中国市場の覇権をめぐって争う欧米企業と中国企業。奇妙なことに、両者の戦略にはねじれ現象が生じている。
中国は巨大でありながらいまだ開発途上の市場であり、大きな成長と利益が見込めるという見方で欧州と米国は一致している。同国はまた、比較的安価な労働力と生産力を頼りに積極的な競争展開が可能な国でもある。それが時には電子製品の品質低下を招く要因になることはあるが。
新技術の市場では、次から次へと資金が中国に流れ込んでいる。だが欧米の企業は、この国から最新かつ質の高い端末の販売による利益を十分に引き出すことができていない。そこに中国で急成長する企業が自国の市場を制覇する余地がある。
スマートフォンやタブレット端末の業界では、急浮上してきたHuawei(華為技術)の成功は周知の事実だ。同社はモバイルネットワーク構築用に安価ながら高品質の機器を製造している他、スマートフォンやタブレット端末も低コストで品質を向上させている。中国のZTEさえも同様の道をたどりつつある。
私は中国へ10日間の出張に出掛け、通信企業を幾つか訪問して同国のスマートフォン市場について調査する予定だ。華為技術やZTEの本社がある同国南部の大都市、深センも訪れ、華為技術の研究施設や製造ラインを見学する予定だ。同社の担当者は、中国の経済情勢の下、そして欧米や東アジアなど先進国の情勢の下で、市場の課題に対応する同社の態勢が万全であることを私に納得させようとするだろう。
欧州のモバイルキャリア各社は4Gネットワーク敷設のためのLTE機器について契約交渉を進めている段階にあり、華為技術は最有力候補の1社とみられている。競合する大手2社、フィンランドのNokia Siemens NetworksとスウェーデンのEricssonは地元欧州の企業であり、その点が安価な中国ブランドに比べて相当有利に働くのは確実だ。さらに、欧州では米国と同様、華為技術のものも含む中国製品は北欧やドイツ製の値の張る製品に比べて信頼されていないという優位性もある。
しかし華為技術は世界100カ所を超す拠点で10万人以上の従業員を要する企業であり、「中国製」に対する欧米の見方を変えさせようとしている。他の中国の通信企業も同じ目標に挑んでいる。
だが皮肉なことに、最大の課題は中国国内の顧客の見方を変えさせることにある。同国の小規模メーカーは、外観のみ米AppleのiPhoneやiPad、韓国のSamsung製GALAXYシリーズに似せ、中身は出来の悪いソフトウェアとハードウェアしか入っていない安物のスマートフォンやタブレット端末を製造して中国のイメージを落としている(参考:Appleの「iPhone 5」、初回生産台数は3億台?)。こうした端末はグレー市場、特に香港で購入できる。私も試してみるつもりだ。このような製品は欧州や米国の店舗では買えないが、グレー市場の販売業者の多くは、こうした製品がはびこるeBayやiOfferで事業を営んでいる。われわれの市場にも徐々に裏口から入り込みつつある。
同時に、欧米の企業がどのように中国市場の制覇を試みるかも興味深い。必然的に、まずは権力の中心地である首都、北京が出発点になる。私も北京を訪問する予定であり、同地のビジネスユーザーにはiPhone、iPad、カナダのResearch In Motion(RIM)のBlackBerry、米GoogleのAndroid、米MicrosoftのWindows Phoneを搭載した主要端末が普及していると予想する。巨大なApple Storeもオープンし、不法営業の偽Apple Store(あれには驚いた)は最近閉鎖させられた。
興味深いことに、フィンランドのRovio Entertainmentは世界初の店舗を北京にオープンする方針を決めた。同社は超人気ゲーム「Angry Birds」のメーカーだ。このゲームはこれまでに5億本以上が売れ、多くの点で過去最高の人気エンターテインメントソフトウェアになっている。中でも中国はRovioにとって最も利益が見込める市場であることが判明。中国に開店する店舗では初年度で1億ドルの収益を見込む。この店ではゲームの他に、キャラクターのぬいぐるみも販売する。同社は既に商品販売事業だけで10〜20%の利益を得ている。
店舗開設の理由について同社は、中国は最も大きく成長している市場であり、そのことを重視していると説明した。同時に、中国の企業以上に中国的でありたいとも話している。
Apple、Google、Microsoft、Nokia、Ericsson、Rovio Entertainment他、欧米が誇りとする企業が中国の企業以上に中国的になれるだろうか。そして華為技術、ZTE、Lenovo(聯想集団)、China Telecom(中国電信)など中国が誇るIT企業が米国や欧州の企業以上に米国的、欧州的になることは可能なのだろうか。
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