なプログラミングプラクティスが採用されているからだ」と、米Gartnerのリサーチ担当副社長、ジョー・スコルパ氏は指摘した。
「ページのHTMLの書き方が、アプリケーションの応答性に大きく影響することが理解されていない。『スタイルシートを1つ使うか、5つ使うか』『Webブラウザキャッシュからロードされるようにするか、常にサーバからロードされるようにするか』。こうした選択が重要な意味を持つ。HTMLの記述によっては、JavaScriptをブラウザにダウンロードしたときに、その実行が完了するまでブラウザが止まってしまい、何もダウンロードしなくなる、といったことも起こる」(スコルパ氏)
Webコンテンツ最適化ベンダーは、Webブラウザからのコマンドをインターセプトし、その順序や構造を変更して、最適にコーディングされたWebページを提供すると、スコルパ氏は述べている。
米PrintingForLess.com(以下、PFL)のネットワーク管理者、マーク・カレンス氏は、2010年からStrangeloopのクラウド型Webコンテンツ最適化サービスを利用し始めた。PFLはモンタナ州リビングストンに本社を置き、Webベースの商業印刷サービスを提供している。Strangeloopのサービスは、PFLのWebサイトの最適化作業を自動化している。
PFLでは以前、Webコンテンツの最適化は「サイトの特定のセクションが遅いことに気付いたときに、単発的に行う作業だった」とカレンス氏。「われわれは開発者と協力して、問題状況に応じた最適化を行っていた。だが、Strangeloopのサービスにより、われわれは最適化を包括的に行えるようになった。われわれがコードを変更するときは、彼らはそれに合わせて彼らのシステムを更新でき、それによって最適化が実現される。われわれの側で最適化作業をしなくて済むようになったというわけではないが、われわれが問題を見つける以前から、彼らは手助けをしてくれる」
StrangeloopのWebコンテンツ最適化は現在、カレンス氏にとって、アプリケーションデリバリの主要な最適化手段となっている。同氏は米Microsoftのロードバランサも使っている。PFLの事業の成長を受けて、同氏は、本格的なADCを導入したいと考えている。
「SSLアクセラレーションや地理的なロードバランシングを必ず実現するつもりだ。だが、これらを実装するとなると、われわれのコンポーネントの一部を大幅に再設計する必要がある。このため、これらの実現はまだ先になる。Strangeloopのサービスは、最適化の第一歩として手軽に導入できる。IT担当者として、会社のビジネスサイドの後押しを取り付けるのも簡単だ。すぐに導入効果が現われるからだ。投資された彼らの資金のリターンが目に見えて分かるため、彼らは、最適化を推し進めるために投資しようという気になる」(カレンス氏)
アプリケーションデリバリコントローラーと統合されるのか
Webコンテンツ最適化は、まだ広く注目されてはいないが、2010年末に知名度が上昇した。Gartnerが同社の有名な市場分析方法論「Magic Quadrant」をADC分野に適用したリポートで、同方法論の4つのベンダー評価区分の1つである“ビジョナリー”に属する企業として挙げた中に、Webコンテンツ最適化の主要な新興企業のうちStrangeloopとAptimizの2社が名を連ねたからだ。Webコンテンツ最適化ベンダーは、ADCを開発、提供していないが、Gartnerは「Webコンテンツ最適化製品とADCは、組み合わせて展開されることが多い」と述べている。
実際、Webコンテンツ最適化は最終的に、多機能ADCの機能の1つになるかもしれない。前述したように、WAN最適化ベンダーのRiverbed Technologyは最近、Aptimizeを買収した他、ソフトウェアベースADCベンダーの米Zeus Technologyも買収している。Riverbedは、両社の買収で獲得した製品を統合する計画だ。
「Aptimizeの製品はZeus ADCと親和性が高いと考えている」と、Riverbedのコーポレート開発・戦略担当副社長、ポール・オファーレル氏は語った。「Aptimize製品は現在、Webサーバプラグインとして販売されている。将来的には、進化を遂げてZeus製品と統合されるだろう」
Strangeloopの創業者で社長を務めるジョシュア・ビックスビー氏は「Strangeloopにとっては、自社でアプライアンスを販売するよりも、Strangeloop製品が他社のハードウェアプラットフォーム上でサービスとして利用されるほうがはるかに望ましい」と語った。
「われわれは現在、DellからOEM供給されたサーバを販売している。だが、JuniperやF5のマシン上におけるStrangeloopサービスの提供という形での提携や、Akamaiとの現在の提携のようなCDNとStrangeloopサービスの連携による提携を進めていきたいと考えている」とビックスビー氏。「われわれはハードウェア企業ではない。いずれは、われわれの顧客はハードウェアに関しては、JuniperやF5、あるいは他の企業から調達することになるだろう」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[セコムトラストシステムズ株式会社] SCS評価制度で重要性が増す「SASE」 制度の要求事項と機能はどう関係する? -
製品資料
[株式会社kickflow] 3分でわかる「kickflow」 どのようなワークフローを実装できる? -
事例
[株式会社kickflow] 出前館も実践 ワークフロー刷新で得られる効果とは? -
事例
[株式会社kickflow] ワークフロー活用事例:社内システムとのAPI連携で業務効率化&統制強化を実現 -
事例
[株式会社kickflow] 武州製薬が挑んだ「脱・紙とハンコ」 IT部門と現場部門はどう変わった?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「企業におけるAIの運用」に関するアンケート
-
2
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
3
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
7
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
セキュリティの転機 2026年度開始の新評価制度が求める「復旧能力」の実現法は
-
10
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
6
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
7
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
10
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー